「DAZN Jリーグ推進委員会」月間表彰2022

J1月間MVP 横浜FM岩田智輝を変えた 先輩の言葉と「ほぼ毎日」の筋トレ

舩木渉

最近は背中を重点的に鍛えている

――様々なポジションをこなしながら、年間を通じてピッチに立ち続けてきましたが、「実はめちゃくちゃキツかった」という試合はありますか?

 6月の柏レイソルとのホームゲーム(第18節)ですね。実はその試合の2日前に胃腸炎になって、下痢もしていたんです。自分としては多少きつくても、起用してもらったら全力でやる覚悟はあったので試合に出たんですけど、前半が終わった段階ですごくしんどくて。とりあえず、後半はいけるところまでいこうと思っていました。

 結局、後半が始まって10分くらいしたところで交代(57分)したんですが、ベンチに下がる時には脱水状態になっていました。でも、僕が交代する前にチームはすでに4点奪っていたので、後のことは考えずに120パーセントの力を出せていた。だから、逆にあれはあれで良かったのかなとも思っています。

――リーグ戦でフル出場しなかったのは、退場や負傷交代を除くとその柏戦だけです。大きなケガやコンディション不良がなく、プレーし続けられている理由はどこにあるんでしょうか。

 筋トレですね。日々成長したいですし、ケガをしないことも大事ですけど、しっかりとした身体づくりも大事だと思っているので。

――チャントも『キン肉マン』のテーマソングになりましたし、ファン・サポーターの間でも「岩田智輝=筋肉」というイメージがついていきていますね。実際、どれくらいのペースでトレーニングをしているんですか?

 1回あたり1時間半くらいで、1週間に4~5回は筋トレをしています。

――週に1~2試合あると考えたら、それ以外はほぼ毎日筋トレをしていることになりますね。

 そうですね。試合では上半身をそれほど使わないので、翌日は上半身を追い込むようにしています。そこから下半身、上半身、下半身、上半身…と毎日交互にトレーニングしていく感じです。

――ちなみに、最近特に力を入れて鍛えている部位はありますか?

 背中ですかね。肩周りの筋肉によって相手を抑えられるのかなと思っていて、重点的に鍛えています。漢(おとこ)は背中で語る……ということで(笑)。

――見るたびに岩田選手の背中が大きくなっていって、練習着がパツパツになっている気がするんですが……。

 筋トレで持ち上げるウエイトの重さや回数は増えていますし、今年に入ってから体重も2キロくらい増加しています。早くオガさん(ホペイロの緒方圭介氏)に、「練習着が小さいです」と言いたいですね(笑)。実はすでにユニホームをワンサイズ上げてもらっているんですけど。

――LLから2XLに?

 それはちょっと言い過ぎですかね(笑)。でも、もともと何サイズだったんだろうな……とにかくワンサイズ大きくなりました。

スプリントのトップスピードが2キロアップ

第28節・FC東京戦ではCKから今季2点目となる先制点も奪った。マッチョな肉体を武器に、岩田は3年ぶりのリーグ優勝を目指して最後まで走り続ける 【(C)J.LEAGUE】

――後輩たちを巻き込んで、「岩田塾」を主宰しているとも聞きました。

「ちょっとやってみない?」と誘ったら、「喜んでやります!」と言ってくれたので、今は西田(勇祐)と村上(悠緋)が塾生として一緒に筋トレをやっています。筋肉はないよりはあったほうがいいですし、身体の使い方がいくらうまくなっても、土台となる筋力が弱ければ伸び率がかなり変わってきます。そして、筋トレは続けないと意味がない。シーズン途中に移籍してしまった塾生もいますけど、現時点で継続できているのは西田と村上の2人だけですね。

――筋トレの成果として、成長を実感したエピソードはありますか?

 昨年はスプリントのトップスピードが32キロ台後半だったんですが、今年のプレシーズンキャンプで測ったら34キロくらい出ました。スピード以外の部分でも、後ろや横から相手に当たられても身体がブレずにプレーできているなと実感しています。

――20代半ば(25歳)になって足が速くなったんですね。

 もう足は速くならないと思っていたので、自分でも数字を見て「こんなにスピードが出ているんだ!」と驚きました。周りのみんなは気づいていないと思いますけどね(笑)。

――シーズンも最終盤に差し掛かり、F・マリノスには自力でリーグ優勝を決められるチャンスがあります。3年ぶりの優勝を果たし、笑顔で1年を締めくくるためにはどんなことが大切になってくるでしょうか。

 これまで通り練習から100パーセントでやって、自分たちがやるべきことを試合でも発揮するだけだと思います。優勝が懸かった試合だからといって何かを変えるのではなく、目の前の試合に全力を尽くすのみです。この雰囲気のままやっていけば、(2位に終わった)昨年のような悔しさを味わうことなく、良い結果で終われると思っています。

――Jリーグでのシーズンが終わった先に見据えるものは……。

 難しいとは思いますけど、もちろんカタール・ワールドカップには出場したいです。でも、今の日本代表に入って自分に何ができるのか、チームにとってよりプラスの要素をもたらせるのかと言われると、まだまだ。日本代表に選ばれた時に勝利に貢献できるよう、もっともっと成長したいです。

 それにシーズンが終わった後のことは、まずJリーグで優勝を決めてから考えたいと思います。とにかく今はF・マリノスらしいサッカーをして優勝することが目標ですし、それだけが自分たちのやるべきこと。目の前の1試合に集中して、全力でアグレッシブなサッカーを表現していきたいと思います。

(企画・編集/YOJI-GEN)

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著者プロフィール

1994年生まれ、神奈川県出身。早稲田大学スポーツ科学部卒業。大学1年次から取材・執筆を開始し、現在はフリーランスとして活動する。世界20カ国以上での取材を経験し、単なるスポーツにとどまらないサッカーの力を世間に伝えるべく、Jリーグや日本代表を中心に海外のマイナーリーグまで幅広くカバーする。

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