他方、投手陣の第二、第三の矢がパフォーマンスを上げている点は心強い。

　身長189センチの山北一颯（3年）は、元プロの茂利氏（元中日ほか）を父にもつ右投手だ。最速は145キロ。得がたい角度や柔らかい腕の振りなど、将来性にプロ球団スカウト陣も惚れ込んでいる。本人は「将来性に期待してもらえるのは嬉しいですが、今はチームの勝利のために力を尽くすのみです」と眼前の試合に集中している。

　父との比較では「利き腕が左と右で違うし、現役時代の記憶もないので……」と言いつつも「母から聞いた話だと、父は調子が悪くても顔に出さなかったそうです。自分は以前、感情が出やすかったので、切り替えを意識するようになりました」と、参考にした部分を語った。

　この冬の上昇度は顕著だ。「ウエイトトレーニングでスクワットを増やすなどして、下半身に力がつき、平均球速が上がってきました。あとは牽制も身につけました」と表情も明るい。視察したスカウト陣からは制球力アップを認める声もあり、本人に伝えると「そうですね、指にかかった球を意図したところに投げられる割合が増しています」と確信を深めた。

　救援役の右腕・岡本昇磨（3年）も頼もしい。宮國や山北の登板時は右翼手として好打好守を見せつつ、マウンドに上がると球持ちのよいフォームから最速145キロのストレートを投げる。スライダーは難攻不落の球筋だ。

「脱力の感覚を大事にして、リリースで最大限の力を出せるように意識しています。どんな場面でも強気で、チームに流れをもってきたい。ランナーを出してからの間合いなど、ピッチングの総合力が自分の持ち味だと思っています」（岡本）

　山北は、ライバルとの切磋琢磨についてこう話す。

「宮國は体のバネや身体能力があります。パパーンと地面を蹴って踏み込む力がある。入学したときは同じぐらいの球速でしたが、気づいたら宮國は149キロを出していて、遠い存在になっていました（笑）。めちゃくちゃしっかり練習していて、人が見ていないところでもやっているようです。でも自分もようやく、再び競争できる位置まで上がってこられたかなと思います」

　一方の岡本も「宮國はどんなときも平常心で落ち着いています。だから失点が少ない。ただ自分も負けたくないです。いいところを見習いながら、宮國を超えたい気持ちはあります」。山北によると、岡本もまじめな性格で、投球で出た課題も翌日にはクリアしているという。

　近年の東邦の野球部キャッチフレーズは「TOHO　PRIDE」。東邦の誇りと野球への意志を胸に、互いに高め合ってセンバツへ挑む。