茨城の新戦力、ルーク・メイは「華麗なる一家」出身 NCAA制覇を支えた勝負強さでB1残留圏浮上に貢献
「クラッチシューター」の自負
3日の試合では「残り1分」から相次ぐビッグプレーを見せた 【(C)B.LEAGUE】
「確かにタフショットでしたが、自分はいつもああいうシュートの練習をしています。ゲームは簡単なものでなく、ときには難しいシュートを決めなければいけないこともあります」
勝負どころで決め切る選手を、バスケの世界では「クラッチシューター」という。メイもそのようなマインド、自負の持ち主だ。
「勝負のかかった場面で自分の手にボールを託される瞬間、そしてシュートを打つ瞬間はすごく好きです。バスケットの選手として、勝敗のかかる場面で活躍できるか、できないかはすごく大事になります。そこに自分がシュートを打とうと望む気持ちを持てるか、持てないかも同様に大事です。そういう気持ちを持っていれば、選手としてもっと成長できると思っています」
一方で、彼はチームプレーヤーでもある。
「自分は(2017年の)ケンタッキー大とのファイナル8で、NCAAトーナメント優勝につながる、大事なシュートを決めました。ただ自分が色んな人に伝えるのは『優勝していなかったら、あれほど大きく取り上げられなかった』ということです。実は準決勝と決勝で、私はあまりいいプレーができていません。あのシュートは今日と同じように、チームメイトが価値を上げてくれたシュートでした」
チーム浮上の背景は?
選手も揃い、チームはグレスマンHCのスタイルが表現できるようになりつつある 【(C)B.LEAGUE】
キャプテンの平尾充庸は、チームの現状に付いてこう述べる。
「リッチ(グレスマンHC)の求めているのはアンセルフィッシュなバスケット、自己犠牲です。シンプルではありますが、しっかり動きを固定されているので、分かりやすいのかなと思います。あとは練習時からの取り組む姿勢など、細かいところかもしれないですけど、リッチが締めてくれた。それでチームが機能し始めました」
山口颯斗も「リッチ効果」を口にする。
「リッチが帰ってきて、ガラッとシステムは変わりました。だけど試合に出ている日本人選手は僕と充さん(平尾充庸)、(中村)功平さん、鶴さん(鶴巻啓太)とみんな去年からやっています。それと外国籍選手のケミストリーが上手くできているのかなと思います」
チーム内の役割、動きを徹底することでまず自滅が減った。一方で相手のアジャストに対して、オフェンスが「次の判断をする」レベルの成熟度がまだ茨城にない。彼らはまず攻守の規律を守る、ハードワークをするといった「ベース」を整備した上で、速攻に活路を見出している。
平尾はこう説明する。
「そこまで細かいバスケットを、ウチはまだできていません。ハーフコート(じっくり組み立てるオフェンス)より、ディフェンスから走るバスケットが今はハマっているのかなと思います」
コート内外にメイ効果
キャプテンの平尾はメイの姿勢、人柄を評価する 【(C)B.LEAGUE】
「とにかく『速くプレーする』ことを助けるように、コーチに言われていました。まず自分が求められたのは速攻の先頭に立つこと、そしてリバウンドに絡むこと、オープンショットを決めることです。チームから求められているものは、何でもやろうと思っています」
平尾は「試合以外」の部分で、メイをこう称賛する。
「取り組む姿勢もそうですし、人柄がいいですね。まだ来て間もないですけど、多分もう全員の名前を覚えているようですし、コミュニケーション能力に長けています。あと彼はとにかく一生懸命やってくれて、姿勢を背中で見せてくれる。エリック(・ジェイコブセン)がいなくなって、先頭を切って走る外国籍選手は久々だったので、そういった意味でもいい影響を与えてくれています」
山口は試合におけるサプライズを口にする。
「試合になるまであまり僕らも分からなかったんですけど、自分でリバウンドを取って自分でプッシュして決めてくれますね。練習でも1回2回はやっていたのですが、ここまでできるのは知らなかったです。最初は時差ボケもあって、コンディションが悪くて、ちょうどコンディションが良くなってきた時期がこの週末でした」
茨城が残留圏内に浮上したとは言え、まだ19試合が残っていて、信州や富山との差はわずかだ。大黒柱のエリック・ジェイコブセンも負傷からまだ復帰できていない。メイの直前に獲得したブライアン・コンクリンは出場1試合でインジュアリーリスト(負傷者リスト)入りしてしまった。
まだ茨城のピンチは続く。とはいえ楽しみな新戦力がコート上で結果を出し、今季初の連勝も飾った。1カ月前に比べると、チームは大きな希望を持てる状態まで持ち直している。