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遠藤航のすさまじき順応 アーセナル戦で見せた“世界最高峰”の真価

森昌利

遠藤はアーセナルとのプレミア頂上決戦でフル出場。リバプールのサッカーと世界最高水準にリーグに順応し、着実に進化していることをこの試合でも強く印象づけた 【Photo by Andrew Powell/Liverpool FC via Getty Images】

 12月23日(現地時間)、リバプールがホームのアンフィールドに首位アーセナルを迎えた一戦は、文字通り前半戦の天王山となった。両チームの勝ち点差は1。リバプールが勝てばトップの座を奪い返してクリスマスを迎える状況だった。期待に違わぬ名勝負となったこのプレミア頂上対決で、遠藤航はスタメンに名を連ねてフル出場。最高の雰囲気に包まれたビッグマッチで素晴らしいパフォーマンスを見せた。

濃厚かつ超ハイレベルな90分

 アンフィールドで行われたリバプールとアーセナルの一戦を現場で観た感動と驚愕をいったいどう言い表せばいいものだろうか。

 試合のスタッツを見る。ポゼッションがリバプール51%に対し、アーセナルは49%。シュート数は13対13。オンターゲット(枠内シュート)が3対2。コーナーキックはアーセナルの5対4。反則数はリバプール13、アーセナル14。これらの数字からも、1-1ドローで終わったこの試合ががっぷり四つの戦いだったことがよく分かる。

 しかしその内容は濃厚かつ超ハイレベルで、とてもじゃないが数字だけでは表せない。

 両軍ともにボールに寄せるスピードとパワーがものすごく、迫力満点の試合だった。中盤で連係の中心にいた主将マルティン・ウーデゴールをはじめ、ボールを扱うテクニックで若干アーセナルが優れているように見えたが、リバプールが運動量とトレント・アレクサンダー=アーノルドのロングボールを起点とするカウンターの出足でやや勝り、この差が“柔と剛の対決”の図式を生み出すと、さらに見る者を試合に引き込んだ。

 当然ながら試合の展開はスピーディーで、守備から攻撃への切り替えがすさまじく早く、ほんのわずかなミスが致命傷になりかねなかった。ボールを奪われてからの守備への切り替えも瞬間的で、あっという間に相手の自由を奪うようにスペースをなくし、すぐさまボールに詰め寄り奪い返しにいく。

 インテンシティというのは張り詰めた緊張感と集中力を表す言葉だが、その塊のような試合だった。

 今季はリバプールに遠藤航が加入し、冨安健洋がアーセナル3季目であり、両チームともに数試合ずつ見ていた。しかしこれほどまでに両軍選手が全力を搾り尽くした90分間は出現していなかった。そしてあらためて、両クラブに所属する選手の卓越した身体能力や反射神経、そしてその天才ぶりに舌を巻き、感銘した。

プレミアリーグの中でも最高峰のピッチ上に

世界中が注目したアンフィールドでの一戦は、両チームとも一歩も引かず、前半戦の天王山にふさわしい試合となった 【Photo by MB Media/Getty Images】

 イングランド中のフットボール・ファン、いや世界中のサッカー・ファンがこのプレミアの頂上対決に注目していた。この前日にアストン・ヴィラがシェフィールド・ユナイテッドとの試合で勝ち点1を積み上げて2位に浮上し、アーセナルとリバプールの間に割って入る形になってはいたが、実力、人気、実績、そしてクラブの格から言っても、この試合こそ前半戦のプレミアを代表する天王山となった。

 アーセナルは勝つか引き分けで首位堅持。リバプールも勝てば首位浮上。イングランドにはクリスマスを1位で通過すると「優勝する確率が格段に上がる」という“信仰”もあり、この週に行われたプレミアリーグ9試合(マンチェスター・シティ対ブレントフォードはマンチェスター・CのクラブW杯出場のため延期)の中で、当然ながら最も重要な一戦だった。

 そう、そんなビッグマッチに日本人選手が先発し、90分フル出場を果たしたのである。

 現在プレミアリーグは、世界で最も見応えがあるリーグだと言われている。強豪がひしめき、競合が最も激しく、しかもスタジアムはどこも常に超満員。サポーターのすさまじい熱狂と興奮のなかで選手は常に真剣勝負を求められ、両軍が全力を尽くす名勝負を生み出し続けている。

 そのプレミアリーグの中でも最高峰のピッチ上に遠藤航がいた。

 だから試合後、「こういう試合に出ると、自分の能力がさらに引き出されるという感覚になるのか?」と思わず聞いていた。

「まあ、そうですね。相手もそうだし、自分のチームメイトたちもそうだし、お互い勝ちにいっているなかで、お互いが常にボールを奪いにいくような姿勢を見せれば、前からプレッシャーをかけてみたいな、お互いそういう展開になれば、こういった試合になります。それで自分は何をプラスアルファで違いを作れるかというところで……。今日に関しては、入りも良かったですし、ボールの受け方だったり、前につけるシーンだったりとか、ちょっとプレッシャーをはがしてみたいなところもありました。後半は特に守備のところでしっかり奪い切るところは意識してたんで。まあまあ、悪くはなかったとは思います。ただし、どうやったらこれを勝ちに持っていけるのかみたいなところが、個人として、選手としての課題。こういったなかでも最後に勝ちに持っていけるだけのプレーを一つでも二つでも増やしていけるかどうか、その辺が次の課題だと思います」

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著者プロフィール

1962年3月24日福岡県生まれ。1993年に英国人女性と結婚して英国に移住し、1998年からサッカーの取材を開始。2001年、日本代表FW西澤明訓がボルトンに移籍したことを契機にプレミアリーグの取材を始め、2024-25で24シーズン目。サッカーの母国イングランドの「フットボール」の興奮と情熱を在住歴トータル29年の現地感覚で伝える。大のビートルズ・ファンで、1960・70年代の英国ロックにも詳しい。

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