MLB公式サイトが認めた大谷ら最強打線 ドジャースが大崩れする“想定外”は起きるのか【ナ・リーグ西地区展望】

村田洋輔

左からドジャースのベッツ、大谷、フリーマン 【写真は共同】

 ドジャースが11年連続ポストシーズン進出、うち10度は地区優勝と絶対的王者として君臨しているナ・リーグ西地区。この11年間でドジャースから地区の覇権を奪うことができたのは、奇跡的な快進撃で球団新記録の107勝を挙げた21年のジャイアンツだけである。ドジャースが大崩れしない限り、他球団はミラクルを起こさなければドジャースの牙城を崩せないという状況。今季もドジャースが地区優勝争いの先頭を走るという構図は変わらないだろう。

 昨季リーグ2位の100勝を挙げたドジャースは今オフ、他球団を圧倒する大型補強を展開し、大谷翔平(10年7億ドル)と山本由伸(12年3億2500万ドル)のダブル獲得に成功。補強はそれだけにとどまらず、テオスカー・ヘルナンデス、タイラー・グラスノー、ジェームズ・パクストンを次々に獲得し、3億ドルを超えるペイロール(球団の総年俸)で豪華戦力を築き上げた。

 昨季リーグ2位の906得点を叩き出した強力打線には、ア・リーグMVP&本塁打王の大谷とシルバースラッガー賞2度のヘルナンデスが加入。特にムーキー・ベッツ、大谷、フレディ・フリーマンの「MVPトリオ」が並ぶ1~3番は、「史上最強」との呼び声も高い。MLB公式サイトは昨季メジャー史上最多タイの307本塁打を記録したブレーブスを差し置いて、ドジャースを「今季の最強打線」に選出したが、各選手が故障なく実力を発揮すれば、歴史に残るような記録を打ち立てても不思議ではないくらいの強力打線となっている。

 心配なのは投手陣だ。トミー・ジョン手術明けのウォーカー・ビューラーが開幕に間に合わず、エメット・シーハンも右前腕の炎症で離脱しているため、先発ローテーションはグラスノー、山本、ボビー・ミラー、パクストン、ギャビン・ストーンという顔ぶれに。

 開幕投手を務めるなどエースとして期待されるグラスノーは、非常に故障が多い投手として知られており、1シーズンの投球回数は昨季の120イニングが最多。ソウルシリーズ第2戦で1回5失点の早期ノックアウトを食らった山本は、メジャー1年目でどれくらいやれるか未知数だ。ミラーとストーンはメジャー2年目で、フルシーズンをメジャーで過ごした経験がなく、ベテランのパクストンはグラスノー同様、非常に故障が多い。

ソウルシリーズ第2戦で先発登板した山本由伸。1回4安打5失点で負け投手に 【Photo by Chung Sung-Jun/Getty Images】

 シーズン後半にはクレイトン・カーショー、ダスティン・メイ、トニー・ゴンソリンといった長期離脱中の投手が戻ってくる可能性もあるが、フルシーズンの稼働を計算できる投手が1人もいない状況であり、先発陣の出来次第では思わぬ苦戦を強いられることになるかもしれない。

 ブルペンはブラスダー・グラテオルとブレーク・トライネンが故障者リスト入りしたものの、ともに長期化しない見込み。クローザーのエバン・フィリップスを軸に、ジョー・ケリー、ライアン・ブレイシア、ダニエル・ハドソンと経験豊富な投手を揃えており、大崩れすることはないだろう。

 先発陣に加え、もう1つ懸念点を挙げるとすれば、遊撃コンバートでベッツの負担が大きくなることだろうか。当初は昨季を全休したギャビン・ラックスを正遊撃手に据え、ベッツを正二塁手として起用する構想だったが、ラックスは不安定な送球が目立ち、「勝つための最善策」としてラックスとベッツのポジションを入れ替えることに。守備の負担が増したベッツが打撃成績を大きく落としたり、故障離脱したりする展開だけは避けたいところだ。いずれにせよ、想定外の事態が起こらない限り、ドジャースの絶対優位は揺るがない。

23年ぶりの世界一を目指すDバックス

 ドジャースを追う1番手は、昨季のリーグ王者・ダイヤモンドバックスだ。レギュラーを固定できなかった三塁に、マリナーズとのトレードでユジニオ・スアレスを獲得し、チームの弱点となっていたDHには、右腕に強いジョク・ピダーソンと左腕に強いランデル・グリチェクを補強。リーグ7位の746得点と平均レベルだった打線は間違いなく強化された。有望株ジョーダン・ローラーが早期昇格して、ヘラルド・ペルドモに代わる正遊撃手となれば、打線はさらにグレードアップする。懸念材料は新人王コービン・キャロルの「2年目のジンクス」くらいだろう。

 投手陣はザック・ゲーレンとメリル・ケリーの先発2本柱に次ぐ3番手として、2ケタ勝利5度の実績を誇るエデュアルド・ロドリゲスを獲得。昨年のポストシーズンで活躍したブランドン・ファートもおり、4番手まで確立されたかのように思われたが、ロドリゲスが左広背筋を痛めて出遅れることになってしまった。復帰までにどれくらいの時間を要するかは現時点では不透明だが、長期離脱となれば、チームの戦いに大きな影響を及ぼすことは間違いない。ロドリゲス不在のあいだは、ライン・ネルソン、トミー・ヘンリーら若手の奮起が求められる。

 ブルペンは目立った補強がなかったものの、ケビン・ギンケルをはじめ、昨季の主力リリーバーが軒並み残っており、大きな穴となることはなさそうだ。ただし、昨季途中に加入し、今季は開幕からフル稼働が期待されていたクローザーのポール・シーウォルドが左わき腹を痛めて出遅れるのは、小さくない痛手となる。

 マイク・ヘイゼンGMは「我々は162試合で84勝しかできなかったチームだ」と昨季のリーグ優勝にも油断しておらず、「机上の計算に過ぎないが、昨季よりもいいチームになったと思う」とオフの補強にも手応えを感じている。打倒・ドジャースのみならず、2001年以来23年ぶりとなる世界一を目指す。

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著者プロフィール

神戸出身。2001年、イチローのマリナーズ移籍をきっかけに本格的にMLBに興味を持つ。2016年からMLBライターとしての活動を開始し、2017年から日本語公式サイト『MLB.jp』編集長。2021年にはSPOZONE(現SPOTV NOW)で解説者デビュー。ジャンカルロ・スタントンと同じ日に生まれたことが密かな自慢。

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