現地記者が語る大谷翔平&山本由伸“両方獲り”の理由 ドジャースが求めた「結果だけではないもの」

丹羽政善

誤報が飛び交った理由

 ところで、大谷の契約を巡っては、ドジャースとの契約直前にブルージェイズと契約する、という情報が流れた。

 12月8日、かつて南カリフォルニアニュースグループ(傘下にオレンジカウンティ・レジスター紙、ロサンゼルス・デイリーニュース紙などを抱えるメディア)の記者で、12月にドジャース・ネイションというネットメディアに移籍したばかりのJ.P.ホーンストラ記者がまず、一報を伝えた。その後、MLBネットワークのジョン・ポール・モロシ記者が、「現在、(契約のため)トロントへ向かっている」と続報を流している。

 結局はともに誤報だったのだが、同じロサンゼルスを拠点とする記者同士、ゴンザレス記者はホーンストラ記者をよく知り、MLB.COMで記者をしていたこともあるゴンザレス記者は、モロシ記者とも同僚だった。よって、「そうなると思った」と振り返っている。

「J.P.ホーンストラが、ブルージェイズと契約するというニュースを出した。彼は非常に信用できる記者だから、彼が言うなら信用できる情報だと思った」

 さらに続けた。

「ジョン・ポール・モロシ記者のリポートは、翔平がトロントへ向かっているという具体的なものだったけど、それも真実ではなかった。彼もまた信頼のできる記者だったから本当だと思った」

 彼同様、多くが2人の情報を信用したが、「誤報が飛び交ったのは、翔平という超トップクラスの選手がフリーエージェントになったのに、まったく情報が漏れてこなかったことで、推測ゲームが加熱しまったことにある」とゴンザレス記者は指摘する。「SNSが全盛のいま、情報の信ぴょう性が疑われるものが少なくないから、こういう事も起こりうる。本当に情報が少なかったから、今回のフリーエージェントは予測が難しかった。終わったときホッとしたよ」。

 これには、同意するメディアもいれば、アクセス数を稼げたのにと、がっかりしたネットメディアもいるかもしれない。

「エンゼルスにはガッツがなかった」

 ところで、大谷を逃し、効果的な補強もできていないエンゼルスは今後、どうなるのか? ゴンザレス記者は、「エンゼルスにはガッツがなかった」と呆れた。

「アート・モレノオーナーにはチャンスがあったのに翔平を引き止められなかった。本当は何が何でも(再契約)しなければいけなかったのに」

 代理人のネズ・バレロは、「エンゼルスには契約にマッチする機会を与えた」と明かしたが、モレノオーナーは、7億ドルの契約には同意しなかった。彼には、“合理的ではない”と映ったのだろうが、それによって失うものの大きさを考えれば、その方が非合理的であるかもしれない。

 なお、ドジャース移籍は、日本人ファンを少し困らせている。ドジャースのチケットはエンゼルスと比べて高額で、しかも入手しにくい。しかし、ゴンザレス記者はこう言った。

「でも(ファンは)、翔平がプレーオフでプレーする姿が見られる」

 確かに今年こそ、それが現実となりそうだ。

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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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