角田は残留か移籍か 2024年レッドブルのシートを占う

柴田久仁夫(auto sport)

角田の今季ベストリザルトは10位が3回で、ドライバーズランキングは17位。イタリアGPでリタイアを喫したが、それ以外のレースはすべて完走している。昨年の同じ時期までに4度リタイアがあったことを考えれば、角田は確実に成長を遂げているといえる 【Red Bull Content Pool】

 今季、ペレスのパフォーマンスがやや精彩を欠いているため、来季レッドブルに空席が出るのでは……といった憶測が流れている。すべてはペレスの動向次第だが、場合によっては角田の昇格移籍の可能性も!? レッドブルを中心とした2024年のシート争いにフォーカスしていこう。
 レッドブルの来季2024年のドライバーラインナップは、普通に考えれば今季と同じ顔ぶれになるはずだ。マックス・フェルスタッペンは2028年末まで、セルジオ・ペレスも来年いっぱいの契約を結んでいるからだ。しかしF1界で契約不履行が珍しくないのは、皆さんご存じのとおり。

 今季全勝記録を更新し続け、死角なしに見えるレッドブルだが、唯一のウイークポイントが、ペレスの不安定なパフォーマンスであろう。
 シーズン序盤に2勝を挙げたのも束の間、得意なはずのモナコGP予選で大ミスを犯して以降、深刻なスランプに陥った。そこから5レース、予選では一度もQ3に進めず、表彰台にも一度上がっただけだった。
 それでも7月のハンガリーGP以降は4戦中3回の表彰台を獲得し、立ち直りつつあるように見える。とはいえ雨のオランダでは2位走行中の終盤にスピンを喫するなどして4位と、まだまだミスが目立つ。クリスチャン・ホーナー代表らチーム首脳陣は、「このままペレス継続でいいのか」と、不信感を拭えずにいた。
 そこで彼らは、アルファタウリからデビュー以来1ポイントも挙げられていなかったニック・デ・フリースを、わずか10戦で更迭。今季からサードドライバーとして古巣のレッドブルに戻っていたダニエル・リカルドを、電撃的に復帰させた。これはシルバーストンでのテスト走行で、リカルドの復調を確信したホーナー代表の決断だった。リカルドがアルファタウリで角田裕毅をしのぐ結果を出せば、来季はペレスに代わってフェルスタッペンのチームメイトに抜擢する。そんな目論見だったはずだ。

 実際リカルドは復帰初戦のハンガリーで予選、レースともに角田を上回り、レッドブル首脳陣の期待に応える走りを見せた。ところが夏休み明けのオランダGP初日フリー走行でクラッシュ、左手骨折の重傷で長期離脱を余儀なくされてしまった。
 そこでレッドブルのリザーブドライバー、リアム・ローソンが急遽抜擢され、ここまでの2戦で角田を上回る順位で完走を果たしている(角田はペナルティによる順位降格や、マシントラブルに見舞われたわけだが)。
 ローソンは今季スーパーフォーミュラでタイトル争いを繰り広げており、すでに来季F1に昇格する可能性は高かった。今後リカルドの代役としてさらに活躍した場合、アルファタウリからのF1デビューは間違いないと言っていい。

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角田は残留が濃厚か

22年に初めてモナコGPを制したペレス(左)だったが、今年は予選Q1でクラッシュし最後尾スタートとなりノーポイントに終わった。現在ランキングではフェルスタッペン(右)に次ぐ2位だが、ポイント差は145点とかなり開きがある 【Red Bull Content Pool】

 ではフェルスタッペン、およびローソンのチームメイトは、誰になるのか。日本のファンにとっては角田裕毅、そしてF2で上位争いを繰り広げる岩佐歩夢の動向も気になるところだ。
 角田は依然として、アルファタウリとの契約延長が発表されていない。そのため一時は、レッドブルとの契約を解消し、低迷するランス・ストロールに代わって、ホンダが2026年から組むアストンマーティンに前倒しで移籍するのではという噂も流れた。しかし最近フランツ・トスト代表が、「角田は来季も残留する」旨の発言をしている。それが事実なら、来季のアルファタウリは角田&ローソンのコンビということになる。 

 ではレッドブルは? これについては、以下のふたつのシナリオが考えられる。

1)ペレスが充分に立ち直って、フェルスタッペンに次ぐ結果を出し続ける→今季のラインナップを継続
2)ペレスが期待したパフォーマンスを発揮できず→ペレスの代わりに、リカルドを昇格させる

 1)の場合、リカルドは今季前半同様サードドライバーを続けることになる。一方で、トスト代表の言葉とは裏腹に、アルファタウリは角田を降格させ、リカルド/ローソンというコンビニなるのではという見方も根強くある。ホンダとの協力関係があと2年となったこと、ベテラン リカルドと組ませることで、期待の若手ローソンの才能をさらに開花させたいことなどが理由だ。
 最後に、ローソンが想定より早くF1デビューを果たしたことは、角田と同じレッドブル育成ドライバーの岩佐歩夢の将来にも少なからぬ影響を与えることになるだろう。現在ランキング3位の岩佐選手は、F1昇格に必要なスーパーライセンスの取得はほぼ間違いない。しかしレッドブルグループのF1シートは4つしかない。もともと来季のF1デビューは難しいと見られていたが、ローソンの登場で残念ながら昇格の可能性はほぼなくなった。ローソンの後を追って、まずはスーパーフォーミュラで結果を出すことが、最も現実的な選択肢と言えるかもしれない。

ローソンは、スーパーフォーミュラ初参戦ながらチャンピオン争いを繰り広げており、F1でもレギュラー陣に引けをとらない速さをみせる。巡ってきたチャンスをモノにしたのはさすがと言うべき 【Red Bull Content Pool】

レッドブル・ジュニアチームに加入して3年目で、ランキング3位につける岩佐。4つしかないシートを勝ち取るためには、結果を出し続けるしかない 【Red Bull Content Pool】

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