冠番組が2年目に入った内田篤人が明かす 日本代表運命の10月決戦のポイントは?

飯尾篤史

ちょっと変わったセットプレーを用意しても…

サウジアラビア戦は、相手にボールを保持される展開も予想されるだけに、セットプレーがカギになるか 【YOJI-GEN】

――中国戦では内田さんはDAZNの裏チャンネルで矢部浩之さんと解説をされました。オマーン、中国のレベルはどう感じました?

 僕がプレーしていた時代もオマーンや中国とは接戦で、よく勝てたなというゲームはたくさんありましたからね。特に今回のオマーンはしっかり準備したみたいだし、そこに戦術的な要素が加わると、やっぱり良いチームになるなと思いましたね。

――日本代表はどうでした?

 たしかにオマーン戦の内容は良くなかったですけど、先に点を取っていたら全然違うゲームになったとも思うし、正直、よく分からないです。外からいろいろ言うのは簡単だけど、練習を見ているわけではないので。選手のコンディションやトレーニング状況が実際にどんなものだったのか分からないですから。ただ、W杯予選というのは、初戦を落とさない争いではなく、最終的に突破できるかどうかが大切。オマーン戦での敗戦を教訓に、雰囲気や戦い方がガラッと変わるきっかけになればいいと思います。

――10月シリーズでは7日にアウェイでサウジアラビアと、12日にはホームでオーストラリアと対戦します。

 前半の山場になるのはたしかでしょうね。攻撃に関してはどうしても好不調の波があると思うけど、ディフェンスライン、ボランチは安定した力が必要だと思います。特に中東でのアウェイゲームは独特な雰囲気があるので、ちょっとしたピンチを招いてもドタバタしない。ドンと構えて、どれだけ戦えるかが大事だと思います。今回、観客がどれだけ入るのかは分からないですけど、僕が戦ったときは、たいしたチャンスじゃないのに、ボールがちょっと高く上がっただけで「ワー!」って会場の雰囲気が一変するし、向こうは勢いに乗ると手がつけられなくなる。強さがあるし、足も速いので。そのあたりは注意が必要だと思います。

――サウジアラビアとは2019年1月のアジアカップでも対戦していて、1-0で勝利しましたが、かなり押し込まれました。

 そのときのスタッツは見ました。ボール支配率はサウジアラビアが70%以上でしたよね。いつも以上に立ち上がりが大事になるし、今回もボールを握れるかどうか分からないので、セットプレーがカギになるんじゃないですか。麻也、冨安(健洋)、(酒井)宏樹、大迫と高さのある選手がそろっていて、いいキッカーもいるので。ちょっと変わったセットプレーをひとつ、ふたつ用意しておいても面白いかなと思います。

番組内容についてドシドシ意見をください

キャプテンの吉田麻也をグラウンドレベルでサポートできる選手が出てくるかどうかが大事だと内田さんは指摘する 【Getty Images】

――キャプテンの吉田選手は9月シリーズで相当な責任と重圧を背負っているように感じました。内田さんは今の吉田選手をどんなふうに見ていますか?

 オリンピックのときもそうでしたけど、若い選手たちから信頼されているし、審判と英語でコミュニケーションを取れるのもいいと思います。ただ、麻也を誰がサポートするのか。長谷部(誠)さんがキャプテンだったときは永嗣さんや麻也がサポートしていたし、そもそもチームのみんな、個性が強かった。今も永嗣さんがいるけれど、もうひとり、ふたり、グラウンドレベルで話せる選手がいるといい。それが遠藤なのか、大迫なのか。そういう選手が現れることがすごく大事だと思います。

――内田さんは現役を引退されるとき、日本代表の思いみたいなのを吉田選手に託した部分もあるのでしょうか?

 いや、それはないですね。それはもう、やっている人間の責任ですから。W杯に行ければ彼らが勝ち取ったものだし、行けなかったとしても彼らが導いた結果なので。国を背負うということは、僕もそうでしたけど、他人がどうこう言うことじゃないと思っています。

――最終予選を戦うなかでチームとして伸ばしていってほしい部分は、どこでしょう?

 久保(建英)くんとか、堂安(律)くんとか、個人で行けちゃう選手が増えてきたのはいいことだと思うんですけど、チームとしての連係がもう少し欲しいですね。個人では頑張っているけど、それだけでは相手が組織で守ってくると難しい。構築する時間はなかなかないと思うんですけど、良いチームは大会を戦いながら強くなっていくものなので、そこに期待したいと思います。

――では最後に、2年目に入った「Atsuto Uchida's FOOTBALL TIME」で今後、やりたいことはなんですか?
 
 実技はまたやりたいと思っています。あと、コロナ禍が落ち着いたら、ヨーロッパに行きたいですね。海外の選手たちを見に行きたいです。冨安くんのアーセナルとか。予算があるのかどうかは知らないですけど(笑)。

――ゲストで呼びたい選手はいますか?

 誰だろう……仲の良い人はもう出てくれたので、その時々の旬の選手を呼びたいですね。

――本田圭佑選手とか。

 本田さんに来ていただけるのであれば、ぜひ(笑)。そこも視聴者の方の意見を聞いてみたいですね、誰を呼んでほしいとか、どんなことをしてほしいとか。ドシドシ意見をください。みんなで番組を作っていく感じになるのが一番面白いと思うので。あと、海外の選手を追いかけるのは楽しいので、みんなにはぜひ活躍してもらいたいと思います。
内田篤人(うちだ・あつと)
1988年3月27日生まれ。静岡県出身。清水東高から2006年に鹿島アントラーズに加入。高卒ルーキーとして1年目からレギュラーを獲得し、07年からのJリーグ3連覇に貢献する。08年の北京五輪に出場し、日本代表に定着。10年南アフリカW杯出場後の7月に、ドイツ・ブンデスリーガの強豪シャルケに移籍する。高い技術と戦術眼を備えた右サイドバックとして活躍し、1年目の10-11シーズンにはチャンピオンズリーグでのベスト4進出とDFBカップ優勝に尽力した。14年ブラジルW杯は全3試合にフル出場。17年8月にウニオン・ベルリンへ完全移籍。18年シーズンから古巣・鹿島に復帰し、同年のACL初優勝に貢献した。20年8月の現役引退後は、日本サッカー協会が新設した「ロールモデルコーチ」に就任し、後進育成に力を注ぐとともに、テレビ朝日『報道ステーション』でキャスターを、DAZNの冠番組『Atsuto Uchida’s Football Time』でパーソナリティーを務めるなど、多方面で活躍中だ。

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著者プロフィール

東京都生まれ。明治大学を卒業後、編集プロダクションを経て、日本スポーツ企画出版社に入社し、「週刊サッカーダイジェスト」編集部に配属。2012年からフリーランスに転身し、国内外のサッカーシーンを取材する。著書に『黄金の1年 一流Jリーガー19人が明かす分岐点』(ソル・メディア)、『残心 Jリーガー中村憲剛の挑戦と挫折の1700日』(講談社)、構成として岡崎慎司『未到 奇跡の一年』(KKベストセラーズ)などがある。

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