全身からリーダーシップがにじみ出ている。この春、県大会準優勝と躍進したチームで捕手、三番打者、そして主将を務めた。打撃も守りもずば抜けているわけではないが、チームを落ち着かせる「何か」を持っている。春は、守っては3人の2年生投手を巧みにリードし、打っては東海大相模を下した準決勝で先制の二塁打。横浜、東海大相模を連破した後にはチームの慢心を敏感に察知し、「本番は夏なのに、ここで満足してどうする」と、緩んだ空気を締め直した。頼もしい扇の要だ。

　今春のセンバツ出場を逃したことが、かえってこの左腕には良かったのかもしれない。多彩な変化球を交えながら打者を打ち取る高度な投球術はすでに証明済みだが、1年生から公式戦で投げ続けていたため、じっくり体力作りをする時間がなかった。昨秋も甲子園帰りで、コンディションを戻すことで精いっぱいだった。遊撃手の緒方とともに高校日本代表候補に選ばれたが、「未完成」との自覚は本人にもある。この夏、最速144キロだったストレートの球速がどこまで上がっているか、見ものである。

　昨秋は控えだった外野手が、ひと冬を越えて化けた。身長184センチ、体重82キロの恵まれた体格は、冬の筋力トレーニングによって8キロほど増量し、出来上がったものだ。見た目にも下半身がどっしりと安定した印象を受ける。今春のセンバツで三番打者としてレギュラーをつかみ取ると、春季県大会では相洋との決勝で2本塁打を含む3安打6打点と爆発。「甘く入った変化球を逃さずにいけた」と、打席での冷静さも光った。レギュラーになってからの日が浅く、伸びしろも十分な右の長距離砲。激しさを増すチーム内競争が、大器をさらに成長させそうだ。

　東海大相模の伝統になった「アグレッシブ・ベースボール」を象徴する、超攻撃的な一番打者だ。右足を高く上げてタイミングを取る豪快なフォームで、初球から積極的にスイングを仕掛ける。失投を確実にとらえるから、バッテリーは1球たりとも甘い球が許されない。この春は横浜創学館との準々決勝で右中間本塁打を放つなど、中軸を打てる長打力もある。加えて、俊足、強肩を生かした中堅手としての守備も全国トップレベル。広い甲子園で見たい選手だ。

　鮮烈な全国デビューから2年が経った。2021年夏の甲子園、1年生ながら広島新庄との1回戦で逆転サヨナラ3ラン。見る者の心をつかむのに、十分すぎる一発だった。まだ勢いだけでプレーしていた当時から、着実に成長。責任感とリーダーシップが備わり、主将として最後の夏に挑む。身長167センチと小柄ながらパンチ力のある打撃、フットワークを生かした遊撃の守備範囲の広さは世代屈指で、高校日本代表候補にも名を連ねる。なによりも注目したいのは、「強い横浜」の復活をみずからに宿命づけ、2年半を駆け抜けてきたその想いの強さだ。

（企画・編集／YOJI-GEN）