F1最終戦で自己最高4位の角田裕毅 「3位のチャンスを逃してしまった」

柴田久仁夫(auto sport)

自己最高位となる4位でレースを終えた角田(左)に、今季の手応えを聞いた 【Getty Images / Red Bull Content Pool】

 7年ぶりの日本人F1ドライバーとして国内外から注目を集めていた角田裕毅。デビュー戦となる開幕戦バーレーンGPでは、世界チャンピオン経験者らを相手に一歩も引かず、いきなり9位入賞を果たした。幸先良くシーズンを送っていけるかに見えたものの、第2戦エミリア・ロマーニャGP(イタリア)でクラッシュを喫して以降、精彩を欠くレースが続いてしまっていた。

 しかしもがき苦しみ続けた今季、最後のアブダビGPで角田は見ごとに復活し、自己最高位となる4位でレースを終えた。ホンダのF1撤退、アブダビGPのレース内容、そして今季ここに至るまでの苦悩や葛藤、現在感じている手応えをレース後に聞いた。

「良いシーズンの締め括りをできた」

最終周の裏ストレートで「3位のチャンスを逃してしまった」と悔やむ角田 【Getty Images / Red Bull Content Pool】

──まずは今年限りでF1活動を終えるホンダのタイトル獲得について、いまの思いを教えてください。

角田裕毅(以下、角田) マクラーレン時代には本当に辛い思いをしたと思いますし、そこからのチャンピオンの道のりは本当に長かった。それが今回、マックス(・フェルスタッペン)が初タイトルを獲って、最高の形で終えることができた。

 マックスが栄冠を手にできたのもホンダの現場スタッフだけでなく、ミルトンキーンズ(英国にある開発拠点 HRD UK)やさくら(栃木県さくら市のHRD Sakura)で働いている多くの人たちの努力のたまものだと思います。僕らが良いシーズンの締め括りをできたのも、彼らのおかげです。そこは本当に感謝です。

──レッドブル・ホンダのフェルスタッペンがチャンピオンを取ったのは、チェッカー後に知ったのですか?

角田 はい。

──驚きましたか?

角田 いえ、それほどでも。セーフティカーが入った段階で、ある程度は予想していました。

──では、角田選手自身のレースについてうかがいます。8番手グリッドからの4位入賞。しかも3位表彰台まであと一歩でした。悔しさとうれしさ、どちらの気持ちが強いですか?

角田 最終周の裏ストレートを全開走行中にシフトダウンに入ってしまって、そこでだいぶ失速してしまった。それで前を走る(カルロス・)サインツを抜くことができず、3位のチャンスを逃してしまいました。

──セーフティカー走行中、角田選手は5番手でした。セーフティカーからのリスタート後、最後の1周でバルテリ・ボッタスを抜いて4番手に順位を上げましたが、オーバーテイクした状況は?

角田 ターン6(第6コーナー)のブレーキングです。けっこうギリギリでしたけれどね。今日の決勝は課題だったスタートも問題なかったですし、レース中のペースも安定していてよかったです。

──今日のレースではスタート直後の1周目と最終周、2回もボッタスを抜いたのですね。

角田 そうですね(笑)。

──角田選手のスタートタイヤはミディアムで、ソフトに比べると温まりにくいコンパウンドですが、ホイールスピンもなかった?

角田 そうですね。スタートの蹴り出し自体は決して良くなかったのですが、1コーナーには順位を落とさずに入れて、すぐ前のボッタスは同じミディアムだったし、負けられないという気持ちで攻めていって、抜くことができました。

「アロンソは意地で抜いた」

──コース改修によって新設されたターン9(第9コーナー)は、予選でも非常に速く走れていたように見えます。

角田 ええ。たぶん他のドライバーに負けていない自信があります。少なくともハミルトン以外には、負けていないと思います。僕だけ少しアプローチを変えて、縁石に載っていくようにしたんですね。そこは金曜日のFP1(フリー走行1回目)から練習していました。そうしたら他のドライバーもマネするようになりましたけれど。

──レースではまさにそのターン9で、フェルナンド・アロンソをうまく抜いていきました。どんな状況だったか、説明してくれますか?

角田 彼が僕を抜いたのはコースをはみ出しながらだったので、順位を戻してくれると思っていたんですね。ところが全然そうしてくれないから、抜くしかないと思った。今シーズンはアロンソにけっこうやられっ放しだったので、あそこは引けないと思って、それで意地で抜いていきました。

──それでもレース後には、アロンソとハグしていましたね。

角田 ええ。レースが終われば、そこはもう。

──この最終戦は、今季最高のレースでしたか?

角田 そう思います。

「学びの面で濃いシーズンだった」

「1年間で学んだ量で言えば、僕のレース人生のなかで今年が一番」と角田 【オートスポーツ】

──F1デビューシーズンの今年は、どんな1年間でしたか。長かった? あるいはあっという間でしたか?

角田 長かったし、短かったし。いずれにしても、すごく濃いシーズンでした。特に学びの面で。1年間で学んだ量で言えば、僕のレース人生のなかで今年が一番です。その意味では長かったですけれど、でも同時にあっという間でした。

──開幕前の段階では、初戦の1周目から攻めていく、毎周攻めていくと言っていました。それがシーズン途中からアプローチを変えたように見えました。

角田 はい。毎周攻めていくという言葉の意味合いが変わったというか、どういうふうに入っていくか、1周1周の意識の違いというのか。クルマの限界を知るためには慎重になりすぎず、プッシュしないといけない。ただ、FP1は自分のウォーミングアップであると同時に、クルマの挙動を感じ取るセッションでもあります。

 それが開幕戦の頃は、FP1から自分の運転のことしか考えてなかった。クルマを感じ取るとか、そういう余裕はなかったですね。その週末のクルマの性格というか、それをFP1で感じ取ることが重要なんです。そうするとクルマをどう改善していったらいいかが分かる。今年1年でそういうアプローチに変えていきました。

──シーズン中盤まではクラッシュが続いたりして、苦しい時期を過ごしました。そこから、ここまで戻してきた。それについては、どんな思いですか?

角田 そうですね。今シーズンは序盤のイモラ(第2戦エミリア・ロマーニャGP)、それからフランス(第7戦)と続けてクラッシュしたことで、完全にクルマへの信頼を失ってしまった。それを取り戻すのにすごく苦労しましたし、いままでのキャリアのなかで経験したことのないような、クルマをまともに操れてない感覚に陥っていました。

 そこからチームの支えもあり、少しずつ周回を重ねることでいまの状態に持ってくることができた。いまは開幕戦バーレーンのとき以上に自信が持てていますし、いい状態でシーズンを終われたことが良かったと思っています。
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