バスケU15王者となった四日市メリノール中 「バスケ界の大谷翔平」を育てる熟慮とは?
「真のキャプテン」と言い得る人間性
2年生の白谷柱誠ジャックは特に期待度の高い選手 【(C)JBA】
「久しぶりの、いい選手です。渡邊雄太に劣らず頑張る気持ちがあるし、それでいてチームを引っ張る気持ちや、茶目っ気もある。『大谷翔平』にしたいと思っています」
ジュニアウインターの白谷は良くも悪くも「渋い」プレーに徹していた。
「本当はジャックにボールを入れたほうが確実に勝てます。でも今は色んな選手にシェアしたい。それにジャックは『縁の下のジャック』で、サムライのようなところがあります。今は上級生にオフェンス力あるから、ブロックとかリバウンドに徹しようという気持ちも彼は持っている。ジャックが一番真面目で、真のキャプテンです。自分がマスコミに取り上げられたり、アンダーに選ばれたりしても、チームメイトのことを思える奴です」
白谷は3試合すべてで二ケタ得点・二ケタリバウンドの「ダブルダブル」を達成している。決勝戦も12得点、15リバウンド、7ブロックとインサイドの攻防で大きな貢献をしていた。ボールへの反応の鋭さ、一瞬の加速、ジャンプ力といった天性は明らかで、スキル的にもオールラウンドだ。ただ1対1、ダンク、3ポイントといった「映える」シーンにはあまり絡まず、主に守備やリバウンドで貢献していた。能力に加えて、その献身性が伝わってくる大会だった。
「大人」に近いプレーを見せる
「目標、夢が高くないと、ああならないのではないかと思います。以前から私は日本のバスケットは早い段階から熟練した選手を増やしていかなければいけないと言っています。例えば(14歳11カ月でプロデビューした)リッキー・ルビオや(16歳2カ月でプロデビューした)ルカ・ドンチッチは正しくそうじゃないですか。そういうチームが出てきたことが、私としては嬉しいです」
河村勇輝(横浜ビー・コルセアーズ)のように若くしてチームと日本代表のエースを任される選手が出てきているとはいえ、日本のバスケは長らく成長の遅さが課題だった。早い段階から「大人のバスケ」を身につけさせることが、ブレイクスルーのために必要だ。オプションを「その時点で確実にやれること」に絞って、型にハメてプレーさせたほうが中学だと結果は出やすい。しかしメリノールはスキルセットの多い選手が揃い、各々が自分の考えでプレーしていた。
もちろん各選手に課題はあり、将来の成功が約束されているわけではない。山崎HCも決勝後の取材でやんわりと「持ち上げ過ぎ」に釘を刺していた。とはいえキャリアの途中経過として理想に近いものを、彼らはコート上で表現していた。
私立中がU15年代の王道に
本田蕗以は福岡大大濠に進学予定 【(C)JBA】
またBリーグは「B革新」でドラフト制度導入を打ち出しており、ユース出身者もドラフトを通過する案の採用が濃厚。となるとBユースは投資としての意味が消え、育成に力を入れるクラブは大きく減るだろう。街クラブにも練習環境、費用の問題がある。そういった中でメリノールのような私立中がエリート育成のメインルートとなっていく可能性は高い。
実際にメリノールの主力選手は櫻井と本田が福岡大大濠、中村は東山という具合に、全国トップの強豪校に進学する。
Bリーグという魅力的なステージが誕生し、男子の日本代表はパリオリンピック出場を決めた。渡邊雄太、八村塁といった日本人NBAプレーヤーも活躍している。そのような中で選手、指導者の目線は「先」「上」を向くようになっている。
もちろん勝利を目指す過程も大切な「育成」「人間教育」だが、中学生年代の勝利は未来の可能性を削ってまで追求するものでない。四日市メリノール学院中は逸材が集まっているだけでなく、選手としての可能性を広げる取り組みができている。日本バスケの育成を考える上で、間違いなくお手本となる存在だった。