森井大輝、固いバーンにはじかれ悔しい8位 最終日に8個目にして初の金メダルを狙う

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金メダルを狙わなくなったら終わり

今大会は滑降とスーパー大回転で銅メダルを獲得した森井は、大回転で普段の感覚との違いを修正できなかったという 【写真は共同】

 初出場のソルトレークシティ大会から20年。今大会を含め、パラリンピックで獲得したメダルは銀が4個、銅が3個。ワールドカップでは3度の年間総合優勝と、輝かしいキャリアを歩んできた。それでも森井は決して満足することはなかった。日本のエースとして、男子チェアスキー界をけん引してきた一人として、大会前に明かしていた金メダルへの思いは誰よりも強かった。

「(金メダルを)狙えない、もしくは狙わなくなった時点で僕の競技人生は終わりだと思っています。今回は金メダルを狙えると思っていますし、本当にたくさんの方にサポートしていただいたおかげで雪上に立つことができています。応援、サポートしていただいたみなさんに恩返しという意味でも、金メダルは是が非でも欲しいです」

 この4年間は肉体のアップデートを日々欠かさなかった。「海外選手と比べて軽い方」と話す森井は18年オフシーズンから、東京パラリンピック出場を目指して夏季競技のパワーリフティングを本格的にトライ。新型コロナウイルスが猛威を振るった2020年からは、毎日本格的なトレーニングができるように自宅をジム仕様に改造すると、充実した設備を整えた。

「平昌パラリンピックから比べると4、5キロ増えたと思います。体重は重い方がスピード出ますね。ジムは1回目の緊急事態宣言が出たときに作り始めました。コロナ禍でもより安全に、人に移さない、自分が感染しないために環境を整えました」
 用具についてもこれまで以上のこだわりを見せていた。チェアスキーのセッティングは雪面や天候の状況によってミリ単位の調整を施し、100通り以上のサンプルを北京パラリンピックまでに用意した。新型コロナウイルスの影響によって1年前に開催される予定のプレ大会が中止となり、北京のコースは「ぶっつけ本番」という中でも適応できる自信があった。

「これまでのパラリンピックでも事前にたくさん試して、自分が一番合うセッティング見つけてきました。今回はより細かく、サスペンションや体のポジションなど、設定だと0.1ミリ単位での調整です。設定を変更した時にどんな乗り心地になるのか。やわらかいバーンや固いバーンなど、状況に応じてどういった設定がベストなのかしっかりと詰めてきました」

 そうした準備とたゆまぬ研鑽(けんさん)によって、今大会は滑降とスーパー大回転で銅メダルを獲得。しかしながら、今回の大回転は森井の想像を大きく超えるコースセットだった。

「(今回の大回転は)旗門と旗門のインターバルが1本目は23メートルから24メートルくらいで、2本目は24メートルから25メートルくらいでした。普段僕たちが練習しているのは27メートルから28メートルなんですよね。普段の感覚との違いを修正できなかったのがすごく悔しいですし、こういったコースもあるんだなと自分の中でも嫌というほど痛感しました」

回転で初の金メダル狙う

 残るレースは大会最終日の回転種目。「悲願の金メダル」のために、もちろんベストを尽くすつもりだ。

「1ターンでも自分の滑りを出したいなと思いますし、スラローム(回転)に向けて中2日あるので、しっかりとコーチ陣と話し合って、どういったセッティングで臨むのか。どういった戦略で挑むのか。ということを考えたいと思います。この北京パラリンピックを悔いなく、次につながるような滑りができたらと思います」

 41歳のベテランはこれまで幾多の困難を乗り越え、諦めずに頂点を目指し続けてきた。次こそは、最も輝くメダルを手に入れたい。

(取材・文:赤坂直人/スポーツナビ)

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