W杯アジア最終予選展望 中村憲剛×岩清水梓 吉田麻也の不在を逆にチャンスと捉えたい

吉田治良

東京五輪世代のA代表への吸い上げも、最終予選での巻き返しの要因と分析する中村憲剛さん。今回の2連戦では、久保建英が昨年9月以来の復帰を果たしている 【写真:森田直樹/アフロスポーツ】

 元日本代表MFの中村憲剛さんと、日テレ・東京ヴェルディベレーザの岩清水梓選手によるスペシャル対談。女子アジアカップ(1月20日に開幕)を展望していただいた「女子編」に続いて、今回はカタール・ワールドカップ(W杯)のアジア最終予選を戦う森保ジャパンがテーマの「男子編」をお届けする。ここまでの流れを検証しつつ、1月27日の中国戦と2月1日のサウジアラビア戦の見どころを、『DAZN』で解説を担当する憲剛さんが、“サポーター目線”の岩清水選手にレクチャーしてくれた。

出場権獲得のためには割り切りも必要

──カタールW杯の出場権を懸けたアジア最終予選も、いよいよ残り4戦と佳境を迎えています。現時点で日本代表は4勝2敗でグループBの2位ですが、スタートでは思わぬつまずきがありました。あらためて、アジアの戦いは厳しいと感じていますか?

中村憲剛(以下、中村) 最初の3戦で2敗という成績はこれまでのW杯予選の中で一回もなかったことなので、3戦目が終わったときは「これは大変なことになったぞ」とは思いました。

岩清水梓(以下、岩清水) これまでにない厳しいスタートでしたよね。

中村 東京五輪で男子サッカーがすごくフォーカスされた流れからの最終予選。五輪で世界を相手に4位になったことで、「まあ、今回もW杯には出られるでしょ」という楽観的なムードが少なからずあったと思います。そこからの大事な初戦であるホーム・オマーン戦、結果もそうですがオマーンの術中にはまった形での敗戦(0-1)はかなりショッキングでした。誰もがあらためて「予選は甘くないな」と感じたはずです。その流れから3戦目が、出場権を直接争うライバルと思われていたアウェーのサウジアラビア戦というのも、順番的にはちょっとしんどかったかなと。ただ、サウジに負けた(0-1)ことで、森保(一)監督も大転換に踏み切りました。その結果、そこから3連勝ですからね。

岩清水 大転換って、何をやったんですか?

中村 システムを変えて、人も多少入れ替えたんです。それまでは基本的に4-2-3-1で、誰がスタメンかもある程度予想がつくぐらいでしたが、結果が出なかったことでシステムを4-3-3に変更。守田(英正)と(田中)碧を入れて3ボランチ(アンカーに遠藤航)に中盤の形を変更して第4戦のオーストラリア戦に臨み劇的な勝利を挙げました(2-1)。オーストラリア戦前の森保さんの決断は、すごいなと思いましたね。森保さんにあまりチームをいじるイメージがなかったので、かなり追い込まれていたんだなと。

岩清水 何はともあれ、グループ2位で年を越せて良かった(笑)。

中村 W杯に出るという意味だけで言えば、あのスタートから今は出場圏内にいるわけですから、よくここまで持ち直したなと思います。もっと若い選手を使えという声もありますけど、新型コロナウイルスの影響で、思ったような強化を図れなくなったことは痛かったですね。なにしろ準備期間が取れないし、トレーニングマッチも組めない状況では、すごく難しいです。本当にしびれるような予選の戦いの中でチームを作っていかなきゃならないので、出場権を獲得するためには、僕はある程度割り切ってもいいのかなと思っています。もちろん内容も伴ったサッカーでアジアを突破し、W杯でベスト8という大きな目標に向かっていくべきなんでしょうけど、なでしこと同様、対アジアと対世界では、日本の立ち位置は違いますから。

岩清水 私は男子の代表チームを、本当にただのサポーター目線で見ているので、深い分析はできないんですが、うらやましいなって思うのは、こうした最終予選やW杯のような大きな試合になると、国を挙げてのお祭り騒ぎになるところなんです。女子ではあまりないことだし、それだけ多くの人に注目されているってことですからね。

フロンターレのサッカーが代表のベースに

「相手を見て、やり方を変えられるサッカー」をフロンターレで身につけた田中碧や守田英正らが代表の主力となってから、チームに良い流れが生まれている 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

──岩清水さんは、ここまでの戦いぶりをどう評価していますか?

岩清水 評価というか……、本当に大丈夫かなって、すごく心配してました(笑)。ついにW杯出場を逃す“事件”が起きちゃうんじゃないかって。でも、ホームのオーストラリア戦で不安を払しょくするような結果を出してくれたし、あの試合では、またみんなが応援したくなるようなサッカーを見せてくれました。あとは、田中選手とか、オマーン戦(第6戦/2-1)でデビューして活躍した三笘(薫)選手とか、私たちが見たいなって思う選手をちゃんと出してくれるようになったなって思います。そう考えると、フロンターレ色がかなり強くなりましたよね。元所属の選手もたくさんいて(笑)。

中村 守田、碧、薫をはじめ板倉(滉)なんかもそうですしね。現フロンターレの山根(視来)や谷口(彰悟)も昨年はメンバーとして経験してます。僕的にはみんな後輩なので、いろんなメディアに出させてもらってます(笑)。

岩清水 いやいや、バーターではないですよ(笑)。それを言うと、私もベレーザの後輩が代表に多くて、解説でしゃべりやすいところはありますけどね。

──自分の古巣や所属クラブの選手たちが、代表チームに新しいパワーやエッセンスをもたらしている状況は、やはり感慨深いものがありますか?

中村 そうですね。フロンターレで日々やっていたことが間違っていなかったという証しでもありますから。今もそうだと思いますが、フロンターレでは、Jリーグで勝つことはもちろんですが、世界も意識しながらやっていこうって話をよくしていて、実際に多くの選手がヨーロッパに渡りましたけど、ベースは間違いなくそこにあると思うので。向こうでいろんな経験をしながら成長している後輩たちの姿を見るのは、やっぱりうれしいですよね。

岩清水 もしかすると、ベースにフロンターレのサッカーがあることが、代表が勝てるようになった理由かもしれませんね。ピッチの上で、多くの共通意識が生まれているように見えますから。2011年の女子W杯で優勝した当時のなでしこも、元も含めてベレーザ関係の選手が多かったので、阿吽(あうん)の呼吸というか、自然と戦い方のベースを共有できていました。

中村 僕らがいつも何を意識していたかというと、相手を見ながら、臨機応変に自分たちの立ち位置や攻め筋を変えて、それをみんなが共有してプレーすることでした。状況に応じて、一人ひとりがやり方を変えられるし、周りもそれを汲み取って即座にサポートできる。守田とか碧が代表の試合に出るようになって、彼らが周りとうまく絡みながら有機的にプレーすることで、チームに良い流れが生まれているし、その姿を見ていて「ああ、いつも通りやってるな」と思っています。

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著者プロフィール

吉田治良

1967年、京都府生まれ。法政大学を卒業後、ファッション誌の編集者を経て、『サッカーダイジェスト』編集部へ。その後、94年創刊の『ワールドサッカーダイジェスト』の立ち上げメンバーとなり、2000年から約10年にわたって同誌の編集長を務める。『サッカーダイジェスト』、NBA専門誌『ダンクシュート』の編集長などを歴任し、17年に独立。現在はサッカーを中心にスポーツライター/編集者として活動中だ。

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