MLB公式記者の2023年ベスト10

MLB公式記者が選ぶ2023年の世界の野球ニュース・ベスト10 千賀の活躍、アクーニャの大記録を抑えての1位は?

丹羽政善

キャロルが体現した「野球に身長は関係ない」

5位:野球のグローバル化
4位:新人王を獲得したコービン・キャロル(Dバックス)
3位:アドリス・ガルシア(レンジャーズ)の満塁ホームラン
2位:ロナルド・アクーニャ(ブレーブス)の40本塁打、 70本塁打


 4位のキャロルについては千賀のところでも少し触れたが、彼は今季、155試合に出場すると、打率.285、25本塁打、76打点、116得点。出塁率は.362で、OPSは.868。MVP投票でも5位だったが、満票での新人王受賞は妥当だった。

 クレア記者はこんな指摘もした。

「彼は小柄で、身長は180センチに届かない。このサイズではアメフトは難しい。バスケットも無理だろう。ホッケーなら出来るかもしれないが、野球に身長は関係ない」

 イチローさん(現マリナーズ会長付補佐兼インストラクター)がかつて同じようなことを口にしたことがあるが、キャロルはシアトル出身であり、イチローさんに憧れて育った。そこに縁を感じるが、2019年のドラフト前、マリナーズもキャロルの指名を考え、Tモバイル・パークに招待した。その際、イチローさんと撮った写真も残っている。

 結局、その年のドラフトでは1巡目全体16位でダイヤモンドバックスが彼を指名し、マリナーズは全体20位でジョージ・カービーを指名。そこでは縁がなかったが、間違いなくスタイルが継承されている。

 2位は、ロナルド・アクーニャ(ブレーブス)の40−70(40本塁打以上、70盗塁以上)。もっともクレア記者は、数字以上に、アクーニャの野球愛、母国愛に興味を抱く。

「彼は去年もベネズエラのウィンターリーグでプレーし、今年もMVPを受賞したその日、やはり(ウィンターリーグの)試合に出ていた。ファンに対する最高の恩返しだ。
野球が好きな選手はもちろんいくらでもいるけど、アクーニャは息をするように野球をして、死ぬまでし続けるかもしれない」

 ちなみに、大谷とアクーニャが同じリーグだったら、どちらがMVPにふさわしいのか。その問いにクレア記者は、「大谷に投票するかな」と困った表情で応じた。

「アクーニャも誰もやったことのないことを成し遂げたけど、大谷は誰もやったことのないことをやっているから」

 その上でこう言っている。

「(投票する人は彼らが)違うリーグでホッとしている」

 さて、野球界の10大ニュース。第1位は、結局、ここに落ち着く。

1位: WBC決勝の九回2死、大谷対トラウト

「やはり大谷対トラウトの対決しかないと思う。あれを超えるものはない。間違いなく今年最高の瞬間。今後50年を考えてもずっと1位に君臨し続けるかもしれない。もうあんなシーンは二度とお目にかかれないかもしれない」

 今年、大谷とアクーニャはそれぞれ満票でMVPを受賞したが、名場面投票があるなら、やはりこのシーンが満票で選ばれていたかもしれない。

2/2ページ

著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント