ファームに新規参加 新潟&静岡が描く未来構想

“野村イズム”の継承、選手育成、地元ファンへの思い…橋上監督が目指すオイシックスの野球

中島大輔

チームとファンとの距離をもっと縮めたい

新潟に来て、「地域のために」という思いがさらに強くなったと橋上監督は話す 【写真:スリーライト】

――橋上監督は球団を長期的に見て、基盤を作っていかなければという気持ちも強いですか?

 そうですね。昨年まで独立リーグの球団でしたから、地元に対する貢献も非常に大事になってきます。選手を獲得するに当たっても単に戦力の意味合いだけではなく、地域性も考慮されます。そこも含めて球団に任せていました。

 そうした役割を分けた段階で、集めてきた選手を現場は育成していく。うちのフロントにも「長い目で考えたら、こういう考え方の首脳陣の方がいい」と見てもらいたいんですよ。今まで編成に口を出す監督もいたかもしれないけど、どういうスタンスの監督の方がチームに利益を生むか。そう考えてもらえれば今後、私の任期が終わった後の首脳陣の人選に当たっても一つの目安になると思うんですよね。

――アルビレックスでは高津臣吾(現ヤクルト監督)さんも2012年に監督を務めました。球団に野村イズムは受け継がれていますか?

 2011年に最初にここで監督をやらせていただいたとき、「野村さんの考えをチームに伝えてほしい」と球団に言われました。当時の任期は1年足らずでしたけども、その後に高津が率いた。その後も(ギャオス内藤、加藤博人と)ヤクルト関係の人間が引き継いでいます。球団がそういったものを継承してもらいたいという人選になっていると思います。

――この球団のカラー、良さはどの辺にありますか?

 やっぱり地元に対する思い入れはすごく強いですよね。BCリーグができた経緯も、元々新潟の子どもの野球ファンから発していますし。そういったところで地元に対する貢献を非常に色濃く掲げてきたチームなので、それは今でも残っていますね。

――独立リーグの球団から立場が変わり、野球界の発展のためにこの球団はどうなっていくのが理想的ですか?

 NPBは基本的にどこかの企業のチームという色合いが濃いですよね。ただ、これからの野球チームは、やっぱり地域があってのものだと思うんですよ。いかに地域の方々に熱心に応援してもらえるか。野球に限らず、スポーツビジネスでは一番のポイントだと思います。

 NPB球団の場合、ファンの方からチームや選手に寄っていく関係性だと思います。球団はどうしても、一定の距離感を保つんですよね。うちも球団とファンにある程度の距離はあるけど、できるだけ縮めたい。なおかつ、うちらはチームの方からファンにできるだけ寄っていきたいと思っています。

――球団から寄っていくことで良い循環が生まれると感じてきたのですか?

 やっぱり仙台の楽天が大きいですね。私は球団の立ち上げからいて、いかに地元の方々に認知してもらえるかと地域活動を間近で見ていました。良いものは真似したいですよね。

――球界のいろんな良い取り組みを取り入れ、オイシックスは今季再出発するのですね。

 最終的に新潟県全体の野球のレベルをさらに上げたいと思います。実際、野球を好きな方が非常に多い県だと思うんですよ。高校野球も非常に熱心ですし。高校野球を応援する熱量を我がチームに向けてもらうためには、距離感をいかに縮めていけるか。なおかつ自分たちの方から縮めていけるかが大きなポイントだと思います。

企画構成:スリーライト

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著者プロフィール

1979年埼玉県生まれ。上智大学在学中からスポーツライター、編集者として活動。05年夏、セルティックの中村俊輔を追い掛けてスコットランドに渡り、4年間密着取材。帰国後は主に野球を取材。新著に『プロ野球 FA宣言の闇』。2013年から中南米野球の取材を行い、2017年に上梓した『中南米野球はなぜ強いのか』(ともに亜紀書房)がミズノスポーツライター賞の優秀賞。その他の著書に『野球消滅』(新潮新書)と『人を育てる名監督の教え』(双葉社)がある。

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