連載:ドラフト識者3氏による12球団指名評価

2022ドラフト12球団指名評価(指名総括) 3氏が最も評価した球団は? 新人王候補は誰だ!?

Timely!編集部

3氏が考える、新人王の可能性を秘めた選手

リリーフとして新人王も十分狙えると西尾氏も太鼓判を押す船迫 【写真は共同】

――今シーズンはセ・リーグでは外れ1位だった新人の大勢投手(巨人)や6位入団で4年目の湯浅投手(阪神)、パ・リーグでも育成5位で2年目の水上投手(西武)、ドラフト6位で2年目の阿部投手(オリックス)、新人で育成1位の宮森投手などが大活躍を見せて新人王候補として名前が挙がっています。

西尾 そうですね、確かに。

――ドラフト時点での注目度や評価が必ずしも高くなかった選手達が新人王を争っているという結果は、3氏もなかなか予想ができなかったと思います。

 そんなことも踏まえて、今年の指名選手の中から数年以内に新人王を争う可能性を秘めた選手の名前を挙げていただきたいと思います。


西尾 そうですねぇ。僕はセ・リーグだ船迫(巨人5位)ですね。

――船迫は中継ぎ、セットアップで大活躍して、というイメージになるのでしょうか?

西尾 そうですね。さっき名前の挙がった選手達もみんなリリーフですし、いきなり新人が先発でバリバリやるっていうのは難しくなっている気もするんですよね。

 そういう意味ではパ・リーグでは小孫(楽天2位)かなという気もしますけど、ちょっとまだ安心感という面では怪しい気もするんですよね。

 パ・リーグで敢えて挙げるなら、ちょっと大穴ですけど高野(ロッテ4位)ですかね。先発とリリーフのどっちで考えているのか分からないですけど、リリーフで使うと面白いかもしれないです。ロッテは左ピッチャーがあんまり充実している感じがしないのでチャンスも多そうですしね。

菊地 僕は初志貫徹で、パ・リーグは荘司(楽天1位)、セ・リーグは田中幹也(中日6位)です。

 荘司は、1年目はそれなりに痛い思いとか経験しつつ、2年目にガッとブレイクするイメージです。

 田中幹也は守備に関しては広島の菊地選手に近い感じイメージで、ショートないしはセカンドでポジションを獲って、土田龍空と二遊間を組むようになってほしいと思っています。すごく華のあるというか、野性味のある抜群の二遊間になりますし、そうしたらお客さんを呼べるチームにもなると思うので、期待したいですね。

花田 僕は阪神ファンのバイアスがちょっとかかっているかもしれませんが、セ・リーグは森下(阪神1位)です(笑)。

 パ・リーグは曽谷(オリックス1位)か金村(日本ハム2位)かなという気がするんですけど、うーん、曽谷ですかね。

――曽谷はリリーフ、先発のどっちで大活躍するイメージですか?

花田 よく田嶋のイメージと重ねられることが多いですけど、先発でいけると思うんですよね。先発は駒が揃っているので比較的楽な場面で投げさせてもらえて、それでいてチームも強いですし、リリーフ陣も強力ですから、勝ち星はある程度ついてくるんじゃないかという気がするんです。新人王って二桁勝つかどうかという点も大きいと思うので、その辺はオリックスに入ったことが有利に働くかなという気がしますね。

 森下は、岡田監督がレギュラーとして1年目から使うと思っています。レフトはロハスがいなくなるのでポジションも空いていますし。

「右の外野が欲しい」という意思を持って獲った右の大卒外野手ですし、そういう意味では近本の時と被る気がするんですよね。あのときも、三拍子揃った左の外野手を獲るという意思があって、藤原を外して、辰巳も外して近本を獲りましたよね。その近本を獲ったからには使うぞと、1年目から使って新人王を獲りました。ですので森下もそのイメージですね。

3氏の総合評価1位は巨人、僅差の2位にオリックス

 ここまで12球団の指名をそれぞれ評価して頂きましたが、3氏の点数を平均点数順に並べるとこのような結果になりました。

 最後に改めて3氏の指名評価を簡単に振り返りたいと思います。

1位 巨人(平均89.3点)
「野手が欲しかった巨人が浅野、萩尾、門脇の3人を獲れたことは大きい」(西尾)
「3位の田中、5位の船迫は直ぐに1軍ブルペンにいてもおかしくない」(菊地)
「浅野は悲願のスター選手獲得」(花田)

2位 オリックス(平均88.3点)
「今年のNo.1左腕、曽谷を獲れたのが大きい」(西尾)
「補強ポイントに合致する内藤が2位に残っていたのはすごくラッキー」(菊地)
「ウェーバーの不利を感じさせない上位指名」(花田)

3位 広島(平均81.7点)
「1位、2位にスケールの大きな高校生、長期的ビジョンを感じる」(西尾)
「2位の内田は近年ずっと残っていた『右の強打者』という宿題の答え」(菊地)
「社会人のピッチャーも3人抑えて来季への即効性も担保している」(花田)

4位 ヤクルト(平均79.7点)
「ポスト村上を見据えた2位、3位指名に好感」(西尾)
「2位の西村がウェーバー最後によく残っていた」(菊地)
「補強ポイントだった即戦力の先発ピッチャーを獲れた」(花田)

5位 DeNA(平均78.3点)
「2位の吉野は補強ポイントにハマる右の即戦力」(西尾)
「将来の正捕手候補・松尾を1位指名した英断」(菊地)
「山﨑が抜けることも想定したピッチャーの指名ができた」(花田)

5位 西武(平均78.3点)
「蛭間は割と早いうちから外野の一角を狙えそう」(西尾)
「6位の児玉は力強さが出てくれば十分1軍でやれる」(菊地)
「ピッチャーも大卒の青山、高卒の山田を下位でしっかり獲れた」(花田)

5位 日本ハム(平均78.3点)
「1位矢沢、2位金村の指名は文句なし」(西尾)
「1位で矢沢を単独で獲れたというのがもう万々歳」(菊地)
「安西、奈良間、宮内という指名もバランスがいい」(花田)

8位 阪神(平均74.0点)
「全員総崩れになる怖さもあるなという印象」(西尾)
「浅野を外して森下に行くのは筋が通っている」(菊地)
「補強ポイントをしっかり抑えている」(花田)

9位 ロッテ(平均73.3点)
「もう少し中軸を狙えるバッターを獲っても良かった」(西尾)
「育成の吉川、黒川は別人のように化けてもおかしくない」(菊地)
「懸念のショートも2位で友杉を抑えられた」(花田)

10位 楽天(平均71.7点)
「野手が5位の平良1人だけでいいのかな」(西尾)
「意外と先発ができるピッチャーが少ない」(菊地)
「荘司を獲れたのというのは間違いなくプラス」(花田)

11位 ソフトバンク(平均69.0点)
「イヒネ1位であれば、2位以下はもっと違うやり方もあった」(西尾)
「当たれば大きいが外れるリスクも伴う指名」(菊地)
「他の11球団とベクトルが違うドラフト」(花田)

12位 中日(平均68.3点)
「似たタイプの選手をたくさん獲っている印象」(西尾)
「仲地の1位はちょっと思い切ったなぁという感じ」(菊地)
「仲地も村松も一つ下の順位でも獲れたのでは?」(花田)

識者プロフィール

西尾典文
1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

菊地高弘
1982年生まれ、東京都育ち。野球専門誌『野球太郎』編集部員を経て、フリーの編集兼ライターに。元高校球児で、「野球部研究家」を自称。著書『野球部あるある』シリーズが好評発売中。アニメ『野球部あるある』(北陸朝日放送)もYouTubeで公開中。2018年春、『巨人ファンはどこへ行ったのか?』(イースト・プレス)を上梓。

花田雪
1983年生まれ。神奈川県出身。編集プロダクション勤務を経て独立し、フリーの編集者・ライターに。『がっつり!プロ野球』『がっつり!甲子園』(ともに日本文芸社)、『プロ野球全12球団選手名鑑』『B.LEAGUE完全ガイド』(ともにコスミック出版)などスポーツ分野を中心に雑誌、書籍、ウェブで編集・執筆を行う。編著書に「あのプロ野球選手の少年時代」(宝島社)。文春野球2022では阪神タイガースの監督も務める。

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