3冠王者シティに挑む横浜FMに勝機は? ブラジル人トリオの速さが通用すれば──

西部謙司
アプリ限定

J1王者の横浜FMが、3冠王者マンチェスター・Cとプレシーズンマッチを戦う。横浜FMのキャプテン喜田(右)も1-3で敗れた4年前の雪辱に燃えているはずだ 【Photo by Giuseppe Maffia/NurPhoto via Getty Images / Photo by Masashi Hara/Getty Images】

 7月23日に開催される「明治安田Jリーグワールドチャレンジ2023」。今年は昨シーズンのJ1リーグを制した横浜F・マリノスが、イングランドの強豪マンチェスター・シティを国立競技場で迎え撃つ。2022-23シーズンにプレミアリーグ、FAカップに続いて悲願のチャンピオンズリーグ制覇も果たした3冠王者シティは、いまや“フットボール史上最強”との呼び声もあるスーパーチームだが、はたして横浜FMに勝機はあるのか。スポーツライターの西部謙司氏が、戦術的視点からその可能性を探る。

※リンク先は外部サイトの場合があります

ポジショナルプレーの極致とも言える練達

 昨シーズンに3冠(プレミアリーグ、FAカップ、チャンピオンズリーグ)を達成したマンチェスター・シティは、ペップ・グアルディオラ監督の総決算とも言えるチームだった。

 可変システムを駆使してのビルドアップ、強力なストライカーを軸にしたフィニッシュワーク。この2つはグアルディオラ監督のチームに共通した特徴で、最初に指揮したバルセロナから基本的に変わっていない。昨シーズンのシティではCBのジョン・ストーンズのボランチ化による「偽CB」のビルドアップ、アーリング・ハーランドの個の能力を引き出すフィニッシュワークがあった。

 念願のCL制覇を成し遂げてピークに上り詰めたシティだが、すでに新たな変化が始まっている。基本方針は同じなのに、つねに何かが変化していく。これもグアルディオラ監督下のチームの性格と言える。

 この夏はチームの心臓部を担っていたイルカイ・ギュンドアンがバルサへ移籍し、同じくベルナルド・シウバの去就も注目されている。さらに、大黒柱ケビン・デ・ブライネも昨シーズンのCL決勝で負った怪我から回復していない。そうした中で迎えるプレシーズンは、新加入のマテオ・コバチッチ(インテル・ミラノから移籍)らのテストが当面の作業になりそうだ。

 ビルドアップに関しては、ほぼ毎年新たなギミック(からくり、仕掛け)がある。ただ、それはシティのパスワークの一端でしかない。形だけでボールを運んでいるわけではないのだ。

 CBストーンズがポジションを上げて、3-2-2-3の形でパスをつないでいくベースはあるが、そこからさらにポジションを変えていく。決まった形というより不規則な動き方も多く、相手にとっては守備の的を絞れない。GKエデルソンも組み立てに参加して素早くボールを動かし、流動的に立ち位置を変えながら、次に誰がフリーになるかを全員が把握している。ポジショナルプレーの極致とも言える練達だ。
  • 前へ
  • 1
  • 2
  • 次へ

1/2ページ

著者プロフィール

1962年9月27日、東京都出身。サッカー専門誌記者を経て2002年よりフリーランス。近著は『フットボール代表 プレースタイル図鑑』(カンゼン) 『Jリーグ新戦術レポート2022』(ELGOLAZO BOOKS)。タグマにてWEBマガジン『犬の生活SUPER』を展開中

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント