北京五輪にオールラウンダーとして臨む高木美帆 過酷な戦いを支える『全部速くなりたい』という思い

沢田聡子

多くの種目にトライすることが、速くなる一番の道

世界屈指のオールラウンダーである高木美帆は多くの種目に出場することで速くなれると信じる 【写真は共同】

 昨年末に行われた北京五輪代表選考会の3000mを、高木は国内最高記録となる3分59秒81という好タイムで制している。だがレース後、高木は「正直この3000mに関しては、私の中ではタイムを必ず出さないと、一番をとっても枠をとれないという状況だったので」と振り返っている。

「『自分のレースを探し求めて』というよりは、どんな状況でも、どんな調子でも必ず(記録を)出しに行くという考えで挑んだレースでもあったので、ちょっと今までとは違うかな」

 代表選考会では圧倒的な結果を残していても、高木の中では3000mは楽な種目ではないということが、この発言からもうかがえる。それでも、得意な中距離に特化して五輪の成績を狙うという考えは、高木にはないようだ。この時、報道陣からオールラウンダーとして戦う覚悟についての質問がとんでいる。

――短距離から中距離、長距離まで挑み続けている高木美帆選手には、すべてにおいて結果を出し続けたいという思いがあるのでしょうか。その意義について教えてください

「スピードスケートでこうやって日本代表に選んでもらえるようになってから、毎年(種目が)違ったりはしても、いろいろな種目に出させてもらってきたのですが…その中で、だんだん少しずつ、順位が上がっていった。世界と戦うようになってきてさらに、やはり少しでも多くの種目にトライすることが、自分にとってスピードスケートで速くなる一番の道だなというふうに感じるようになったので。短距離から長距離までやるというのは、いろいろ大変なこともあるのですが、意義というかトライしていく理由としては『純粋に全部速くなりたいから』という思いで取り組んでいるところはあります」

 距離によってそれぞれのスペシャリストがいる現在のスピードスケート界において、短・中・長距離のすべてで世界トップクラスの強さを見せている高木は、世界最高のオールラウンダーだ。その原点にあるのは、「純粋に全部速くなりたい」という思い。あえて厳しい道を進んでいるように見えるが、高木自身にとっては自然な選択なのだろう。

 特に高木がその強さを発揮することが期待されるのは、1500mに加え、今季W杯で1勝している1000mと、平昌五輪で優勝しているチームパシュートだ。3000m後のミックスゾーンで、高木は最後に1500mへの展望を語っている。

――今日は(滑るのが)3組で早い順番でしたが、1500mに向けてはまた違う滑りができるのでは?

「そうですね、少しリンクの状態を感じたところもあるので、イメージはしやすくなるのかなと思ってはいます。1500mに向けてどういうふうに組み立てていったらいいのかというのは、3000m以上にイメージしやすいなと」

 純粋に、速く滑るために。北京五輪での高木の戦いは、始まったばかりだ。

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著者プロフィール

1972年埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、出版社に勤めながら、97年にライターとして活動を始める。2004年からフリー。主に採点競技(アーティスティックスイミング等)やアイスホッケーを取材して雑誌やウェブに寄稿、現在に至る。

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