【工藤公康】チームを勝利に導くトラックマンの有効活用 監督時代に着目した「継投の根拠」となるデータとは?
試合の勝敗を分ける投手交代。工藤氏はどんなデータを根拠に継投を決断していたのだろうか 【写真は共同】
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「トラックマン」や「ラプソード」でわかること
今行われている春季キャンプでも、各球団はブルペンにそのような機器を持ち込んでおり、身体に反射マーカーをつけて投手や打者の動作を解析するような部門を設立しているチームもあります。選手のパフォーマンス向上や障害の予防など、さまざまな用途で機器を活用しています。
「トラックマン」や「ラプソード」を使用することで、投球したボールの回転数や変化量などのデータを、レーダーやカメラの映像をもとに得ることができます。各球場に設置されているトラックマンからは、ボールをリリースした瞬間の位置情報も得ることができました。これにより、リリース位置の高さ(地面からの高さ)とリリース時の長さ(プレートの中心からボールを離した位置までの距離)が数値化され、分かるようになったのです。
「リリースポイントの位置」のデータをどう活かすのか
トラックマンで得られる「リリースポイントの位置」でどんなことがわかるのだろうか 【写真は共同】
ひとつ例を挙げます。投手の調子が良いとき、特に肩周りの状態も問題なく、自分のパフォーマンスが発揮できているときは、試合の中でこのリリース位置の高さにあまり変化は起こりません。逆に調子が悪いときは、イニングが進むにつれて、リリース位置が徐々に低くなってきます。
一方でリリース位置の長さというのは、状態があまりよくないときには、イニングが進むにつれて長くなってくる選手が多いです。一見、プレートからの距離が長くなるということは、「打者により近いところでリリースができているから良いのではないか?」と思うかもしれません。
しかし、このような変化が起きているときは、ほとんどの場合で下半身が踏ん張れなくなり、それでも前でボールを離そうと上半身が折れてしまうというメカニックの崩れが起きています。実際にボールのパフォーマンスとの関連性も調べたところ、低下しているケースが多かったのも事実です(分析したところ、リリースポイントが長くなるにつれてストレートの、いわゆるホップ成分である縦変化量も減少してしまう傾向にあった)。