町田がJ1で見せる「旋風」の兆し プレスとロングスローで名古屋を圧倒

大島和人

藤尾が得点「以外」でも貢献

米本拓司の退場も、藤尾の前線守備からだった 【(C)FCMZ】

 その後の決定機はモノにできなかったが、試合の主導権は最後まで町田だった。藤尾は守備面でもこの試合のヒーローにふさわしい活躍を見せている。その上でゴールも決めているのだから、その貢献度は圧倒的と言っていい。

 名古屋戦で藤尾が記録した総走行距離は12.037キロで、これは両チーム最長。献身性とクレバーさを兼ね備えた「2度追い・3度追い」で名古屋のビルドアップを機能不全に追い込んでいた。普通なら足が止まるはずの87分には、相手のボールコントロールミスに詰めて奪い、米本拓司の一発退場を誘うプレーも見せた。

 町田は第2節を終えて1勝1分けの勝ち点4。G大阪、名古屋から勝ち点を奪うだけでなく、退場者を出した時間帯を除くと、内容で圧倒していたことは特筆に値する。しかもそれはキャプテンの昌子源、エースのエリキ、背番号10のナ・サンホといった主力を欠きつつの結果だ。

 黒田監督は言う。

「前回からスタメンも何人か変わりました。退場処分やケガで我々の意図するメンバーを組めない状況もあります。だけどキャンプを通じて町田のコンセプト、ベースをしっかりと叩き込まれてきたメンバーたちです。誰が出ようと落とすわけにはいかないし、穴や足かせにならぬように、代わって入った選手たちも気持ちを高くしてやっていました。選手層のところでも収穫のある試合だったと思います」

町田が見せる旋風の兆し

町田は厚みのある守備で、名古屋に何もさせなかった 【(C)FCMZ】

 浦和レッズに6シーズン所属し、「J1基準」を知る柴戸海も自信を見せる。

「ここ2試合だけでなく、トレーニングを含めて、(J1でも)問題ないというか、やれる確信があります。それだけ選手たちが日頃の練習からひたむきにやっていますし、誰ひとりサボる選手、緩慢な選手がいない。それは町田の良さで、今日のような勝利を呼び込めた要因だと思います。当たり前のことを当たり前にやるところが町田の良さで、現段階で通用している部分です」

 町田は「5位以内」を目標としてJ1のファーストシーズンに入った。21世紀にJ1初昇格を果たした11チームのうち、一ケタ順位で初年度を終えたチームは2012年のサガン鳥栖(5位)しかない。しかし町田の戦いを実際に見た人ならば、それが高望みとは思わないだろう。町田は2024年のJ1で旋風を巻き起こす兆しを、開幕からの2試合で既に見せている。

 9日(土)にはホーム町田GIONスタジアムで鹿島アントラーズ戦が組まれている。今季のJ1は第2節を終えて連勝がない混戦だが、鹿島は勝ち点4、得失点差+3で現在首位。鹿島はランコ・ポポヴィッチ監督、佐野海舟といった町田と縁のある人材がいるクラブでもある。序盤戦の大一番と言っていいだろう。

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著者プロフィール

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、ラグビー、ハンドボールと幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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