カーリングの世代交代は進むのか 次世代の2チームが激戦区制して日本選手権へ

竹田聡一郎

様々な編成を試し、チーム力アップに成功

「今年はカナダ遠征のツアーなどそんなにうまくまわっていないことが多くて、試行錯誤してきました」

 そう今季のここまでを振り返るのは北海道銀行のサードを務める仁平美来だ。

 北海道銀行は夏の北海道ツアーから様々なポジション編成を試してきた。試合ごとに田畑百葉、仁平、山本冴らハウス立たせチームとしての可能性を探り続けた。時にはチームの支柱である田畑をもコーチボックスに座らせたほどだ。

 前述したように国内外のツアーでは目立った結果は残せなかったが、中島未琴ー山本ー仁平ー田畑というポジションで挑んだ北海道選手権は蓋を開けてみれば全勝優勝。田畑は「最後まで勝ち切ることができて、チームとしての成長が感じられた」と手応えを口にしたが、その「成長」と複数ポジションをそれぞれが経験してきたことは無関係ではないだろう。

 顕著なシーンが決勝の第1エンドで見られた。

 ハウスの中心からいちばん近いナンバー1ストーンを持った状態で、北海道銀行のラストロック。田畑は「普通にドローを投げようと思っていた」と振り返ったが、仁平らチームメイトは、ハウスの外の自軍の石を押しつつシューター(投げた石)もハウスに入れる「ダブルロールイン」で3点を獲得するプランを提案した。「さーって(田畑が)いなくなっちゃったけれど、(ミスが出ても)2点にはなりそうだったのでトライしました」と仁平。「私がそのショット(ダブルロールイン)に気づかないことが問題だったんですけれど」とやや自虐的に笑いながらも田畑は、しっかりと仁平の要求どおりのショットを決めて3点という、あまりにも大きなリードを得たが、このショットに北海道銀行の成長が凝縮されていた。

 ラストロックに関してはこれまで田畑がショットを基本的には選んできたが、仁平や昨季加入した山本をスキップやバイスで起用することで、ラストロックを投げる前にハック(石を投げる際に蹴り出す足場)からの視界を分析し伝える視点、次にラストロックを投げる選手としての心理、ラストロックをスイーパーにコール(指示)して欲しいポイントに導くノウハウが、チーム全体に備わった。

 結果としてスイーパーの中島はスイーピングに迷いがなくなり、そのぶん精度が上がった。オールラウンダーである伊藤彩未がフィフスに控えていることでバックアップ体制も整い、氷上の4選手の思い切ったパフォーマンスを引き出す、という好循環に入った。佐藤浩コーチも「プレーオフや決勝のような試合ができれば日本選手権も戦えると思います」とコメント。地元札幌開催の日本選手権ということも追い風になりそうだ。

「ホームリンクというのはいちばん大きなアドバンテージなので、日本選手権になったらアイスも変わりますが、その雰囲気だったり緊張感を意識しながら練習を重ねたい。オリンピックに関わる重要な大会なので、優勝を目指して頑張りたいです」(田畑)

 いま日本のトップカーラーとして走っている藤澤五月らロコ・ソラーレのメンバーやフォルティウス(Yoshimura)の小野寺佳歩、今季新チームを結成し日本選手権まで勝ち上がったGRANDIR(Ozeki)の石垣真央らはいずれも1991年の北海道生まれで、“カーリング黄金世代”と呼ばれている。

 今回、北海道選手権を勝った男子の前田拓海、中原、上川、女子の田畑、仁平、フォルティウスの小林未奈らは同様に2002年生まれ。カーリングを本格的に始めた頃から札幌や北見に通年型のリンクが存在した次世代のタレントだ。2026年五輪前後に世代交代は進むのか。このあたりも今季以降の見どころになってきそうだ。

中島と山本はスイーパーとして今季、多くの経験を積んだ。「少し弱くても(スイープで)持っていってくれるので安心して投げられている」と田畑 【写真:筆者撮影】

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