PGAツアーとLIVゴルフの「電撃統合」を、米国メディアはどのように見ているのか?

北村収

PGAツアーのジェイ・モナハン会長(左)とサウジアラビア政府系のファンドであるPIFのヤシル・アル・ルマヤン会長 【Photo by Getty Images】

 今年の6月7日にPGAツアーとLIVゴルフの「電撃統合」が発表された。LIVゴルフを支援してきたサウジアラビア政府系のファンド、PIF(パブリック・インベストメント・ファンド)の投資による新団体の設立契約に、PGAツアーとDPワールドツアー(欧州ツアー)が署名した。PGAツアーとLIVゴルフの間の訴訟問題が終了し、PGAツアーとDPワールドツアーからメンバー資格を剥奪されたLIVゴルファーに対しては、再度のメンバー資格申請が期待されていた。

 しかし、発表から3ヶ月経つ今、統合の具体的プランはまだ明らかになっていない。逆に統合に関連する懸念が増えているようだ。米国メディアの報道を中心に、この「電撃統合」の現状と問題点を検証したい。

統合1週間後、独禁法違反疑いで米国司法省が調査

 この「電撃統合」に物言いをつけたのは米国司法省だった。6月15日、ウォールストリート・ジャーナルは米国司法省が独占禁止法違反の疑いで調査を開始すると報じ、その記事をロイター通信にが引用して世界中にこの事実が広まった。複数の上院議員がこの統合は競争を阻害するとして司法長官に調査を求めていたことが背景にあった。

 7月13日には、ワシントンポストが「米国司法省の要請により、LIVゴルフとPGAツアーが互いの選手を勧誘しないという条項が基本合意書から削除される」と報じた。両ツアーは競技シーズンの真っ最中であり、それぞれのツアーを飛び出すゴルファーはいないと考えられ、この要請自体はそれほど大きな影響を与えることはなかった。その後の司法省の動きは伝わってこないが、米国司法省は、両者の交渉が完了した時点で最終合意書を慎重に検討する意向であるとしている。

7月末、ミケルソンが「LIVゴルファーは誰もPGAツアーへの復帰を望んでいない」とSNSに投稿

 この統合で世界のゴルフファンが注目している事項の一つが、LIVゴルファーのPGAツアーへの復帰だ。米国ゴルフダイジェストは7月31日、フィル・ミケルソンのSNSを引用する形で、「LIVゴルフの選手でPGAツアーをプレーしたい選手は一人もいない」というミケルソンのコメントを紹介した。「LIVの選手たちに公式に謝罪し、賠償する必要がある」とミケルソンは語ったことが波紋を呼び、多くの米国メディアがこのミケルソンの発言を取り上げた。

 また、LIVゴルフの継続が危ぶまれる意見が多いが、ミケルソンは来年以降もLIVゴルフの活動が継続されるとの期待や確信を示唆した。

 ここで明確になったのが、PGAツアーの選手とLIVゴルフの選手が、以前のように一緒に戦う場を作ることの難しさだ。統合に向けて最もゴルフファンが期待している部分でもあるが、どのようになるのだろうか?

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著者プロフィール

1968年東京都生まれ。法律関係の出版社を経て、1996年にゴルフ雑誌アルバ(ALBA)編集部に配属。2000年アルバ編集チーフに就任。2003年ゴルフダイジェスト・オンラインに入社し、同年メディア部門のゼネラルマネージャーに。在職中に日本ゴルフトーナメント振興協会のメディア委員を務める。2011年4月に独立し、同年6月に(株)ナインバリューズを起業。紙、Web、ソーシャルメディアなどのさまざまな媒体で、ゴルフ編集者兼ゴルフwebディレクターとしての仕事に従事している。

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