アジアツアーレポート【2】日越外交関係樹立50周年記念事業 特別親善試合

川崎フロンターレ
チーム・協会

【© KAWASAKI FRONTALE】

シーズン終了後から戦った「2022 Jリーグ アジアチャレンジinタイ」を終え、次なる舞台はベトナムへ。11月20日(日)に日越外交関係樹立50周年記念事業 特別親善試合 ベカメックス・ビンズンFC との試合に臨んだ。

フロンターレは、2013年にビンズン省にて、ベカメックス・ビンズンFCと親善試合を行ったことからベトナムでのサッカー交流活動を開始。2014年以降も両クラブは、日越両国の子ども向けのサッカー教室や交流試合を開催するなど交流を深めていった。その後も、U-13チームのベトナム遠征や指導者派遣や、日越45周年の2018年から始まったU-13国際親善大会、2021年にはJリーグクラブとして初となるベトナムサッカースクールをビンズン省に開校。サッカーを通じた国際交流を行ってきたのがフロンターレとベトナムの関係性である。

そんな背景から2023年の日越外交樹立50周年記念事業の一環として開催されるのは特別親善試合だ。この試合に向けて記者会見で鬼木達監督が語る。

「素晴らしい試合をしたいです。ビンズンFCとの日越外交関係樹立50周年の記念試合になりますのでスポーツやサッカーを通して、今後も外交に貢献できたらなという強い想いがあります。皆さんが楽しんでもらえるようなサッカーを展開していければなと思っています」

サッカー通じて日越をつないでいく──。そんな想いも乗せてフロンターレは特別親善試合を戦った。

日越外交関係樹立50周年記念事業 特別親善試合の記者会見に臨んだ左からゴー ヴァン ヴー、ルー ディン トアン監督(べカメックス・ビンズンFC)、鬼木達監督、橘田健人(川崎フロンターレ) 【© KAWASAKI FRONTALE】

ビンズン省の小学校で行われた算数ドリル実践学習でテクニック魅せる橘田健人。子どもたちは目を輝かせていた 【© KAWASAKI FRONTALE】

またピッチ外での活動では、ビンズン省の小学校で川崎市内の小学校で実施されている算数ドリル実践学習を行い、ビンズン省の孤児院も訪問。さらにフロンターレベトナムスクールの子どもたちやベカメックス東急の方々とサッカーでの交流をするなど、選手たちも純粋な子どもたちの笑顔に癒やされていた。また来期からJICAと取り組む健康事業のプログラムも試合会場で実施。ベトナムで課題となっている健康問題を改善すべく取り組みにもトライアルした。

ビンズン省の孤児院に訪問。笑顔で記念撮影 【© KAWASAKI FRONTALE】

フロンターレベトナムスクールの子どもたちやベカメックス東急の方々とサッカーでの交流。選手たちも白熱 【© KAWASAKI FRONTALE】

特別親善試合 ベカメックス・ビンズンFC戦(2○0)

特別親善試合に臨むスタメン11人+ベトナムに駆け付けたふろん太 【© KAWASAKI FRONTALE】

スタメンには来シーズンの加入が内定しJFA特別指定選手としても登録されている桐蔭横浜大学4年の山田新、アカデミー出身の桐蔭横浜大学3年の山内日向汰、フロンターレU-18の高校1年生の八田秀斗、加治佐海といった若い選手たちが名を連ねた。

初めて一緒にプレーする選手たちも多く、立ち上がりはボール保持に苦戦をしたが、徐々に落ち着いて相手を剥がしながらゴール前へ前進させていく。その中で再三チャンスを作り出していたのが山田新。相手DFのマークを外して、一瞬のうちにフリーでボールを呼び込むプレーで決定機を迎えていった。あと一歩のところでゴールネットを揺らすことはできなかったが、オフザボールの動きが一級品であることを証明し続けていた。すると先制点は36分。左サイドでボールを受けた山内日向汰が中央に切り込んで、右足で強烈な一撃を突き刺して1-0。左SBからの攻撃参加、パス配球でリズムをもたらしていた背番号35が結果を残した。

先制点のシーン以外にも輝きを放った山内日向汰 【© KAWASAKI FRONTALE】

後半は橘田、遠野を投入し、より攻撃で圧力を高めて追加点を狙いにいく。細かいパスやコンビネーションでペナルティエリア内に侵入するシーンも前半よりも増加して、ベガメックス・ビンズンFCを押し込んでいった。その中でカウンターからピンチを迎える場面もあったが、集中力を切らすことなく対応。そして追加点が生まれたのは82分。遠野が蹴ったCKのこぼれ球を宮城が落ち着いて押し込んで2-0とした。

その後も3点目を奪おうと攻撃に出ていくが、2-0のまま試合終了。フロンターレの未来を担う若手選手たちが躍動し、今シーズン最後の試合を勝利で締めくくった。

後半から投入された遠野大弥。攻撃にリズムをもたらした 【© KAWASAKI FRONTALE】

■特別親善試合 参加選手コメント

MF 16 瀬古樹

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「個人的にはタイもベトナムも初めて来た国だったので、こちらの天候や環境、町の雰囲気と、サッカー以外のことでも新鮮さがあって有意義な時間だった。サッカーの部分ではタイで勝ち、引き分け。ベトナムで勝ちということで、結果的には負けなかった。ただ、個人としては数字を残したかったなという思いがある。ただ、いろいろメンバーが入れ替わるなか、ベトナム遠征であればアカデミーや大学生が加わって、年齢的には自分が上になった。合わせる時間が短いなかでも、みんなでコミュニケーションを取りながらできたのはよかったと思う」

GK 21 安藤駿介

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「まずはGKとして失点しないことを第一に考えてプレーした。たくさんボールが来たわけではないが、しっかり処理はできたのかなと。課題もあったが。ベトナム遠征では若い選手が多くなって、練習が1日だけだったので合わせる時間が短かったが、そういうなかでもちゃんとやりきったことはよかった。タイでは上の選手がいて人数も多かったが、チームとして引き締まった雰囲気で試合ができたことがよかったと思う。それはお客さんあってのこと。タイでもベトナムでも、たくさんのサッカーファンや関係者に盛り上げてもらった。怪我人が出たのは残念だが、こういったスポーツでのアジア交流は大事なことだと思う。今回のアジアツアーでクラブとしての経験値はひとつ上がったのかなと。ただ課題も出たと思うので、それは日本に持ち帰って今後につなげていきたい」

DF 35 山内日向汰(桐蔭横浜大学)

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「得点を決めることができて、チームが勝つことができたのでよかった。(ゴールシーンは)あれは大学で練習していたシュートに持っていく形。それをベトナムのサッカーファン、フロンターレのサポーターの皆さんの前で見せることができてよかった。自分はベトナムからアジアツアーに参加させてもらったが、日本で体験できないような気候やピッチ、対戦相手だった。すごく貴重な経験をさせてもらった」

MF 39 八田秀斗(U-18)

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「前半は自分の特徴を生かして相手の間でボールを受けたり、さばいたり、チャンスを作ったり、シュートまでいくことができたが、後半はなかなかフィニッシュに関わることができなかった。守備の部分で強度が全然足りなかったし、これからの課題がはっきりしたのでもっと頑張っていきたい。今回の遠征で松井さん(松井蓮之)、瀬古さん(瀬古樹)、橘田さん(橘田健人)、遠野さん(遠野大弥)と一緒に中盤でプレーさせてもらった。イメージの共有がしやすくて、とてもプレーしやすかった。やはりすごいなと思った。自分としてはこのプレースピードと守備の強度を落とさず、日々の練習から意識して、またトップチームの選手と一緒にプレーできるよう頑張りたい」

全世界共通のサッカー熱

べカメックス・ビンズンFCのマスコットとふろん太の記念撮影 【© KAWASAKI FRONTALE】

タイ遠征からはじまった「川崎フロンターレアジアツアー2022」は特別親善試合のベカメックス・ビンズンFC戦をもって終了した。チームとしては来季に向けた新たな挑戦や積極的な若手起用などフロンターレの未来へとつながる試合をすることができただろう。

その中で感じたのはタイもベトナムも日本とは変わらないか、それ以上のサッカー熱。戦った3試合とも多くのサッカーファンが詰めかけ、1つのプレーに盛り上がり、1つのゴールに歓喜する。言語や文化の違いはあるが、サッカーは関係ない。全世界共通で楽しむことができ、人と人をつないで一体感を作れるのだと感じた遠征だった。

今後もフロンターレはタイ、ベトナムとの関係を深めていき、世界に自分たちの魅力やJリーグの面白さを伝えていく活動や取り組みに注目していきたい。
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著者プロフィール

神奈川県川崎市をホームタウンとし、1997年にJリーグ加盟を目指してプロ化。J1での年間2位3回、カップ戦での準優勝5回など、あと一歩のところでタイトルを逃し続けてきたことから「シルバーコレクター」と呼ばれることもあったが、クラブ創設21年目となる2017年に明治安田生命J1リーグ初優勝を果たすと、2023年までに7つのタイトルを獲得。ピッチ外でのホームタウン活動にも力を入れており、Jリーグ観戦者調査では10年連続(2010-2019)で地域貢献度No.1の評価を受けている。

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