魔法~マジック~の世界が広がる 島根スサノオマジックは魅力ある選手たちで満載!
昨季後半でベースアップ、それに3人の加入で強豪チームへ
昨季のチームをベースとし、HC(ヘッドコーチ)を筆頭に国を代表するスター選手たちの獲得に成功した島根。前評判の期待を裏切ることのないスタートを昨季王者、千葉ジェッツを相手に見せたホームオープニングゲームを見て魔法にかけられたファンも多いのではないだろうか(もう魔法の件はこの辺にしておこう)。
ペリン・ビュフォード、北川弘、ウィリアムス ニカ、リード・トラビスを中心としたスピードを生かしトランジションで生まれるズレを最大化するオフェンスの形を見いだし、ベテランの山下泰弘、ディフェンス能力の高い白濱僚祐、ユーティリティー能力の高い阿部諒、日本人ビッグマンの小阪彰久、エナジーガイの後藤翔平らがサポート。このメンバーで昨シーズン終盤の10戦を、8連勝を含む9勝1敗で締め括ったチームを土台があったからこそ、今シーズンの補強が最大限の効果を発揮していると言える。
ここに安藤誓哉、金丸晃輔、ニック・ケイの3選手が加わった。
まずは安藤誓哉。
優勝経験のある安藤誓哉が『覚悟』を持ってチームをけん引 【©B.LEAGUE】
今季印象に残っているのが、幾度となくインタビューで耳にする『覚悟』という二文字。その言葉を両肩に担ぎ、相手がどこの誰であろうと優勝を目指すリードオフマンとしての姿勢を崩さず、クラッチショットを決めチームを勝利に導く今シーズンの彼の背中は、応援する者にとってこれほど頼もしいものはない。
次にニック・ケイ。
ニック・ケイは裏方を演じるだけでなく、必要となれば得点も取れるユーティリティ-プレーヤー 【©B.LEAGUE】
経歴だけ聞くと、いったいどんなスーパープレーを見せてくれるのだろうかと(かく言う私もプレーを実際に確認する前にはそうだった)思ってしまうのだが、彼の魅力は見たことのない高さのアリウープや強烈なハンドリングからステップバックして放つ3Pシュートなどではない。
むしろどちらかと言えば目立たない、数字に表れないプレーの質が極上だ。
だからこそ、ビュフォードやトラビス、安藤、金丸という強烈な個性との共存が可能であり、むしろ彼らがより引立つという最高のスパイスになる。
そして得点源トラビスの欠場が続く中、必要とあらば20得点をたたき出し、ほぼフル出場できる無尽蔵のスタミナを持つのには本当に驚かされる。
単純比較は難しいが、昨シーズンのスペインリーグでは平均7.9得点だったものが、15得点と約2倍となっていて、これはNBLで優勝したシーズンと同じ数値ということから、彼にとっても今シーズンの島根にフィットしていると言えるだろう。
最後に金丸晃輔。
島根に移籍して新たなスタイルを構築している金丸晃輔 【©B.LEAGUE】
島根のポール・ヘレナヘッドコーチが持ち込んだ最初から最後まで走り切るバズソー(丸のこ)スタイルは、ディフェンス面の負担の増加、トランジションのスピードアップがベースにあるため全体の強度が高くなった。昨季まで所属していたシーホース三河と違うプレースタイルに、三河ではあった金丸のキャッチ&ショットにつながるセットのパターンもなくなった(正確には専用の新しいセットはあるのだが)。
さらに対戦相手は徹底したマークで金丸シフトを敷き、マストとも言えるフェイスガード、スクリーンはハードショウと言った対策は変わらないどころか、シーズン序盤で相手の戦術の見えづらいなかではなおさらこの最も目立つ男を抑えに来るのだから堪らない。
そんなこともあり、シーズン序盤はオフェンス、ディフェンス両面で以前との差異に悩まされていたはずだが、そんなそぶりを見せることなく自らのプレーを徐々に適応させていったように感じる。
ディフェンス面では、リバウンドの微増、過去2シーズン記録してなかったブロックショット、ファウル数はキャリアハイと確実にハードディフェンダーになりつつある。
そして、彼の一番の魅力であるオフェンス面でも適応している。その証拠に、故障前の32試合中12試合でしかなかった2ケタのショットアテンプト(試投数)が、数試合離脱した故障からの復帰後は、身体が万全ではないにもかかわらず4戦中3戦で2ケタのショットを放ち、そして4戦すべてで2ケタ得点をマークした。
加えて、そのうちの2戦では20得点超え、さらに3回のエンドワンスリーを披露。本当の意味での金丸が帰ってきたと言えるだろう。
これは勝手な推理になるのだが、故障期間中、外からゲームを観察できたこと、身体を少しリフレッシュできたこと、そして彼自身の頭の中の整理ができたこと、この3つのポイントが今の状況を作ったのではないかと思う。
今後、彼のけがが再発することなく、チャンピオンシップ(CS)に向かってチームを仕上げる部分で必要なピースであるトラビスが戻ってきた時、チームがどんな姿になっているか。想像しただけでも、ドキドキしてくるのは私だけではないはずだ。
昨シーズンのMVPであえる自分自身のさらなる向上を目指して移籍した島根でも、チーム初出場となるであろうCSの舞台で“本当に欲しい一本”を飄々(ひょうひょう)と沈め続ける姿を楽しみにしている。
故障者を出しながらもここまで順調にシーズンを進めきたチームだが、ここに来て、鳥取市で行われた広島ドラゴンフライズとの第2戦、そしてアウェーの群馬クレインサンダーズ戦を見ると、ここまでは何とかしてきた疲労が隠しきれなかったように見えた。
その顕著な部分として、スターティングファイブのターンオーバーの増加が目立つ。それは安藤、ケイ、ビュフォードという、ここまで頼ってきた選手たちにとりわけ顕著だ。相手の分析と対策から生まれるターンオーバーもあるが、それ以上に身体のコントロールが効かない、判断力の低下等の疲労から生まれる性質のものも多いように見える。
また、金丸が戻って来たことで印象は薄れてはいるが、3ポイントシュートの成功率について、安藤、白濱、阿部の数字の上がらない試合が増えている。こちらも決めなければいけない重圧というよりは、身体の連動がうまくいかないショートや、それを補おうと普段とは違う力の入れ方でボールを飛ばそうとすることで起きる横のズレなどで、調子の良い時には見られないシュートミスの種類が多くなっている。
これはどのチームにも同じ言えることだが、 CSに向けてチーム全体の身体と心、そして戦術とどれだけ良い準備ができるのか、それがBリーグのプレーオフを勝ち抜くためには欠かせないことだと言える。
その舞台に島根が初めて立とうとしている。もちろん未知の世界が待っているわけだ。
しかし、これだけは言える。
5月中旬、CS取材が始まれば、私を含め、すべての島根スサノオマジックファンが歴史の証人になる。ここまで見せてくれた魔法が現実にものとなり、CSを勝ち上がっていく戦いを披露してくれるはずだ。
構成/バスケットボールキング編集部
クラブ史上、初のチャンピオンシップ進出を決めた島根。どんな戦いを見せてくれるのか、楽しみだ 【©B.LEAGUE】