北京での初白星は尊敬する“チーム・ジョーンズ”から ロコ・ソラーレの強さは、負けから学ぶ姿勢にあり

沢田聡子

強豪カナダと互角に戦える存在に

強豪カナダと互角に戦い初勝利を収めて、ロコ・ソラーレの4人全員が喜びを口にした 【写真は共同】

「この大会の初めての勝利は、本当に素直に嬉しいです」と知那美は喜びを口にしている。

「このオリンピックで一勝することが、どれだけ大変か。過去のオリンピックの中でも今回のオリンピックは、一番どのチームが勝ってもおかしくないと言われているオリンピックなので。こうして一勝をつかむことがすごく大変なオリンピックなので、今はハッピーです」

 そして、ロコ・ソラーレが北京で初勝利を挙げた相手は、特別なチームだった。

「4年ぶりにオリンピックに帰ってきて、やっぱり勝ち負けはついてしまうんですけれども……オリンピックという特別な場所で、そしてあのすごく尊敬するチーム・ジョーンズに勝てたというところが、すごく大きい一勝だったかな」(夕梨花)

 この日対戦したカナダのスキップ、ジェニファー・ジョーンズは、ソチ五輪で金メダルを獲得している47歳のレジェンドだ。弁護士資格も持っている知性派で、平昌五輪カナダ代表である夫との間に二児がいる。知那美は、ソチ五輪で彼女と対戦した経験がある。

「正直ソチオリンピックの時は、私はすごく未熟で子どもだったので、スーパーアイドルと戦っている気持ちで憧れの存在だった。でも今は、一緒にカーリングを楽しむ仲間。肩を並べられてはいないですけれども、一緒のステージで戦えているので、そういう意味では年を取るっていいなと感じています」

 藤沢も、彼女への憧れを語っている。

「やっぱり、カーリングと言えばカナダ。私は、チーム・ジョーンズの方たちがソチオリンピックで全勝優勝しているのを見ていました。小さいころから個人的にも、同じポジションとしてジョーンズさんにすごく憧れる立場ではあった。今こうやって同じ立場に立って、そしてオリンピックという舞台で勝つことができたのは、過去の日本の先輩たちが築き上げてくれたものの上に私たちは乗っかって強くなってこられたというのもあるので、今回こうやってオリンピックの舞台でチームカナダと戦えてすごくよかったです」

 チーム・ジョーンズが優勝を果たしたソチ五輪には、北海道銀行が日本代表として出場し、5位に入っている。この時知那美は北海道銀行の一員としてソチ五輪に出ているが、五輪が終わった直後に退団し、ロコ・ソラーレの前身であるLS北見に加わる。2015年5月には藤沢五月が加入し、当時メンバーだった本橋麻里と共に平昌五輪に出場、銅メダルを獲得した。2020年には本橋に代わるフィフスとして石崎琴美が加わり、結成時からのメンバーである夕梨花と鈴木と共に、現在のロコ・ソラーレのメンバーがそろっている。ソチから北京に至るまで、日本は少しずつ実力をつけ、カナダと互角に渡り合えるような存在にまで成長してきた。

 翌日の12日には、朝の対デンマーク戦、夜の対ROC(ロシアオリンピック委員会)戦と2試合を戦うロコ・ソラーレ。藤沢は、意気込みを語っている。

「昨日はやはり負けという部分からしっかり反省があって、改善点が理解できて今日の勝利につながっているので。今日は今日でまた勝ちはしましたけれども、しっかり課題は残った部分はあるので、それを改善点として次の試合に生かせるようにすれば、もっといい試合ができるかなと思います」

 一つひとつの試合を終えるごとに、メンバーがそこから学び、コミュニケーションをとって強くなっていくロコ・ソラーレ。五輪の舞台を楽しみながら戦う彼女たちは、各国の実力が伯仲する北京で、どこまで勝ち上がっていくのだろうか。

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著者プロフィール

1972年埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、出版社に勤めながら、97年にライターとして活動を始める。2004年からフリー。主に採点競技(アーティスティックスイミング等)やアイスホッケーを取材して雑誌やウェブに寄稿、現在に至る。

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