飛び級でU23アジアカップに挑む松木玖生「国を背負って、全勝するつもりで臨む」

飯尾篤史

堂々としていて物おじせず、発する言葉は力強い。プレー面のみならず、メンタルの強さも大きな魅力だ 【スポーツナビ】

 ピッチ上での堂々としたプレーぶりや醸し出す雰囲気は、高卒ルーキーのそれとは思えない。「開幕スタメンを狙う」と宣言したFC東京では言葉どおりレギュラーポジションを獲得し、有言実行してみせた。U-19日本代表世代から飛び級で選出されたU-21日本代表でも、松木玖生はチームをけん引していくつもりだ。

初ゴール時の感情は「やっとだな」

――3月のドバイカップは松木選手にとって、代表チームでは中学3年生以来の海外遠征でした。2試合に出場しましたが、どんな収穫がありましたか?

 自分だけでなく、他の選手たちも(コロナ禍で)海外チームと戦う経験が多くないなかで、日本代表として日の丸を背負って、持てる力を最大限に出すという経験ができたのは良かったです。(クラブ事情により)自分は最後まで残ることができませんでしたが、優勝という結果を持ち帰ってくることができて、誇りに思います。ただ、まだまだな部分も多いですし、ここが基準となってくる。まずは大岩(剛)監督のゲームプランのもと、求められることに取り組めたのが、自分にとっての収穫かなと感じています。

――大岩監督から求められていることとはなんでしょう?

 ゴール前に飛び出していく回数を増やすことや、シャドー(インサイドハーフ)の立ち位置についてはミーティングでよく言われています。特に「得点を狙ってほしい」と求められていて、そこは自分の持ち味でもあるので、代表でも所属クラブでも狙っていきたいと思っています。

――FC東京では、5月3日のアビスパ福岡戦でプロ初ゴールを決めました。ドバイカップ以降の取り組みが実ったわけですか?

 得点に関してはずっと狙っていたんですけど、ドバイカップを通して、より自分が取ってやろうという気持ちが芽生えたのは確かですね。

――ゴールが決まったときにこみ上げてきた感情は?

 うれしいというより、やっとだなという気持ちが一番でしたね。10試合目で初ゴールというのは遅いので。その後チームが大敗してしまったので、チームを勝利に導くゴールを奪いたいと思っています。

フォーデンとデ・ブライネに注目している

同じ左利きのフォーデン。松木よりも攻撃的な選手だが、その立ち位置は大いに参考にしているという 【写真:ロイター/アフロ】

――引き続きU-21日本代表に選出され、6月1日に開幕するU23アジアカップに出場します。この大会には、どんなテーマを持って臨みますか?

 個人としてのテーマは、そこまで変わらないと思います。自分の特徴である運動量やゴール前に飛び出していく回数を増やすことを意識して、しっかりと準備して臨みたい。チームとして、日本代表としては強い気持ちで、絶対に勝つんだという気持ちで戦わないといけないと思っています。

――運動量やボール奪取力は、青森山田高時代から変わらない松木選手の武器であり、魅力だと思います。一方、FC東京では、立ち位置で相手より優位に立ち、相手を惑わせることを学んでいるところだと思います。自身のプレーの幅やサッカーの考え方、戦術眼に変化を感じますか?

 東京ではポジショニングをすごく重視してやっていて、最初はイマイチ分からなかったんですけど、先輩方からいろいろとアドバイスをいただいて。そのアドバイスを実践に移したら、視野が広くなったり、ピッチ全体が見えるようになったり、サポートの位置が明確になってきたと感じています。特に僕がやっているインサイドハーフはポジショニングがものすごく大事なので、いい立ち位置を取ることを常に心がけるようになりました。

――ヨーロッパのサッカーを見るときも、これまでとは見方が変わったり、注目するポイントが変わったり?

 いや、それはないですね。自分のポジションの選手を常に見るようにはしています。

――よく見る選手、参考にしている選手は誰ですか?

 ヨーロッパのサッカーでは、(フィル・)フォーデン選手(マンチェスター・シティ/イングランド代表)や(ケヴィン・)デ・ブライネ選手(マンチェスター・シティ/ベルギー代表)のポジショニングやボールの運び方は注目して見ています。フォーデン選手は前線での起用が多いんですけど、ライン間でマークを外してボールを受けたりする工夫もうまいので。身近では(東京でインサイドハーフのコンビを組む安部)柊斗くんは自分と似たプレースタイルなので、ボールを出すタイミングやポジショニングを参考にしています。

――安部選手からはアドバイスももらうのですか?

 アドバイスはあまりないですけど、一番近くで刺激をもらえる選手なのは間違いないですし、私生活でも一緒にいる機会が多いので、いい関係性が築けているんじゃないかと思います。

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著者プロフィール

東京都生まれ。明治大学を卒業後、編集プロダクションを経て、日本スポーツ企画出版社に入社し、「週刊サッカーダイジェスト」編集部に配属。2012年からフリーランスに転身し、国内外のサッカーシーンを取材する。著書に『黄金の1年 一流Jリーガー19人が明かす分岐点』(ソル・メディア)、『残心 Jリーガー中村憲剛の挑戦と挫折の1700日』(講談社)、構成として岡崎慎司『未到 奇跡の一年』(KKベストセラーズ)などがある。

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