エースだけでメダルは取れぬジャンプ団体 「陵侑にこれ以上飛べは無茶」選手層強化を
2本目を飛び終えた日本選手の表情は一様に厳しく、優勝争い、メダル争いに湧くオーストリア、ドイツ、スロベニアの選手たちとは対照的だった。
ソチと北京、歴然としたチーム力の差
ソチ五輪以来のメダルを目指した日本は、ポイントを伸ばすことができず5位に終わった 【写真は共同】
日の丸飛行隊にとってこの現実が大きく突き刺さる結果となった。大エース陵侑がノーマルヒル金、ラージヒル銀を獲得し、2大会ぶりの団体メダル獲得も期待されたが結果は5位。銅メダルを獲得したドイツと40.1点差、1人1本あたりの飛距離に換算すると約2.8メートルの差があった。前回メダルを獲得したソチ五輪と今大会を比較すると、エースが個人ラージヒルで銀メダルを獲得したのは同じだったが、それ以外の3選手の結果を見れば“チーム力”の差は歴然としている。
<ソチ五輪代表メンバーの個人ラージヒル成績>
2位:葛西紀明
9位:伊東大貴
10位:清水礼留飛
13位:竹内択
<北京五輪代表メンバーの個人ラージヒル成績>
2位:小林陵侑
17位:佐藤幸椰
18位:小林潤志郎
30位:中村直幹
日本選手団の原田雅彦総監督は「陵侑の活躍が光りますけれど、それに追いつくような実力を(他の選手が)まだまだつけなければいけない……というふうに反省しております」と率直に現実を受け止める。
特に2本目は4選手とも飛距離を伸ばすのに不利な追い風の状況だった。宮平秀治ヘッドコーチは「(有利な)向かい風の条件ならそこそこ飛べるが、今日のような追い風、僕らのときには(特に)条件的に厳しかった。そこで食らいついていけず、点差が大きく離れてしまった」と条件に左右されない力が必要という認識を示した。
ではどのように26年ミラノ・コルティナダンペッツォ五輪へ向けて課題を解消するのか。宮平コーチは国内大会の条件に着目。「追い風の条件で飛べるのが世界で戦う上で重要」と前置きし、「追い風、あるいは無風の条件で飛べる大会を増やしていくことで、選手層のレベルアップにつながる」と考えを明かした。
佐藤幸椰「何もできなかった」
初の五輪となった佐藤は、「感じたものはない」と悔しさをあらわにした 【写真は共同】
2番手として爆発力が期待された中村は、2本とも会心のジャンプとはならず。「あまりいいジャンプではなかった」と前置きし、結果が出た後もやや整理がついていない様子だったが「みんなの大ジャンプを見て、絶対4年後にリベンジしてやるぞというのは思った」と思いを新たにしていた。
陵侑に次ぐ存在として期待も高く、今回はチームの1番手として起用された佐藤の反応はもっとも厳しいものだった。
「パフォーマンス的には何もできなかった、2番手、3番手にいい勢いを与えられなかった。陵侑をメダル争いに全く参加させることができず、本当に重く受け止めないといけない。陵侑に『これ以上飛べ』というのは無茶な話。この場で世界との差が分かればこんなに苦労しないので、どういうふうにチーム力を上げていくか、もっともっと話し合っていかなければいけない」
ワールドカップ通算2勝、今後は陵侑とともにチームを引っ張る立場にある佐藤だが、初めての五輪では「感じたものはない」という厳しい結末となった。