男子ゴルフ観客が昨年比約140%増! コース内外での選手の魅力と大会の“お祭り”化

北村収

「ゴルフ日本シリーズJTカップ」最終日、優勝した蟬川泰果とショットを見つめる大ギャラリー 【写真は共同】

 今年、国内男子ツアーのギャラリー(観客)数が増大した! 昨年の2022年シーズンは海外で開催された「SMBCシンガポールオープン」、無観客で開催された4月の「東建ホームメイトカップ」を除いた25試合でギャラリー数は183,380人だった。今年の2023年シーズンは韓国で開催された「Shinhan Donghae Open」を除いて25試合。ギャラリー数は254,686人になった。71,306人増、昨年比で約140%とギャラリー数が増大した理由とは?

中島啓太、蟬川泰果、金谷拓実など、世界を見据える若手の台頭

「ギャラリーの皆様にたくさん入ってくれるように頑張りたい」と話す今年の賞金王・中島啓太 【写真は共同】

 今年の国内男子ツアーは、20代前半の若手が引っ張った。賞金王の中島啓太(23歳)、2位の蟬川泰果(22歳)、3位の金谷拓実(25歳)と賞金トップ3は20代前半。3人ともアマチュア時代にプロツアーでの優勝を果たしており、世界アマチュアランキング1位を経てプロ入りを果たした逸材。松山英樹に続く世界メジャーを狙う選手たちだ。
 ツアー最終戦となる「ゴルフ日本シリーズJTカップ」の最終日の後半もこの3人がトップを争う展開に。結局1打差で蟬川が最終戦の勝利をものにした。観戦中のギャラリーの「これだけ見応えがある試合だったら、ギャラリーが入るのもわかるよね」という話し声が聞こえた。

 素晴らしいプレーを披露することでファンに楽しんでもらいたいという選手の思いも強い。今季の賞金王に輝いた中島啓太は、「ギャラリーの方がたくさん入っている試合は本当に楽しいですし、今日もたくさんの方が会場に来られていて、(それは)自分が小学生の頃に見ていた景色だったので、これからもギャラリーの皆様にたくさん入ってもらえるように自分にできることがあったら頑張りたいと思います」と話す。

選手とギャラリーの間にはロープ1本。迫力あるプレーを間近で観戦

これほど間近に観戦できるプロスポーツは他にはあまりない。ショットは石川遼 【写真は共同】

 ゴルフトーナメントは他のプロスポーツと異なり観戦者と選手の距離が近い。試合中にその両者を隔てるのはロープ1本。数メートル先の選手のプレーはもちろん、表情や息づかいまで感じられる。

 初めて男子プロツアーを観戦したギャラリーのほとんどは、そのスイングの迫力と弾道の素晴らしさに圧倒される。「ゴルフ日本シリーズJTカップ」の最終日、筆者は取材のためロープ内に入ることも可能だが、あえて大ギャラリーの渦の中に入り最終組と最終組の一つ前の組で観戦してみた。するとギャラリーが男子トーナメントを満喫している様々な声が聞こえてきた。

「これは凄い」、「うぁー、鳥肌が立った」、「(ショットの)音がいいねー」、「いやー、見応えがある」、「多分グリーンは狙えないなー。え、狙った。スゲー、乗った」など。さらには、「ショットもすごいけどグリーンの寄せも面白いね」と男子プロの繊細な小技にも感動の声を上げるギャラリーが少なくない。ピンそばでキュッと止まるナイスアプローチには、ショットと同様の「スゲー」という声が上がっていた。

長蛇の列でも最後まで対応、選手によるサインと記念撮影

ギャラリーのサインに応じる中島啓太と、毎日ホールアウト後にできる中島のサインを求めるギャラリーの長蛇の列 【写真:北村収】

 テレビ中継やニュース報道では伝わってこない魅力は他にもある。多くのギャラリーが楽しみにしているのがホールアウト後の選手との交流だ。

 運営関係者に話を聞くと、「ほとんどの選手が並んでいるギャラリーすべてにサイン対応をしています」とのことだった。選手はホールアウト後、次の日のためにすぐにでもドライビングレンジに向かって調整を行いたいはず。にもかかわらずギャラリーを最優先した対応を行っている。この任意のギャラリーサービスについて、中島にどんな思いでやっているのかと尋ねてみると、「当たり前なことをやっているだけだと思います」と答えてくれた。

サインだけでなく、撮影にも笑顔で応じる蟬川泰果。さらに自身の名前入りティーを全員にプレゼントしていた 【写真:北村収】

 一方でこの選手の対応はファンにとってはかけがえのない体験だ。中島啓太からボールにサインをもらい歓喜している中学生3人組がいた。話を聞いてみるとゴルフをやっているという彼らにとって中島は憧れの存在。サインをもらった感想を聞くと、「うれしすぎます!」と満面の笑顔だった。

「ゴルフ日本シリーズJTカップ」の最終日の夕方、優勝した蝉川はギャラリーのサインや記念撮影に応じるだけでなく、ファンに自身の名前入りのティーを配っていた。選手はコースの内外で、ファンに喜んでもらうための様々な努力を行っている。

スマホ撮影が解禁!ファンのSNSに反応してくれる選手も

スマホで撮影をしながら観戦をするギャラリーが多い 【写真:北村収】

 今シーズン、ほとんどの試合でギャラリーのスマホによる撮影がOKになった。日本のスマホの場合シャッター音が問題となっていたが、無音撮影アプリをダウンロードして音が鳴らない設定にすればプレーの模様を自由に撮影できる。動画に関しても早めにボタン押して音が選手の邪魔にならないようにすればOKだ。

 これがギャラリーにとって非常に好評だ。撮影をしている人に話を聞くと、単に自分用に楽しむだけでなく、SNSにアップして楽しんでいるギャラリーが多い。ファンが自身のSNSで拡散してくれることは、国内男子ツアーの魅力の拡散にもつながっている。

 また、チャンネル登録者数 32.8万人の人気YouTuberとしても知られる堀川未来夢など、選手も積極的にSNSを活用。これも国内男子ツアーの人気を盛り上げている。

 このSNSの世界でも選手はギャラリーを大事にしている。ファンがした投稿に選手が反応してくれることがあるのだ。サイバー空間での交流は、ファンにとってはたまらない経験になるだろう。

 リアルやSNSでの交流をしたファンは、ほとんどがリピーターになる。サインを求めていたり、スマホで撮影をしているギャラリーに声をかけると「毎年、来ています!」という方が多い。

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著者プロフィール

1968年東京都生まれ。法律関係の出版社を経て、1996年にゴルフ雑誌アルバ(ALBA)編集部に配属。2000年アルバ編集チーフに就任。2003年ゴルフダイジェスト・オンラインに入社し、同年メディア部門のゼネラルマネージャーに。在職中に日本ゴルフトーナメント振興協会のメディア委員を務める。2011年4月に独立し、同年6月に(株)ナインバリューズを起業。紙、Web、ソーシャルメディアなどのさまざまな媒体で、ゴルフ編集者兼ゴルフwebディレクターとしての仕事に従事している。

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