連載:元WBC戦士は語る―侍ジャパン優勝への提言―

福留孝介「考えるよりも、感覚を大切に」 侍ジャパンの後輩たちに伝えたいWBCの心構え

小西亮(Full-Count)

早めの調整…2月1日には「全力でできる状態に」

WBCに向けて早めの調整を心掛ける選手たちに、福留孝介が伝えたいこととは? 【写真は共同】

 3大会ぶりの悲願を目指す栗山ジャパン。プロ野球界は2月1日にキャンプインを迎えたばかりだが、代表メンバーたちはすでに状態を上げている。17日からは宮崎で11日間の強化合宿がスタート。強化試合などを経て、3月9日に中国との初戦で東京ドームのグラウンドに立つ。

 3月上旬という時期は、例年ならオープン戦で状態を上げていくころ。「前倒しの調整を初めて経験する選手は、難しい面もあると思います。どれだけ早く自分の実戦感覚を取り戻せるかが重要になってきます」。そう言う福留氏は、例年より2カ月以上も早く仕上げるイメージを持っていたといい「キャンプインのころには、ほぼすべてのことが全力でできる状態に持っていくように準備はしていました」と語る。

 使用するボールの違いも含めた調整の難しさを経て、対峙するのは世界の強者たち。超一線級のスターが居並ぶ米国をはじめ、各国ではメジャーリーガーの参戦が見込まれている。多くの侍戦士にとっては初対戦となる相手ばかりだが、今や映像やデータが当たり前になった時代。福留氏は、過去との違いを踏まえた上でこう指摘する。

「今は相手がこういう選手なんだと知るのは、そこまで困らないんじゃないかなと。ただ、裏を返せば相手もこちらをよく知っている」

論より証拠「探っている時間はもったいない」

 事前の予習に困ることはないかもしれない。だが、情報頼りになりすぎては足元をすくわれる。「相手がどんな感じなんだろうと探っている時間はもったいない。損する気がする。考えるよりも、自分が打席で感じることを目一杯やっていくしかない」。経験者としての言葉は重い。

 球速ひとつをとっても、額面通りには決していかない。手元でより速く感じる球もあれば、その逆もある。変化球の曲がり幅も、映像と打席とではイメージが大きく異なることも。そもそも、対戦相手の調子の良し悪しも大きく関わってくる。もちろん準備をするに越したことはないが、見極めようとしているうちに短期決戦はあっという間に終わってしまう。後輩たちへ、ひとつの心構えを伝える。

「(相手を)見ている段階の時間が長ければ長いほど、後手に回る。僕は、基本的に自分が感じたものを信用していたし、その感覚を大切にしていました。絶対に見ていかない。守りに入るんじゃなくて、どんどんやっていって、その中で修正していくほうがいい」

 誰かに言われなくても、選ばれた30人は十分すぎるほど重責を感じ、万全の準備を整えて日の丸のユニホームをまとう。福留氏は、らしいエールを送る。

「周りからは絶対優勝だとか、あーだこーだとプレッシャーしか与えられないでしょうけど、まずは楽しんでほしい。楽しめない状況を、はねのける楽しさを見せてほしい」。決勝は日本時間3月22日。マイアミのグラウンドで喜ぶ侍戦士たちの姿を、自らの栄光の記憶と重ねたい。

(企画構成:スリーライト)

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著者プロフィール

1984年、福岡県出身。法大卒業後、中日新聞・中日スポーツでは、主に中日ドラゴンズやアマチュア野球などを担当。その後、LINE NEWSで編集者を務め、独自記事も制作。現在はFull-Count編集部に所属。同メディアはMLBやNPBから侍ジャパン、アマ野球、少年野球、女子野球まで幅広く野球の魅力を伝える野球専門のニュース&コラムサイト

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