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三笘がアーセナル戦後に「惨敗」と語った理由 “不可欠な存在”に求められる高い理想

森昌利

無我夢中さ、欲求不満、勝利への強い欲求

前半は無失点で切り抜けたブライトンだが、後半8分に先制点を許すと、試合終盤にもゴールを奪われて0-2で敗北。三笘はアーセナル戦のこの負けを「惨敗」と形容した 【写真:ロイター/アフロ】

 試合後、三笘の口からこの0-2の負けに対して“惨敗”という言葉がぽろっとこぼれたのは、故障明けでありながら先発が続き、そのなかで「たくましさが増している印象がある」と伝えた後のコメントの中だった。

「もう、そういう状況でやっていかないといけないですし。もちろん、コンディションは悪くないので、その上で結果を出せないと。コンディションどうのこうのではないんで。惨敗ですしね。ほんと、コンディションっていうよりは、自分のチャンスのところだったり、もっと何かできたってところは大きいですけど」

 このコメントの中には三笘の無我夢中さ、欲求不満、そしてどんな状況であっても“勝ちたい”という強い欲求が入り混じっていると思う。

 いみじくもデ・ゼルビ監督は準備万端だったアーセナルに沈黙させられた試合直後の会見でこう言った。「今日はエヴァン・ファーガソン、アダム・ララーナ、シモン・アディングラといった攻撃陣とともに、三笘も厳しい試合を強いられた。我々にとってタフな試合だった。三笘はケガから復帰したが、まだ彼の絶好調時には戻っていない。しかしカオルはチームにとって不可欠な存在だ」と。

 そう、今季の三笘は、たとえ完調でなくても、ブライトンにとって“不可欠”な存在なのである。

 100%の状態でなくても絶対的なレギュラーとして結果が求められる存在。それなのに、攻撃陣の要であるのに、ゴールを生み出せなかった試合後、三笘はその悔しい思いを「惨敗」という過激な言葉で表現してしまったのだろう。

いかに自分を表現し、勝利をもたらすか

三笘のクロスにグロスがニアで合わせた後半37分のシーンのように、ブライトンにチャンスがなかったわけではない。しかしアーセナルと比較して、その数が少なすぎた 【写真:REX/アフロ】

 この試合で感じたアーセナルとの力の差。それは「チャンスの多さです」ときっぱり。「とりあえず(相手は)何度もシュートの決定機がありましたし、入ってれば0-3、0-4ぐらいのスコアでもおかしくないくらいでした」と続けて、アタッカーらしい視点で試合を振り返っていた。

 しかし三笘は、この試合で唯一と言っていいブライトンの決定機を作っていた。後半37分、左サイドで味方からパスを引き出した三笘が得意の右足アウトサイドでグロスにクロスを送った。このボールに至近距離でドイツ代表MFが左足を合わせたが、このシュートは惜しくも左サイドのポストをかすめて、ブライトンは千載一遇の同点のチャンスを逃した。

「いや、まあ僕も決定機があったんで。シュートを打ち切れなかったですし。そこまでチャンスを作れない中で、その一つのチャンスに対して(悔やむ)っていうよりは、もっともっと自分たちがチャンスを作れないところが(ゴールが奪えなかった)要因だと思う。そこを悔やむというよりは、もっと根本的に自分たちがデュエルに負けるとか、そういうところも多かったですし、もっと押し込んで、自分たちが自信を持ってやらないといけないと思います」

 あのチャンスにグロスが決めていたら、1-1の同点となり、その後をしっかりと守りに集中すれば、「エミレーツから勝ち点1を持ち帰ることもできたのではないか?」という質問に対して、三笘はそう答えた。

 これもまた26歳日本代表MFの意識の高さが表れているコメントだと思う。

 強豪アーセナルに対して悪条件が揃っていたにもかかわらず、言い訳なしで一歩も引かない姿勢。三笘は今、世界最高峰レベルのフットボールの中でいかに自分を表現し、チームに勝利をもたらすかということに固執しているようだ。

(企画・編集/YOJI-GEN)

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著者プロフィール

1962年3月24日福岡県生まれ。1993年に英国人女性と結婚して英国に移住し、1998年からサッカーの取材を開始。2001年、日本代表FW西澤明訓がボルトンに移籍したことを契機にプレミアリーグの取材を始め、2024-25で24シーズン目。サッカーの母国イングランドの「フットボール」の興奮と情熱を在住歴トータル29年の現地感覚で伝える。大のビートルズ・ファンで、1960・70年代の英国ロックにも詳しい。

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