サモアを“読み切った”日本の分析力 ラグビー元日本代表・藤井淳が解説
日本はサモアのディフェンスを分析し、空いたスペースを突破した 【写真:ロイター/アフロ】
負ければ決勝トーナメント進出が厳しくなる一戦で、日本はどのように勝利を手にしたのか? 元日本代表の藤井淳氏(東芝)に話を聞いた。
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優れた分析と準備でスペースを攻めた日本
日本はキックオフとセットプレー(スクラム、ラインアウト)が安定していて、自陣でプレーする時間を短くするエリアマネジメントもできていたことが勝利のポイントになりました。
サモアはFWが伝統的に強く、当たりが激しいのですが、キックを効果的に使うことで彼らを背走させて、試合のリズムを日本のものにしていたと思います。
――これまでの試合に比べて、日本は外側に広いスペースを作って、FBレメキロマノラバらが走るシーンが目立ちました。
まず、「どのスペースを狙うか」という判断があり、そのスペースにボールを運ぶためのプレー選択が良かったです。
前半32分にFLリーチマイケル選手がトライをした場面では、ハーフウェー付近のスクラムからSH斎藤直人選手がボールを持ち出して、レメキ選手のゲインにつなげました。
日本としては、サモアのフロントスリー(背番号10、12、13番)が寄り気味で、13番とその外に立つWTBの連携がとれていない……という分析だったのだと思います。そこでスクラムから直接、斎藤選手がディフェンスラインに仕掛けることでフロントスリーの出足を止めて、その後はパスで13番とWTBの間のスペースを突破しました。
ボールを出すためのスクラムが安定していたことも大きいですし、事前の分析と準備も優れていた結果だと思います。
あえて高く飛ばなかったラインアウト
後半9分にラインアウトモールからトライを奪う 【写真:ロイター/アフロ】
斎藤選手は十分にキャリアも積んでいるので問題ないと思っていました。テンポの速い攻撃をリードするのが得意ですが、今日は自分で持ち出す攻撃が効いていましたし、持ち味のパスも良かったと思います。
――後半9分にモールから姫野和樹がトライを奪ったシーンでは、ラインアウトから高く飛ばずに早く動かすモールでした。
ここもサモアがピンチのラインアウトでは競ってこないと分析していたのでしょう。相手が競ってこなければ、難しい高いボールを投げる必要はありません。
また、ラインアウトで高く飛ぶと、着地のタイミングに合わせやすいので守る側としてはやりやすいのですが、日本は低めに飛んで早く着地することでモールを成功させました。
スクラムからの攻撃と同じように、この場面でも日本はサモアの傾向を読み切ってしっかりと遂行しました。ここで22対8と点差を広げられたのは大きかったですね。