報徳学園の堅守を支える守りの要 苦労人・竹内颯平がセンバツで得た自信と、夏への想い

沢井史

センバツで力は発揮できたが「まだまだやることはある」

最後の夏に向けて、持ち味である守備力をさらに磨いていく 【写真提供:沢井史】

 竹内はこのセンバツの全5試合でヒットを放った(21打数7安打)。俊足の岩本聖冬生(3年)や堀柊那、長打力のある石野蓮授(3年)ら多彩な打者がそろう中、派手さはなくても、内野安打や犠打などで打線の流れを自らのバットでしっかりつないだ。5試合中3試合で1打席目からヒットを放ち、序盤から攻撃に勢いをもたらした。

 報徳は初戦から「関東で能力が一番高い」と大会前から評判が高かった健大高崎に7-2と快勝すると、3回戦では昨秋の東海大会王者・東邦と対戦。準々決勝で対戦した仙台育英も昨夏の甲子園覇者である。強豪2校を延長10回タイブレークの激戦の末に連破し、準優勝では昨秋の関西大会で敗れた大阪桐蔭にリベンジ。決勝では山梨学院の前に涙を飲んだが、いずれも昨秋の地区大会王者がひしめく、いばらの道のブロックを戦い抜いた。

 厳しい戦いが続いたこの春を、竹内はどう感じたのか。

「5試合も(甲子園で)やれて、楽しかったです。初戦の健大高崎戦から楽しめて、(3回戦の)東邦戦はさらに楽しくなりました。緊張したり固くなったりするかなと思ったんですけれど、試合をするごとに和らいだし、最後まで固くなりませんでした。

 東邦戦、仙台育英戦は連戦でしたが、試合をしている時は疲れを感じませんでした。東邦戦が終わって宿舎に戻ったら少ししんどさはありましたが、朝起きたら今日も全然いける、みたいな感じでした(笑)。(初戦の健大高崎戦で、初の守備機会となった2回の遊ゴロを)いい感じでさばけたのが良かったです。チームで“1へのこだわり”というスローガンがあるんですが、改めて1が大事だと思いました」。
 
 ただ、夏に向けてはさらなるスタミナ強化を痛感した。

「終わってみたら、春でもだいぶ疲れたので、夏はもっと疲れると思います。それにこの春はいつも通りのプレーができた、と思ってもまだまだな部分は多いです」

 竹内がこだわり続けるのは守備だ。憧れは西武の源田壮亮。堅実なフィールディングだけではない。源田と同じようにマウンドにいるピッチャーのケアや、周囲への声掛けなど、チームメートへの気配りを含めて細やかに動く竹内の姿が印象的だった。

「もちろん、打撃もどちらもレベルアップさせたいんですが、まず守備を磨いた上で、自信をつけていけばバッティングも対応できるようになると思っているんです。秋より体重は増えてもまだパワーが足りないので、力強さをつけて“守備率100%”を目指したいです」

 センバツの決勝後、宿舎に戻ると、夕食後のミーティングが終わってすぐに素振りを始めた。夏へ向けて気持ちは切らさない。“勝って驕らず負けて腐らず”の気持ちで、副キャプテンとしてもチームを献身的に支え、夏を見つめる。

 昨秋もこの春も、ファイナルの舞台に立ちながら最後に悔しさを味わった。激戦区・兵庫で待つさらなる厳しい戦いへ向け、これまで以上に地道な鍛錬を積み重ねていく。

 夏こそは最後まで笑顔で―。新たな目標も胸に、あの舞台への挑戦が始まった。

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著者プロフィール

大阪市在住。『報知高校野球』をはじめ『ホームラン』『ベースボールマガジン』などに寄稿。西日本、北信越を中心に取材活動を続けている。

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