井上尚弥、さらなる高みへ 2階級4団体統一編

井上尚弥、周囲の楽観論と裏腹に強める危機感 慢心とは無縁の姿勢でタパレスをKO宣言

長谷川亮
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2階級4団体統一を懸けた世界スーパーバンタム級王座統一戦に向けて公開練習を行った井上尚弥 【写真は共同】

 ボクシングWBC・WBOスーパーバンタム級(55.34キロ)2団体統一王者・井上尚弥(大橋)は、同級のWBAスーパー・IBFの2団体統一王者マーロン・タパレス(フィリピン)と12月26日に東京・有明アリーナで4団体統一戦を行う。

 2022年12月、バンタム級(53.52キロ)でアジア初の4団体統一を成し遂げてから1年。夏に新階級での2団体統一王者となり、今度は世界でもテレンス・クロフォード(アメリカ)しか成しえていない2階級での4団体統一を目指す(※クロフォードはスーパーライト級とウェルター級で4団体統一を達成)。戦前の下馬評では井上の圧倒的優位は揺るがないが、スーパーバンタム級も井上が完全制覇を果たすのか。これまでの戦いから井上の充実ぶりを振り返る。

“一番強い”フルトンを難なく退けたモンスター・井上

スーパーバンタムで最強のライバルと目されたフルトンを難なくKOで沈めた 【写真は共同】

 井上の前回の戦いはスーパーバンタム級初戦となった2団体統一王者スティーブン・フルトン(アメリカ)とのタイトルマッチ(7月25日)。ライトフライ級(48.99キロ)からスタートし、スーパーフライ級(52.16キロ)、バンタム級(53.52キロ)と制してきた井上にとって新階級で通用するか、そのテストがいきなりタイトル戦となったが、これを難なくクリアした。

 ボクシングではハードパンチャーが階級を上げ、相手の耐久力が上がることで倒せなくなることも少なくないが、井上にとってスーパーバンタムはまだ“階級の壁”とならなかった。無敗同士の対決となった注目の一戦は、KOでフルトンに初黒星を与えた。

 試合後の井上は「スピードもパワーも充実した内容が見せられた。それでもスーパーバンタム級初戦ということで、練習で“こうしたらいいんじゃないか”という方向性が見えました。リカバリーや減量法、まだ改善できることも山ほどあるし、まだまだ強い姿を見せれるんじゃないかと思います」と、新階級での手応えと自身のさらなる“伸びしろ”を口にした。

 フルトンはスピードとテクニックに長けたアウトボクサーで、身長・リーチともに井上を上回る。現在はフェザー級(57.15キロ)に転級したようにスーパーバンタムでも大きな選手で、そうした相手に井上は初回から前へ出て、圧力を掛け試合を支配。ジャブやボディで削り、8RにKOで仕留めた。

 フルトンについては「この階級で一番強い」と井上自身が評価してきたが、まだ新階級での第1戦。スーパーバンタムとしては未完成でありながら最強の相手を圧倒してしまうのだからたまらない。
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著者プロフィール

1977年、東京都出身。「ゴング格闘技」編集部を経て2005年よりフリーのライターに。格闘技を中心に取材を行い、同年よりスポーツナビにも執筆を開始。そのほか映画関連やコラムの執筆、ドキュメンタリー映画『琉球シネマパラダイス』(2017)『沖縄工芸パラダイス』(2019)の監督も。

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