三笘がアーセナル戦後に「惨敗」と語った理由 “不可欠な存在”に求められる高い理想
無我夢中さ、欲求不満、勝利への強い欲求
「もう、そういう状況でやっていかないといけないですし。もちろん、コンディションは悪くないので、その上で結果を出せないと。コンディションどうのこうのではないんで。惨敗ですしね。ほんと、コンディションっていうよりは、自分のチャンスのところだったり、もっと何かできたってところは大きいですけど」
このコメントの中には三笘の無我夢中さ、欲求不満、そしてどんな状況であっても“勝ちたい”という強い欲求が入り混じっていると思う。
いみじくもデ・ゼルビ監督は準備万端だったアーセナルに沈黙させられた試合直後の会見でこう言った。「今日はエヴァン・ファーガソン、アダム・ララーナ、シモン・アディングラといった攻撃陣とともに、三笘も厳しい試合を強いられた。我々にとってタフな試合だった。三笘はケガから復帰したが、まだ彼の絶好調時には戻っていない。しかしカオルはチームにとって不可欠な存在だ」と。
そう、今季の三笘は、たとえ完調でなくても、ブライトンにとって“不可欠”な存在なのである。
100%の状態でなくても絶対的なレギュラーとして結果が求められる存在。それなのに、攻撃陣の要であるのに、ゴールを生み出せなかった試合後、三笘はその悔しい思いを「惨敗」という過激な言葉で表現してしまったのだろう。
いかに自分を表現し、勝利をもたらすか
しかし三笘は、この試合で唯一と言っていいブライトンの決定機を作っていた。後半37分、左サイドで味方からパスを引き出した三笘が得意の右足アウトサイドでグロスにクロスを送った。このボールに至近距離でドイツ代表MFが左足を合わせたが、このシュートは惜しくも左サイドのポストをかすめて、ブライトンは千載一遇の同点のチャンスを逃した。
「いや、まあ僕も決定機があったんで。シュートを打ち切れなかったですし。そこまでチャンスを作れない中で、その一つのチャンスに対して(悔やむ)っていうよりは、もっともっと自分たちがチャンスを作れないところが(ゴールが奪えなかった)要因だと思う。そこを悔やむというよりは、もっと根本的に自分たちがデュエルに負けるとか、そういうところも多かったですし、もっと押し込んで、自分たちが自信を持ってやらないといけないと思います」
あのチャンスにグロスが決めていたら、1-1の同点となり、その後をしっかりと守りに集中すれば、「エミレーツから勝ち点1を持ち帰ることもできたのではないか?」という質問に対して、三笘はそう答えた。
これもまた26歳日本代表MFの意識の高さが表れているコメントだと思う。
強豪アーセナルに対して悪条件が揃っていたにもかかわらず、言い訳なしで一歩も引かない姿勢。三笘は今、世界最高峰レベルのフットボールの中でいかに自分を表現し、チームに勝利をもたらすかということに固執しているようだ。
(企画・編集/YOJI-GEN)