「小型化」で修正に成功したB1首位決戦 主力欠場のピンチに千葉ジェッツの守備が“化けた”理由

大島和人

原が「フィジカルな守備」を実践

コンタクトの強さは原修太(左)の武器 【©B.LEAGUE】

 原は187センチ・96キロという格闘家のような体格を持つウイングプレーヤーで、特にその貢献は大きかった。広島のカイル・ミリングHCは敗因として、相手の「フィジカルな守備」を挙げている。それを分かりやすく実践した守備のキーマンが原だった。彼は高い強度でアグレッシブに守る千葉の新スタイルと、明らかにフィットしている。

 原はこう口にする。

「フィジカルにやるというのは、相手が嫌がるくらい体をぶつけることだと思っています」

 外国籍選手、ビッグマンとのマッチアップについてはこう述べる。

「“ミスマッチ”って言われると、正直なぜミスマッチと言うのだろう?と思います。スイッチして、フリースローライン付近から1対1をする分には、苦手意識もないです。守れる自信があります」

 ゴールの真下に入ったビッグマンがフリーでパスを受けたら、20センチ背が低い原にとってノーチャンスの状況だ。しかし“地上戦”になれば原はパワーと機動力で五分に渡り合える。今季の彼は「ファウルが込んで、前半に2,3回してしまう」という課題に直面しているが、それは強度の証明でもあるだろう。

“得失点差”が示す原の貢献

 今季の彼は1試合平均の出場時間が25分32秒。平均6.3得点、1.6リバウンド、2.1アシストだから主要スタッツで光るものは残していない。そして守備の貢献は、なかなか数字に出にくい。

 パトリックHCは原が出場している時間帯の“得失点差”に着目している。

「天皇杯も含めて、原はチームの日本人の中でプラスマイナスが一番良い。平均9点以上のプラスなので、得点を取らなくてもDFとハードワークで貢献している」

 つまり原は自らがそこまで多く得点を挙げなくても、守備で相手の得点を抑え、チームの得失点差をプラスにしている。

千葉が見せた可能性とは?

 B1はまだ序盤戦で、5月のチャンピオンシップまで半年近くが残っている。広島戦の1勝1敗という結果、11試合を終えて8勝の戦績は悪くない。しかしまだ千葉の今季の成功を保証されているわけではない。ただ広島戦で見せた修正と、日曜の前半に見せた猛烈な守備は、その可能性を強く感じさせるものだった。

 Bリーグは「外国出身選手」「ビッグマン」への依存度が高いリーグだ。にもかかわらず千葉は戦術的な意図からそういった選手のプレータイムを抑える選択をして、結果をつかんだ。あえて小型化に踏み切り、守備における強みを引き立たせることに成功した。能力と戦術が伴えば、サイズ的にはミスマッチな日本人選手でも、外国籍のビッグマンと五分に渡り合える――。20日の広島戦は、そんな可能性を分かりやすく見せた試合だった。

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著者プロフィール

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、ラグビー、ハンドボールと幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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