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効果的にパスを散らしてリズムを変えた遠藤航 “ラストミニッツ弾”が飛び出た劇的勝利に貢献

森昌利

劇的な勝利にもあくまで冷静だった遠藤

6日前のリーグ杯決勝で痛めた左足首の状態はまだ万全ではなかったが、遠藤はその影響を感じさせない質の高いプレーを披露。特に攻撃面でチームに貢献した 【写真:REX/アフロ】

「とにかく勝ち点3が取れたのが良かったです。まあ難しい試合でしたけど、相手もよくやってたし。アウェーということもあったし。でも最後にしっかり勝てて良かったです」

 劇的すぎるラストミニッツ+1分の決勝弾が生まれて、興奮冷めやらない筆者が「しびれるような勝利だったが、ピッチ上でどんな思いがしたか?」と尋ねると、遠藤は静かな笑みを浮かべて、そんな落ち着いた答えを返してきた。

 そして、「来週はヨーロッパリーグが再開し、プレミアリーグではいよいよマンチェスター・シティとの決戦となるが?」と聞くと、「まずは1試合ずつ集中したい」とここでも冷静な答えを返した。

 心配された左足首の状態については、「まだ完璧ではないですけど、今日やってそんなに痛みはなかったので、大丈夫だと思います」と話し、「FAカップ戦はかなり若い選手主体で戦った。まあ、そうせざるを得ない状況でしたが、今日は少し怪我人も帰ってきて、そこはポジティブな要素だと思う。ここからチームとしてはどんどん上向きになっていくんじゃないかと思います」と続けて、リバプールの今後の優勝争いに明るい展望を示した。

 クロップ監督は「この試合が0-0に終わっていたとしても、選手が全力を尽くしたという事実に変わりはない。しかしこの重要なゴールで、勝ち点3を奪うという大きな結果に変わった」と話して、今季のリーグ戦できっと最悪の状態で臨んだに違いない一戦を振り返ると、ドローに終わっていても言い訳には困らない試合に勝利して、安堵の表情を浮かべた。

三笘の故障の詳細をブライトンは明かさず…

アジア杯参戦とその後の故障により、今年に入ってアーセナルではプレーしていない冨安だが、アルテタ監督は復帰間近であることを明言 【写真:REX/アフロ】

 一方ブライトンは同日、アウェーとはいえ、フラムにいいところなく0-3で敗北。4日前の火曜日にロベルト・デ・ゼルビ監督が「三笘は全治2~3カ月の腰の故障で今季中の復帰は絶望的」と語り、唐突にエースの離脱を公表すると、翌日水曜日のFA杯5回戦では0-1で惜敗し、この土曜日のリーグ戦は完敗した。

 もちろん欠場は決まっていたが、筆者はイタリア人監督が前日会見で全く触れなかった三笘薫の故障の詳細を少しでもつかもうと、2月28日、ウルヴァーハンンプトンとのFA杯5回戦に出かけて行った。

 ところが、普段はフレンドリーなブライトンの広報がこの件となると完全に沈黙した。試合後の会見で監督に質問したいと告げると、「それは(デ・ゼルビが)喜ばないだろう。例えばカオルの代役を誰にするべきかとか、そういう視点で原稿を作ってくれないか」と言われた。

 しかしそれでは正直記事にはならない。「日本のサッカー・ファンは三笘の怪我の詳しい状態を知りたがっている」と食い下がると、「とにかく現状で言えるのは、手術はないということくらいだ」と言われ、にべもなく話を打ち切られてしまった。

 もちろんクラブが所属選手の怪我について話すのを嫌がるのは分かる。特にエースの三笘の怪我ならなおさらだ。しかし今季絶望の重傷というのなら、通常、ある程度は詳細を明かすものだ。どうしてそうしないのか? 思った以上に重傷なのか? 今回のブライトン広報の沈黙には釈然としない思いが募った。

 けれどもこのまま帰っては仕事にならない。会見で「怪我の原因は分かっているのか?」と質問した。「日本中がショックを受けている」とデ・ゼルビ監督に伝えると、「信じてくれ、私の方がもっとショックを受けている」と44歳闘将が返答してきた。そして「怪我の原因はシェフィールド・ユナイテッド戦の反則タックルではない。それは間違いない」と話して、2月18日に行われたアウェーのリーグ戦で、敵DFメイソン・ホルゲートが一発退場となった悪質な反則タックルが“腰の痛みを誘発したのではない”と断言したが、ここでも怪我の内容について語ることはなかった。

 しかしその一方でイタリア人指揮官は、「今季が始まる時点では、右に(ソリー・)マーチ、そして左は三笘という構想だった。この2人のウインガーが頼みの綱だった。しかし今は両選手とも失った」と語ると、「もちろん2カ月で完治して帰って来てほしい。そしてシーズン終盤の1~2試合だけでもプレーをしてほしい」と続けて、エースがいないチームに対する失望に耐えかねたかのように三笘の早期復帰を熱望した。

 最後に、3月4日のシェフィールド・U戦でもベンチ外となったアーセナルの冨安健洋だが、復帰はかなり近そうだ。一部の英メディアがこの試合で復帰もあると伝えていたが、日本代表DFの名前はチームシートになし。6-0大勝を飾り、首位リバプールとの勝ち点差を2ポイントに保ち、ご機嫌だったミケル・アルテタ監督は、最後の質問者が日本代表DFの不在に不満顔をした筆者だと分かると、こちらが言葉を発する前に「トミヤス!!」と声を張った。

 そして「もう本当に復帰はすぐそこだ」と笑顔で話して、週末のブレントフォード戦(3月9日)にも復帰できると示唆すると、筆者はリバプール、マンチェスター・Cとの三つ巴の優勝争いの構図をしっかりと保った小雨のシェフィールドをあとにした。

(企画・編集/YOJI-GEN)

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著者プロフィール

1962年3月24日福岡県生まれ。1993年に英国人女性と結婚して英国に移住し、1998年からサッカーの取材を開始。2001年、日本代表FW西澤明訓がボルトンに移籍したことを契機にプレミアリーグの取材を始め、2023-24で23シーズン目。サッカーの母国イングランドの「フットボール」の興奮と情熱を在住歴トータル28年の現地感覚で伝える。大のビートルズ・ファンで、1960・70年代の英国ロックにも詳しい。

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