ジョーカーか、先発か。プレミアで覚醒中の三笘薫、カタールW杯での先発を「諦めていない」【インタビュー】

田嶋コウスケ

プレミアリーグとW杯。三笘の記憶

リーグ杯アーセナル戦で決勝点を奪い、強豪撃破の立役者となった三笘(右) 【Photo by Clive Rose/Getty Images】

 W杯と聞いて、三笘が覚えている最初の記憶は、当時5歳だった2002年の日韓大会だという。「『日本、強いな』、『盛り上がっているな』と。あの時はそこまでハッキリとわからなかったですけれど、後になってすごくたくさんの人が(観戦に)来ていたことも分かりました」。サッカーボールを夢中で追いかけていた三笘少年は、次第に欧州サッカーに強い憧れを持ち始める。
「マンチェスター・ユナイテッドやレアル・マドリードとか、強いところばかり見ていました。マンチェスター・Uが強かった頃の全盛期も。全部といっていいほど、サッカー番組は見ていましたね」

 その中で、特に胸をときめかせたのがマンチェスター・Uのクリスティアーノ・ロナウドや、バルセロナのアンドレス・イニエスタ、シャビといった名手たち。10年W杯の南アフリカ大会で、そのシャビとイニエスタ擁するスペイン代表が攻撃サッカーで世界の頂点に立ったときは心が踊った。

 13年にバルセロナに加入したネイマールにいたっては、テクニックを真似し、自身のドリブルに取り入れようとした。「ネイマールのドリブルは昔よく見ていました。『なんでこれで抜けるんだろう?』って。見れば見るほど不思議でした。難しかったですけれど、彼のような動きをした方が敵を抜けるところがありますから」。たしかに、小さいステップを入れて敵の体勢を崩し、反発ステップで一気に抜き去る三笘のドリブルは、ネイマールに非常によく似ている。

 そんな三笘は今、世界最高峰プレミアリーグで戦っている。

 少年時代、テレビ画面越しに見つめていたリバプールの本拠地アンフィールドは「実際に見るとスタンドが思ったよりも小さかった」と微笑む。プレミアリーグの開幕戦で訪れたマンチェスター・Uの本拠地オールド・トラフォードは「あの場所でプレーしたい気持ちがすごくあった」という憧れの場所。その開幕戦で、あのC・ロナウドとも対面した。だが、ベンチスタートのまま出番なく試合を終えると唇を噛んだ。「アップだけでピッチを踏んでいるようじゃいけない」。うまくいくこともあれば、いかない時もあるが、三笘は少年時代に思い描いていた夢の世界にいるのだ。

 そして、5歳だった三笘少年が、02年日韓大会から応援してきた日本代表の一員としてW杯の舞台に立つ。キャリア初のW杯を迎える三笘にとって、今回の戦いは大きな挑戦になると語気を強める。

「個人としては、初めてのW杯になるので楽しみにしています。厳しい組に入りましたが、ゴールで日本代表に貢献したい。ドイツ、コスタリカ、スペインと同組に入り、すごく厳しい戦いになると思います。本当に初戦を勝つか、負けるかですごく変わってくるのがW杯。まずはドイツ戦にすべてを懸ける。タフですけれど、こういうところを勝ち抜くところに意味がある」

「これまでW杯で、日本代表は紆余曲折あったと思います。常にグループステージを突破しているわけではありません。その時のメンバーや対戦相手によっても、結果が変わってくるというのはすごく感じます。前回大会もベスト8にいきかけましたけれど、そこで勝ち切れないというのが、日本の現在地かと思います。まだまだやるべきことは多いなと。そういう中でも、多くの選手が海外に飛び出し、日本の基準を上げてきている。カタールW杯は、日本代表の現在地を図る大会になると思います」

 何をもって、今回のW杯を成功と思いますか? そんな質問に、三笘は「ベスト8までいければ成功じゃないですか」と短く答えた。

 前に見据えるのは、グループステージ突破と決勝トーナメント1回戦。日本代表を勝利に導くことができれば、またひとつ三笘の夢が叶うことになる。

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著者プロフィール

1976年生まれ。埼玉県さいたま市出身。2001年より英国ロンドン在住。サッカー誌を中心に執筆と翻訳に精を出す。遅ればせながら、インスタグラムを開始

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