ドジャースキャンプレポート2024(毎週木曜日更新)

「どんどん霧が濃くなる」大谷の通訳・水原さん解雇の衝撃 韓国開幕戦を制したドジャースに冷や水

丹羽政善

韓国開幕戦がドジャースである必然性

 まったく別の話ではあるものの、今回の開幕シリーズには、もともと華やかな裏で「なぜ、韓国で開幕戦を行わなければならないのか?」という声がくすぶり、すでに霧がかっていた。パドレスの選手はさほど取材したわけではないが、ドジャースのキャンプを1ヶ月取材して、そんな空気を否定できなかった。

 そもそもなぜ今回、MLBの開幕戦が韓国で開催されたのか。実は2022年11月に、MLB機構は「MLBワールドツアー コリアシリーズ」を開催予定だったが、開催の約2週間前に中止となった。参加する予定だったカルロス・エステベス(エンゼルス)は、首をひねった。

「本当に急にキャンセルが決まった。収益の折半の仕方で折り合いがつかなかったということは、容易に想像がつくけど」

 MLB側が、約束したレベルの選手を派遣できなかったため、韓国側が収益の75%を要求。それにMLB機構が難色を示したーーとの話を耳にしたが、だとしたら、わざわざドジャースとパドレスというプラチナマッチアップを見返りに用意したこととの整合性が取れない。MLB機構が一方的に契約を破棄したという報道もあり、その代償として開幕戦を用意したということなら話の辻褄が合うが、真相は不明だ。

パドレスで4年目のシーズンを迎えるキム・ハソン(写真は3月17日に行われた、韓国代表対パドレス) 【写真は共同】

 いずれにしても、ドジャースである必然性があったのか? パドレスには、「MLBワールドツアー コリアシリーズ」にも出場予定だった金河成(キム・ハソン)が所属しているのでまだ理解できるが、ジャイアンツがコチョクスカイドームを本拠地とするキウム・ヒーローズ出身の李政厚(イ・ジョンフ)と契約した瞬間、マッチアップを変えることは出来なかったのだろうか。

 さすがに準備が間に合わないーーという話を2023年12月の段階でリーグ関係者から聞いたが、来季は日本でメジャーリーグの開幕戦が行われる予定で、大谷翔平、山本由伸が所属するドジャースの来日が有力視されている。

 労使協定上、2年連続の派遣を禁止する条項は存在しないものの、2年連続でアジア開幕は負担が大きいという声は少なくなく、ドジャースの選手らから不満が漏れれば延期はありうる。今回の訪韓は、そのリスクをもはらむのだ。そもそもドジャースだけがビジネス面でグローバル化の恩恵を受けているとの指摘もある。

 水原さんの件もあり、いま、モヤモヤとしたものが、ドジャースの開幕戦勝利を覆いつつある。

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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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