前回以来のセンバツVを目指す東邦の直前レポート カギはエース宮國ら投手陣のデキか

尾関雄一朗
 19日にセンバツ甲子園初戦を迎える東邦(愛知)。優勝した4年前以来となる“春”だ。今年も投打にタレントを擁し、見どころが多いチームに仕上がっている。このうち、特にカギとなる存在がエースの宮國凌空(3年)だ。また二番手、三番手の投手が実力を上げ、宮國を救う態勢も整いつつある。先週末の練習試合をもとに、投手陣の様子をレポートする。

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チームは投打に特徴十分

チームの屋台骨を支える宮國。ストレートの最速は149キロだ 【尾関雄一朗】

 東邦は今大会で3勝すれば、センバツでの歴代勝利数で単独トップに立つ(現在1位は中京大中京の58勝)。もしも優勝となれば、昭和、平成、令和の3元号での戴冠達成となる。数々のドラマで甲子園を沸かせてきた名門校ゆえ、期待は膨らんでいる。

 今年のチームも高水準で投打のバランスがとれ、見どころは多い。エース・宮國凌空ら好投手を複数擁し、打者陣もタレント豊富だ。主将で四番の石川瑛貴(3年)は、プロ入りした昂弥(中日)を兄にもち、背格好がそっくり。先頭打者の中村騎士(3年)は打撃の対応力が高く、前田悠伍(大阪桐蔭)や東松快征(享栄)といった全国屈指の投手から公式戦で本塁打を放った。強肩好打の上田耕晟(3年)は、プロでコーチを務める佳範氏(中日)を父にもつ。眞邉麗生(3年)は確実性が高く勝負強い。

調子の上がり切らないエース宮國が粘れるか

練習試合での登板を終え、宮國は固い表情でベンチに戻る 【尾関雄一朗】

 チームの命運を握るのは、なんといってもエースの宮國だ。2年春に最速149キロをマークした正統派タイプの右腕で、夏の愛知大会決勝では下級生ながら先発マウンドを任された。昨秋は県大会本戦から神宮大会まで、9試合全てに先発している。プロ球団スカウト陣の注目度も高い。筆者が訪れた3月11日の練習試合では、ヤクルト、中日、DeNAなど7球団がネット裏でビデオを構えた。

 ただ宮國については、もう一つ状態が上がっていないようにみえる。一部スポーツ紙でも報じられたが、この日は本来のデキではなかった。高田(三重)打線に対し、初回こそ3者三振に切ってとったが、2回裏には下位打線に4連打を浴びるなど5回10被安打4失点。調整段階とはいえ、本番を約1週間後に控える中で物足りなさは残った。

 試合後に本人に話を聞いても、トーンは上がらない。「センバツまで限られた時間しかなく、ここから大きく良くなることはないと思います。どうゲームをつくっていくかを考えたい。リズムよくゴロを打たせてアウトにとるなど、チームを勝たせられるようにしたいです」と話すにとどめた。

 しかし宮國には、持ちこたえる術と経験がある。昨年秋も右肩痛の影響で本調子には程遠く、球速は140キロ台を割りながら、耐え切って東海王座になった。東海大会決勝後には「大会に入る前から『球速を意識せず、勝ちにこだわるピッチングをしよう』と決めていました。変化球を軸に、試合では相手打者の反応を見ながら投げられました」と明かした。

 宮國はこのセンバツでどんなマウンドさばきを見せるか。伝統校の大黒柱として、今できうる限りを表現するつもりだ。

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著者プロフィール

1984年生まれ、岐阜県出身。名古屋大を卒業後、新聞社記者を経て現在は東海地区の高校、大学、社会人野球をくまなく取材するスポーツライター。年間170試合ほどを球場で観戦・取材し、各種アマチュア野球雑誌や中日新聞ウェブサイトなどで記事を発表している。「隠し玉」的存在のドラフト候補の発掘も得意で、プロ球団スカウトとも交流が深い。

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