週刊ドラフトレポート(毎週木曜日更新)

【週刊ドラフトレポート#03】二段モーションで覚醒した吉岡暖、安定感と広角に打てる打撃が魅力の石見颯真

西尾典文

「愛知でモイセエフと双璧の強打者。プロに向けての意識も高い」

日大三島戦ではホームランを放った愛工大名電の石見だが、実は内野守備への意欲も高い 【写真提供:西尾典文】

石見颯真(愛工大名電 3年 遊撃手 177cm/75kg 右投/左打)

【将来像】岩村明憲(元・ヤクルトなど)

強い下半身で広角に長打を放つスタイルが重なる
【指名オススメ球団】日本ハム
清宮の下の世代に左の強打者が不足しているチーム事情から
【現時点のドラフト評価】★★☆☆☆(支配下での指名濃厚)

 多くの強豪校がひしめく愛知で夏三連覇を達成し、昨年秋も東海大会準優勝と近年安定した強さを見せている愛工大名電。そんなチームにあって、早くから打線の中心として活躍しているのが石見颯真だ。入学直後から外野の一角に定着し、夏の甲子園にもすでに2度出場している。下級生の頃から広角に打ち分ける上手さとパンチ力には光るものがあったが、凄みが増したのは2年秋の新チームになってからだ。秋の愛知県大会では5試合で打率5割をマークすると、続く東海大会でも3試合で11打数6安打、打率.545という見事な成績を残してチームの準優勝にも大きく貢献。特に日大三島戦で放ったホームランはライトの場外へ飛び出す特大の一発で、石見本人も打った瞬間に“確信歩き”するほどの打球だった。

 選抜でも石見のバットはとどまるところを知らず、チームは初戦で報徳学園に敗れたものの、高校ナンバーワン投手とも言われる今朝丸裕喜から2安打をマーク。タイブレークとなった延長10回、ワンアウト二・三塁の場面では申告敬遠(この時の投手は間木歩)されていることからも、報徳学園に与えていたインパクトが強かったことがよく分かるだろう。日大三島戦では豪快に引っ張るホームランを放っているが、石見の持ち味は広角に強い打球を放つことができるという点である。昨年秋の東海大会では4安打を放っているが、全て左方向であり、今朝丸から放った2本目のヒットもレフト前に弾き返すものだった。左打者の左方向への打球は一般的には“流し打ち”と言われるが、石見のレフトへの打球はむしろ左方向へ“引っ張る”と表現した方が適切なくらい強い当たりが多いのだ。それだけしっかりボールを呼び込んで、体に近いポイントでも強く振り抜ける技術があるからと言えるだろう。体格や打球の強さはかつてメジャーでも活躍した岩村明憲とイメージが重なり、さらにパワーがつけばプロでもホームランを量産できる可能性はありそうだ。

 そんな石見だが、昨年秋の大会が終わってから中学時代に守っていたショートへのコンバートを直訴している。選抜大会中の取材でそのことについて聞かれると「プロを目指すと考えると外野手よりもショートや内野を守れる方が有利だと思うので、自分からお願いしました」と話している。高校生でこのような意識を持って、実際に行動に移せる選手はなかなかおらず、意識の高さがうかがえた。ちなみに選抜前のアンケートの『好きな選手』には強打者ではなく、守備に定評のある吉川尚輝(巨人)の名前を挙げており、そのことからも内野守備への意欲が感じられる。

 選抜後に行われたU18侍ジャパンの強化合宿でも本人はまだまだしっくり来ていないと話していたものの、フリーバッティングでは木製バットで快音を連発。左バッターでは前回のレポートで取り上げた正林輝大(神村学園)と並んで強いインパクトを残した。またショートの守備に関しても選抜と比べてもフットワークやグラブさばきに成長が見られ、他の選手と比べても全く見劣りすることはなかった。

 4月14日に行われた春の愛知県大会の初戦でも強豪の星城を相手にスリーベースを含む3安打を放ち、変わらぬ打棒を見せている。打撃の安定感に関しては高校球界全体でもトップクラスであり、夏も多くのスカウト陣の注目を集めることは間違いないだろう。

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著者プロフィール

1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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