全国優勝9度を誇る帝京高サッカー部の今 「異色の指揮官」が描く復権のロードマップ
新たな歴史を作るべく、今年から中高6ヵ年の育成にチャレンジ
日比監督が中等部の監督と部長を兼任。文武両道で新たな選手の育成に取り組む 【松尾祐希】
さらにこのタイミングで新たな施策を取り入れる。練習時間を縮め、短期集中型のトレーニングで選手の強化を図ったのだ。90分から120分に抑え、選手たちのモチベーションを引き出す。その効果はてきめんだった。
「(練習時間を区切ったことで)選手たちが物足りなさを感じるようになった。自主練習を自分たちからやるようになったし、考える力がついてきたので良い方向に行っている。長い時間拘束してやるよりも、アイデアを持ってやれるようになった」(日比監督)
チームの成長速度はスピードアップ。インターハイや選手権では都予選の決勝まで度々進み、2021年にはインターハイに10大会ぶりに出場を果たした。結果が出たことで中学生のスカウティングも順調に進む。Jリーグの下部組織から入部を希望する選手が増加。昨年の3年生ではFC東京U-15むさし出身の左SB入江羚介(現順天堂大)がU-18日本代表に選出されるなど、スカティングと育成のサイクルが噛み合うようになった。
そうした取り組みに加え、今年から中等部の強化にも乗り出し、中高一貫で選手の育成をスタートさせている。日比監督が中等部の監督と部長を兼任し、高等部のスタッフがバックアップする体制を整えた。「高校が徐々に階段を登り始めている。高校と同じスタッフが関わり、子供たちにサッカーの楽しさを通じて、日常生活を含めて文武両道を貫ける環境を整えられると信じている」(日比監督)。本格的にスタートするのは来年からだが、新たな選手の育成と発掘のサイクルが生まれれば、名門復活の足掛かりになるはずだ。
トライを経て、帝京がどのように変わっていくのか。「選手権に出場して初めて復活と言える」。何度も選手権に対する想いを口にしてきただけに、未だ果たせていない冬の檜舞台への想いは強い。まずは昨年果たせなかった夏の全国制覇を叶えるべく、6月初旬からスタートするインターハイ予選に全力を注ぐ。