優秀な指標が飛躍に結びついてエースへと成長。早川隆久の“進化”にデータで迫る

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東北楽天ゴールデンイーグルス・早川隆久投手 【写真:球団提供】

2024年は自身初の開幕投手を務め、2桁勝利を達成する飛躍のシーズンに

 2024年に自身初の開幕投手を務め、キャリア初の2桁勝利となる11勝を記録した東北楽天の早川隆久投手。昨年までエースとして活躍した則本昂大投手がクローザーに転向した穴を埋め、藤井聖投手とともに球団史上初めて左腕として2桁勝利を挙げた投手となった。

 今回は、早川投手の今季の月別成績に加えて、セイバーメトリクスで用いられる各種の指標において残した成績を紹介。杜の都のエースとなった左腕が持つ投手としての高い能力を、実際のデータをもとにひも解いていきたい。

「奪三振が多く、与四球が少ない」という、理想的な傾向

 早川投手は今季自身初の開幕投手を任されたものの、4月の月間防御率は5.60と苦しみ、二軍での再調整も経験。しかし、5月に一軍へ復帰して以降は安定した投球を続け、チームの交流戦優勝にも貢献した。自身初めて規定投球回に到達し、同じく自身初の2桁勝利となる11勝をマーク。防御率も2.54と自己最高の数字を残し、チームのエースへと成長を果たしている。

 早川投手のこれまでの指標は次のとおりだ。

早川隆久投手 年度別指標 【©PLM】

 早川投手が記録している成績のなかでもとりわけ目を引くのが、非常に優秀な与四球率だ。プロ入り後の4年間で3度、与四球率1点台という数字を記録。キャリア通算の与四球率も2.02と1点台に迫っており、四球から自滅するシーンは皆無となっている。

 それに加えて、2021年と2024年にはいずれも奪三振率が8.30を上回るなど、先発投手としては水準以上の奪三振力を備えているのも特徴的だ。与四球が少なく、奪三振が多いという特性は、セイバーメトリクスの観点においてはまさに理想的な傾向と形容できるものだ。

 その結果として、奪三振を与四球で割って求める「K/BB」という指標も、キャリア通算で3.92と、一般的に優秀とされる3.50という基準を優に上回っている。また、過去4年間でK/BBが3.50を下回ったのは1度だけであり、2021年と2024年のK/BBはともに4.20という非常に高い数値を記録。これらの数字にも、投手としての能力の高さが大いに示されている。

被本塁打も含む痛打の多さがネックだったが、今季はその部分も改善

 その一方で、キャリア平均の被打率は.253と、およそ打者4人につき1本の割合でヒットを打たれている計算となる。それに加えて、2022年にリーグ最多の19被本塁打を記録し、2023年は100投球回に満たない中でリーグトップと2本差の13本塁打を被弾。痛打を浴びる機会が多かったことにより、指標面の優秀さが成績に直結しない部分は否めなかった。

 しかし、今季の被打率は.242とキャリアで最も優秀な数字となり、被本塁打も10本とリーグのトップ10圏内から脱している。また、これらの成績の良化が運に左右されやすいと考えられている、「被BABIP」という指標の影響を受けたものではない点もポイントだ。

 被BABIPは本塁打を除くインプレーとなった打球が安打になった割合を表しており、投手自身にコントロールできる要素は少ないとされる。早川投手が記録しているキャリア通算のBABIPは.298と、一般的な基準値の.300と非常に近い。この数字は、早川投手の成績が運による大きな影響を受けておらず、概ね投手自身の実力に基づいていることを示している。

 そして、早川投手が残した直近2年間のBABIPは、2023年の.304に対して2024年が.303とほぼ変化がない。それにもかかわらず、2024年は防御率、被打率、WHIPといった各種の指標においてキャリアベストの数字を残している。先述した被本塁打の減少も含めて、痛打を浴びる割合が減少している点も興味深い要素だ。

 早川投手が2023年に残した与四球率2.51、K/BB2.89という成績は、いずれもキャリアワーストの数字だった。それに対して、2024年は奪三振率8.45、与四球率1.85、K/BB4.57と、いずれもキャリア最高の数値を記録。もともと優れていた指標面でさらなる進化を見せたことが、被打率を含めた投球内容の全体的な良化につながったという側面はありそうだ。

過去3年間は夏場に調子を崩していたことが大きな課題だったが……

 最後に、プロ入り後の4年間で早川投手が記録した月別成績を見ていく。

早川隆久投手 月別成績 【©PLM】

 プロ入りから3年間はいずれも序盤戦で好投しながら夏場以降に調子を崩していたが、2024年は7月の月間防御率が3.62、8月が同1.00と大きく改善。また、2024年は月間防御率が4点以上となったのが5月と10月の2度のみで、10月に関しては1試合のみの登板とサンプル数が少なかったことを考えれば、好不調の波も小さくなっていることが示されている。

 2024年も月間防御率を1点台以下に抑えた月が4度存在したことが示す通り、好調時のピッチングは手が付けられないレベルにある。それに加えて、苦手としてきた夏場を乗り切れるだけの体力と地力がついたことが、安定感の向上と成績の良化につながっている。

課題を克服してエースに成長した左腕は、今後さらなる飛躍を果たせるか

 キャリアを通じて示してきた指標面での優秀さを、今季は勝ち星や防御率といった成績に結び付けることに成功し、見事にチームのエースへと飛躍を遂げた早川投手。26歳という年齢を考えても伸びしろは十二分に残されているだけに、今後は自身初のタイトル獲得を含めた、さらなる飛躍が期待されるところだ。

 左の先発投手が2桁勝利を挙げられないという東北楽天のジンクスに終止符を打ち、ポテンシャルの高さをあらためて証明した若き左腕。抜群の制球力と高い奪三振力を両立したハイレベルなピッチングには、これからより一層の注目が集まってくることだろう。
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