キスアンドクライで行われた優勝者インタビューで、三浦は自分の滑走直前に好演技をみせたメッシングに感謝している。

「メッシング選手が前に素晴らしい演技をしてくださって、そのおかげで僕も流れをもらって演技することができて。そこはすごくキーガン選手に感謝ですし、自分もこういう演技ができたこと、自分自身を誇りに思いたいです」

　他の選手がいい滑りをすれば、きっと自分もその流れに乗っていける。そう素直に信じ、実際にその通りに滑り切れるところに三浦の凄さがある。

　フリー後の記者会見でも中央に座った三浦は、こんな“爆弾発言”をしていた。

「今日、衣装を忘れてきてしまって」

　演技中にジャンプの重複をぎりぎりで回避する前にも、もう一つ危機があったというのだ。

「たくさんの方の力で衣装が届いて、そこからまずパワーをもらって。たくさんの方のおかげで、お客さんもそうですし、前に滑った（佐藤）駿、キーガン選手、もう全員の力が集まった最終形態がさっきの演技だったかなというふうに思います」

　そして、三浦は付け加えた。

「パワー爆発、みたいな感じです」

　三浦の魅力は、爆速で入って猛烈な飛距離を出す豪快なジャンプだけではない。とにかく肯定的に状況をとらえ、皆を巻き込んで前に進んでいく、そのキャラクターは唯一無二だ。

　海外メディアから、フリーのプログラム『美女と野獣』にちなみ「あなたは美女なのか、野獣なのか、どちらなのでしょうか」と尋ねられた三浦は、即座に返答している。

「今日はもう完全に、ビューティは最後のコレオ（シークエンス）のところだけ僕の横に現れていたぐらいで。自分はビューティには、多分なれない。ちょっとビューティ成分はないので、自分はビーストの方が似合っているかなって感じがします」

　まだ粗削りだが底知れない能力を持つ三浦には、この初タイトルをきっかけにさらに上昇していく予感が漂う。勝利の舞となったコレオシークエンスを滑る三浦の隣には、確かにちらっと美女の姿が見えたような気もする。