大谷翔平のドジャース入団を信じて疑わなかったベン・バーランダー 直前のブルージェイズ加入報道の裏側

丹羽政善

ドジャースに加入することとなった大谷だが、直前にはブルージェイズとの合意報道もあった 【Photo by Meg Oliphant/Getty Image】

「まだ、飛行機の中?」

 今回、大谷翔平がドジャースとの契約をインスタグラムで発表したことは、ベン・バーランダーからのテキストメッセージで知った。

「いや、昨日の夜、日本に戻ってきた」

「じゃあ、すぐに翔平のインスタグラムを見ろ」

 それが、日本時間10日早朝のことである。

浮上したブルージェイズ入り報道の裏側

 日本に一時帰国する前の7日、ロサンゼルスでバーランダーに会った。

 その時点で、「ドジャースで決まると思う。疑いない」と自信ありげ。

 ところが、翌8日朝、MLBネットワークのジョン・ポール・モロシ記者が、「翔平はブルージェイズとの契約に傾いている」とリポート。「いま、トロント行きのプライベートジェットの中にいる」と具体的な動向にも触れ、「早ければ今夜、基本合意するかもしれない」と伝えた。

 実際、フライトを追跡するウェブサイトによると、ジョン・ウェイン空港(アナハイムの最寄り空港)から、トロントへプライベートジェットが飛んでおり、ファンもX(旧ツイッター)などでそのことをポストしていた。

 ロサンゼルスで成田行きの便に乗り込んでから、「どう思う?」とバーランダーから連絡。動画でも振り返っているが、このときばかりは「自分の考えが少し揺らいだ」そう。

 モロシ記者は、2000年代前半、彼がシアトルの新聞社でインターンをしていたときからの知り合い。「時間があったら、電話をしてくれ」とテキストメッセージを送ると、すぐに電話がかかってきた。

「どう思う?」

 こっちが聞きたかったから連絡をしたのだが、逆に、「本当か?」と聞くと、興奮気味にまくし立てた。

「かなり可能性が高い。自分も最初は半信半疑だったけど、複数の事実が、それを裏付けている」

 電話を切ってからバーランダーに連絡すると、電話の向こうで顔が曇るのが分かった。

「そこまで、自信があるのか…」

 トロントにいる知り合いの記者にメールをすると、こう返信があった。

「みんな、興奮している。地元テレビ局が、トロントの空港から中継するようだ」

 決まりなのか…?

 やがて離陸準備が始まり、実際に離陸してしばらくは、外部との連絡手段が途絶えた。

 ようやくテキストメッセージが出来るようになると、「プライベートジェットの話は誤報」と知り合い記者から連絡が来ていた。

 モロシ記者にテキストメッセージを送ると、「残念ながら、違っていた。今回の件では、学ぶことがいろいろあった」との返信。ブルージェイズとの合意報道そのものも彼は撤回した。

 バーランダーにそのことを伝えると、彼は息を吹き返した。

「やっぱり、ドジャースだろう」

 今回の取材でも強調していた。

「双方の利益にかなっている。それ(大谷がドジャースと契約しない)を否定する理由が見つからなかった」

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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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