ファームに新規参加 新潟&静岡が描く未来構想

「三度目の正直」に賭けるオイシックスのサブマリン 奇跡の飛躍を経てドラフト指名なるか?

中島大輔

イースタン・リーグ参加は千載一遇のチャンス

3月1日の日本ハム2軍とのオープン戦(エスコンF)に登板した下川 【写真:球団提供】

 2023年シーズンは26試合で11勝1敗、リーグ3位の防御率2.38という成績で終え、周囲の評価も高めて秋のドラフトを迎えたが、下川の名前は呼ばれなかった。

「1回目のドラフトとは受け止め方が違いました。シーズンの成績やスカウトの反応など、状況が違ったので。言葉にすれば結局『悔しい』となるけど、考えることはまた違いました」

 下川が残念な知らせを聞いたのは、日本独立野球リーグ機構選抜の一員としてフェニックス・リーグに参加した宮崎の地だった。

「残念だったね。次もあるよ。次、頑張ろう」

 野間口コーチや高校時代の同級生など、関わっている人たちが口々にそう言ってくれた。三度目の正直へ、2024年シーズンは戦いの舞台がBCリーグからイースタン・リーグに移る。下川にとっても千載一遇のチャンスだ。

「相手が変わる分、物差しにもなります。対戦してみれば自分の実力もはっきり出るのかなと思うので。去年まではBCリーグで結果を出せばドラフトにかかるというイメージを持っていました。結局ドラフトにはかからなかったけど、今年は相手がNPBのファームになり、一足先に自分の実力を試せるのはポジティブに捉えています」

 昨年のドラフト前後に登板したフェニックス・リーグでは「戦う人たちなのかな」と想定して投げて、3試合で8イニングを被安打3、無失点。好結果を残し、自信も少し持てた。

 今季から戦う舞台がイースタン・リーグに移り、チームの面々は大きく変わった。2022年から在籍する吉田一将に加え、薮田和樹、三上朋也、小林慶祐という元NPB組が新たに加入した。経験豊かな彼らのピッチングをそばで見られ、下川には新たな物差しになっている。

「去年まで元NPBは吉田さんだけだったので、ブルペンを見ながら『吉田さんがすごいな』っていう感覚になっていたけど、4人ともすごくレベルが高いと感じました。改めて、自分もそういう次元に行かなきゃいけないんだなと思います」

 下川は高校時代に投手を始め、試合で上から投げたことはない。生粋のサブマリンだ。大学時代に転機があり、独立リーグで試合経験を重ねて台頭した。遅咲きの下川は、今季本拠地開幕前日の3月22日に24歳を迎える。

「早生まれは結構得だなと思って生きてきました。スポーツをするなら周囲より先に成長していたほうがいいのかもしれないけど、成長期にいろいろ早く経験できるならいいかなと思っています」

 課題はまだまだある。変化球の精度、緩急の使い方、ストレートのコントロールなどだ。

 だが、アンダースローならではの球筋という独特の魅力がある。

「監督にも『高めを使っていこう』とよく言われますし、高めのストレートで空振りをとれることは自分の武器になっています。課題もたくさんあるので、シーズンを通して成長していく姿を見てもらえればと思いますね」

 下川隼佑の名はまだ多くの人に知られているわけではない。オイシックスで手にしたイースタン参戦のチャンスを活かし、評価を高めていくことはできるか。大器晩成とするべく、自身3度目のドラフトへ新たな勝負に臨む。

<企画構成:スリーライト>

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著者プロフィール

1979年埼玉県生まれ。上智大学在学中からスポーツライター、編集者として活動。05年夏、セルティックの中村俊輔を追い掛けてスコットランドに渡り、4年間密着取材。帰国後は主に野球を取材。新著に『プロ野球 FA宣言の闇』。2013年から中南米野球の取材を行い、2017年に上梓した『中南米野球はなぜ強いのか』(ともに亜紀書房)がミズノスポーツライター賞の優秀賞。その他の著書に『野球消滅』(新潮新書)と『人を育てる名監督の教え』(双葉社)がある。

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