#J30ベストアウォーズ

“ツネ様”宮本恒靖が選ぶ!Jリーグのベスト3シーン 伝説オーバーヘッドは「人生初」だった

北健一郎

2005年の優勝は、正夢だった

優勝を決めた川崎フロンターレ戦ではヘディング弾を決めた 【写真は共同】

――ありがとうございます。それでは1位は?

 優勝を決めた、2005年の川崎フロンターレ戦です。自分もゴールしましたし、弱かった頃のガンバのことや、いろいろな先輩の姿が浮かびました。今藤(幸治)さんのように、亡くなられた人のことも思い返すと涙しかなかったです。

――優勝して、宮本さんが地面に突っ伏している光景を、僕も鮮明に覚えています。

 最終節、同時刻に長居スタジアムでも試合をしていて、FC東京にいた今ちゃん(今野泰幸)が、セレッソ大阪相手にゴールしているんですよね。あれで同点になったおかげで、僕たちの優勝が決まるという。前泊が川崎のホテルだったのですが、その日の朝、自分が嬉しくて泣いている夢でパッと目が覚めたんです。起きた瞬間は、「あれ優勝? なんや夢か」という感じだったのですが、本当に優勝することができました。

――すでに貴重なお話ばかりですが、現役時代の「今だから言えるここだけの話」を教えてください。

 引退した2011年は、ベンチメンバーには全試合入っていましたが、スタメンは4、5回ぐらいしかありませんでした。3年契約は終わるタイミング、一応来年の話もある。一方でFIFAマスターの話もあって、どうしようかなと悩んでいました。そしたら、最終節前の練習中にずっとスタメンだったセンターバックの選手がギックリ腰になってしまったんです。その時に、「あ、次の試合に出るな。それを“引退試合”にしよう」と。

 アウェイのベガルタ仙台戦だったのですが、家族だけに伝えて試合にも来てもらいました。それ以外には誰にも言わず、監督にも終わってから引退の意思を伝えました。自分で引き際を決めて覚悟を持って試合に臨めたし、土砂降りで、0-2で負けましたけれど、すごく大事な試合になりました。

世界のスター選手が、Jリーグで教えてくれたこと

2022年3月より日本サッカー協会専務理事を務める 【スポーツナビ】

――これまでのお話で2つのゴールが挙がっていますが、改めて生涯ベストゴールを挙げるとすると?

 Jリーグで8ゴールと、代表でも3ゴールくらいだと思うので……。個人でベストと言われるとオーバーヘッドですが、気持ち的に嬉しかったのは、優勝した川崎戦ですかね。1-1からの勝ち越しゴールだったので、かなり喜びはありましたし、やっぱりそっちかな。

――その一方で、ディフェンダーのDF視点で対応しづらかったFWの選手は誰でしたか?

 「これは手がつけられないな」と思ったのは、2002年にジュビロ磐田が優勝した年の高原(直泰)です。夏くらいからすごく調子を上げて、その年はMVPと得点王になったんじゃないかな。体もキレていて強さも速さもあったし、あのシーズンは全てがそろっていたと思います。

――FWには世界的なビッグネームも多く、そういう選手とも若くして対峙していたと思います。

 チームメイトでいうと、プロタソフやエムボマがいましたね。あとはオールスターの試合で、一緒にやって感動したのはピクシー(ストイコビッチ)でした。同じチームだったので、前日にみんなで全体練習をするのですが、その間もずっとベンチに座っていて、「俺には練習は必要ないんだ」と。でも、やっぱり翌日の試合になったら別格で、繊細なボールタッチもそうだし、裏に走るところにぴったりボールを入れていて、一流のプロってこういう選手なんだと感じました。

――最後に、今年でリーグは30周年を迎えますが、宮本さんにとってのJリーグとは?

 30年のうち、半分にあたる15年くらいプレーして、成長させてもらった舞台です。2002年のあとには、「サッカーっていいよね」というところに多少なりとも貢献できたのかなと思っています。その後は監督という立場でも携わり、今はまた違う立場にいます。Jリーグがもっと盛り上がるように、日本サッカーが発展するように、僕自身も頑張っていきたいなと思います。

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著者プロフィール

1982年7月6日生まれ。北海道旭川市出身。日本ジャーナリスト専門学校卒業後、放送作家事務所を経てフリーライターに。2005年から2009年まで『ストライカーDX』編集部に在籍し、2009年3月より独立。現在はサッカー、フットサルを中心に活動中。主な著書に「なぜボランチはムダなパスを出すのか?」「サッカーはミスが9割」(ガイドワークス)などがある。

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