ファームに新規参加 新潟&静岡が描く未来構想

再びスポットライトの当たる場所を目指す高山俊 新潟の地で心に芽生えた新たな気持ちとは?

中島大輔

横田慎太郎さんに活躍する姿を見せたい

阪神時代、一緒に守備練習をする故・横田慎太郎さん(左)と高山(中)。インタビューでは横田さんへの想いも語ってもらった 【写真は共同】

 やるべきはただ一つ、打撃で結果を残すことだ。

 阪神での1年目から外野の定位置を確保して新人王に輝くような結果を残したが、それがNPBでのキャリアハイとなった。2年目以降は相手のマークも厳しくなり、自身もいろいろなことを考えすぎて思うような成績を残せなかった。

「プロで最初の1年が終わり、『まだこれではダメだ』と考えすぎたところもありました。僕の技術が伴わなかったところもあります。試合になかなか出られなくなってきて、どうやったら出られるかと、チームにフィットするようなバッティングを心がけていたのがここ数年ですね。もう1回、原点に戻って自分のバッティングを今、心がけています」

 ファンが高山に望むのは、プロ1年目のように無心で自分の力を発揮していた姿だろう。

 一方、高山自身には再起を誓う上でのモチベーションが多くある。その一つは昨年、古巣・阪神が38年ぶりの日本一を達成したことだ。

「同級生や後輩、先輩など一緒にやってきた仲間が日本一を目指している姿は純粋に応援していたけど、自分もいたかったなっていう思いがありました。素直に悔しかったですね」

 もう一つは、ルーキーイヤーの2016年に1・2番のコンビを組んでいた横田慎太郎さんが昨年、脳腫瘍で28歳の若さで逝去したことだ。

「野球をやりたくてもやれなくなってしまった選手が身近にいました。僕は当時ファームにいたけど、一軍に上がって何としても結果を出したかったですけどね……。横田がやりたかった野球を元気にやっている姿を見せたい。7月末までにNPBに入って、一軍で結果を出している姿を届けたいです」

 新天地・新潟への感謝もある。生まれ変わった球団と一緒に、新たな歴史を切り拓いていきたい気持ちは強い。
 
「今までNPBを経験していない選手が一人でも多くドラフトにかかれば、球団の価値も上がっていきます。それで周囲から『ファームに参戦して良かった』と言ってもらえるのが一番いい。そのためにも僕らは経験を伝えて、新たにNPBに入る選手が新天地でなるべく苦労しないようにする。そうやってうまく循環していけばより良いチームになるはずだし、より価値のある取り組みになっていくと思います。そうして何年も続いていけば、オイシックス新潟はすごく価値のあるチームになっているはずです」

 30歳のリスタート。阪神1年目に鮮烈な活躍を見せた高山はその後の苦しかった経験を糧とし、新たな力も得て、再びスポットライトの当たる場所に戻るつもりだ。


企画構成:スリーライト

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著者プロフィール

1979年埼玉県生まれ。上智大学在学中からスポーツライター、編集者として活動。05年夏、セルティックの中村俊輔を追い掛けてスコットランドに渡り、4年間密着取材。帰国後は主に野球を取材。新著に『プロ野球 FA宣言の闇』。2013年から中南米野球の取材を行い、2017年に上梓した『中南米野球はなぜ強いのか』(ともに亜紀書房)がミズノスポーツライター賞の優秀賞。その他の著書に『野球消滅』(新潮新書)と『人を育てる名監督の教え』(双葉社)がある。

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