カップル競技強化が実を結んだフィギュア団体の銅 ジュニア世代の育成が今後の課題に

沢田聡子

ソチ五輪からの強化に手応え

課題だったカップル競技の強化の成果が出た団体戦。今後はジュニア世代の育成の環境整備が必要となってくる 【写真は共同】

 竹内洋輔フィギュア強化部長は、団体戦での日本の戦いぶりに手応えを感じていた。

「団体戦では、選手たちがほぼすべて全員ノーミスという素晴らしい演技をしてくださった。最終的には銅メダルでしたけれども、もう銀メダルに迫るんじゃないかという勢いでした。(団体戦が)ソチ五輪で正式種目になって以降、大体10年ぐらいかけて連盟でさまざまな事業をやってきたのですが、それがようやくこのメダルに結びついたのではないかなと思っています。このメダルはチームイベントという名前の通り、今回ここで戦っていた選手だけでなく、これまで(代表選手と)競ってきた選手だったり、それを支えてきたコーチ、事務局も含めて日本チーム全体で助けていただいてつかみ取ったメダルだと思っています」(竹内強化部長)

 ソチ五輪で団体戦が正式競技となった当時の日本は、強いシングル競技に比べてカップル競技の強化が課題だった。そのために行ったトライアウトでペアの選手となったのが木原で、現在三浦とのペアは世界でも注目される成長ぶりを見せている。

 竹内強化部長はアイスダンスについても、リズムダンスで獲得したポイントが、日本が銀メダルにも迫ることができた大きな要因だったと評価している。

 またペアについては、三浦/木原という存在自体が日本の強化策の大きな成果といえるが、竹内強化部長はさらに先を見据えていた。

「日本には、ペアのコーチがいない。まずペアを組ませて育成をしていくというのが第一段階で、一つのフェーズが終わったと思っています。これから先も団体戦で継続してメダルをとっていくためには、今度は日本国内でジュニアから育成をしていけるような土壌を作るフェーズに進んでいかなければならないのではないかなと思っています」

 海外に行かないとペアの指導が受けられない現状では、義務教育が終わっていないジュニア世代の育成が難しい。竹内強化部長は、ジュニアの強化を国内でできる環境を整えるのが次の段階だと考えている。

「それまでペアのコーチもいなかったわけではないのですが、2002年のソルトレイク五輪後にルールが変わって以降大幅にペアに関しても評価方法が変わったことによって、コーチたちにとってはやはり新しいルールに合わせた指導というのが難しく、結局今は日本国内にはコーチがいないという状況になってしまっています。なので、新しい採点システムに合わせた育成ができるコーチが、今後日本の中にも必要になってくるのではないか」(竹内強化部長)

 ペアの国内コーチを増やすため、日本のコーチを育成する以外にも、海外のコーチを招聘する方法も考えているという。

 また平昌同様、今回の五輪の日程は特殊で午前中から試合が行われるため、それに対応するためのサポートも行ってきた。朝9時から試合があり、6時には練習を行う選手たちは、朝3時台に起きる。通常なら太陽光を浴びて体温が上がることによってパフォーマンスが上がるが、朝の3時台に起きる場合には太陽光は出ていない。そこで、前回の平昌五輪から太陽光照射の機械を導入し、体温を上げてパフォーマンスを上げることを図った。また、体温が上がってから約14〜16時間で眠くなるため、スケジュールに合わせて早く寝るためのアプローチにもなる。今回の北京五輪でも、太陽光照射の機械を5台ほど現地にもちこんだという。団体のメダルは、きめ細かいサポートの賜物でもあるのだ。

「部屋にメダルを置いておいて、これに恥じないように、しっかり毎日できたらいいなと思います」

 坂本がそういうように、選手と関係者の努力が詰まった団体戦の銅メダルは、個人戦に向かう選手たちの背中を押してくれるだろう。

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著者プロフィール

1972年埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、出版社に勤めながら、97年にライターとして活動を始める。2004年からフリー。主に採点競技(アーティスティックスイミング等)やアイスホッケーを取材して雑誌やウェブに寄稿、現在に至る。

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