【週刊ドラフトレポート#03】二段モーションで覚醒した吉岡暖、安定感と広角に打てる打撃が魅力の石見颯真
今回紹介するのは、吉岡暖(阿南光・投手)と石見颯真(愛工大名電・遊撃手)の2人。ともに選抜高校野球で評価を上げ、U18侍ジャパンの強化合宿にも選出されたが、それぞれの魅力を解説します。
(企画編集:Timely!編集部)
*現時点のレベルバロメーター:
★★★★★5:複数球団の1位入札濃厚
★★★★☆4:1位指名の可能性あり
★★★☆☆3:2位以上の可能性あり
★★☆☆☆2:支配下での指名濃厚
★☆☆☆☆1:育成であれば指名濃厚
「二段モーションで安定感アップ。かつての西武のエースを彷彿させる縦の変化球」
阿南光の吉岡は今年のセンバツでは熊本国府戦で完封勝利を収めるなど成長した姿をみせた 【写真提供:西尾典文】
【将来像】西口文也(元・西武)
高い位置から腕が振れ、スライダーとスプリットのボールの軌道が西口と重なる
【指名オススメ球団】ヤクルト
高校卒の若手有望株が不足。タフなのもチーム事情にマッチ
【現時点のドラフト評価】★★☆☆☆(支配下での指名濃厚)
昨年夏の甲子園では森煌誠(徳島商→NTT東日本)が見事なピッチングを見せ、今年は最速153キロを誇る川勝空人(生光学園)が注目を集めるなど、好投手が目立つ近年の徳島県。そんな中で一気に浮上してきたのが阿南光のエース吉岡だ。関係者からその評判を聞いていたが、実際に初めてピッチングを見ることができたのは昨年秋の四国大会準決勝、対鳴門戦だった。この試合でも吉岡は立ち上がりから8人連続で打ちとる上々のピッチングを披露。3回にツーアウトから4連打を浴びて3点を失ったものの、その後は見事に立ち直り完投勝利で選抜出場を確実なものとした。この時のストレートの最速は141キロとそれほど目立った数字ではなかったが、高低を上手く使い、変化球とのコンビネーションの上手さは際立っていた。
迎えた3月の選抜。吉岡はそこからさらに成長した姿を見せる。初戦では前回のコラムで取り上げたモイセエフ・ニキータを擁する豊川を相手に4失点ながら11奪三振で完投。そして圧巻だったのが2回戦の熊本国府戦だ。被安打5、14奪三振と三塁を踏ませない投球で見事完封勝利を飾って見せた。秋と比べて変わったのがフォームだ。今年から高校野球でも認められることになった左足を二度上げる“二段モーション”を採用。そのことで軸足にしっかりと体重を乗せてからステップすることができるようになり、体重移動のスピードも明らかにアップしたように見える。どちらの試合も球場表示の最速は143キロだったが、ネット裏のスカウトが計測したスピードガンでは145キロもあり、ボールの勢いも確実に増していた。
ボールの勢い以上に吉岡の大きな特長と言えるのがストレートと変化球の見分けがつかないという点である。スライダー、カットボール、フォークはストレートと同じ軌道から打者の手元で鋭く変化し、どのボールも決め球として使うことができる。唯一110キロ程度のカーブだけ少し精度が引くように感じたが、高校生の3年春の時点でこれだけ決め球を多く操れる投手はなかなかいない。豊川戦ではモイセエフに甘く入ったフォークをとらえられてホームランこそ浴びたものの、他の4打席はノーヒット、3三振とほぼ完璧に抑え込んでいた。
選抜での活躍が認められて、大会後にはU18侍ジャパンの強化合宿にも選出。合宿2日目に行われた紅白戦では全国から集まったレベルの高い打者を相手に2回をパーフェクト、4奪三振という見事な投球を見せた。ちなみにこの日は選抜での疲れもあってか、ストレートの最速は139キロにとどまっていたが、それでも変化球を駆使して抑えられるというのは投手としての能力の高さをよく表している。フォームやボールの軌道はかつて西武のエースとして活躍した西口文也と重なるものがあり、西口と同様に三振を多く奪えるというのは大きな魅力だ。
チーム事情もあって完投することが多く、疲労の蓄積という点では心配な面もあるが、これだけ長いイニングをしっかり投げられるというのは貴重な存在である。しっかり鍛えればまだまだスケールアップする可能性も高いだけに、若手投手の底上げが必要な球団にとっては狙い目の投手であることは間違いないだろう。