Jリーグが防災の大切さを発信する理由 ヤフー防災模試 ソナエルJapan杯
「地域密着」と防災が不可分である理由
2011年の東日本大震災直後に行われたチャリティーマッチで、佐藤氏(前列左端)もJリーグ選抜の一員として出場 【宇都宮徹壱】
「僕自身はいろんな地域でプレーする機会に恵まれて、本当に幸せなキャリアだったと思います。そんな中、東日本大震災のときは広島にいましたし、3年前の(広島の)土砂災害のときは名古屋にいました。被災地から離れた場所にいても、常に選手として何ができるのかを考えていましたが、なかなか参加できなかったのも事実です。OBとなった今、さまざまな地域に接点があることを生かしながら、シャレン!を通じて積極的に発信していきたいと思っています」
Jリーグもまた、毎年のように繰り返される自然災害に対し、常に難しい判断を迫られてきた。現職に就いた14年以降「台風シーズンになると、ほぼ眠れない日々が続きます」と村井チェアマン。今年7月には、静岡県の熱海市で大規模な土砂災害があったが、8月にも大雨による災害があり、その被害は北信越から九州まで広範囲に及んだ。どこに暮らしていても、自然災害の被災者になり得るのが、今の日本。だからこそ「Jリーグが果たすべき役割は大きい」と村井チェアマンは力説する。
「Jリーグに所属するクラブは、そのすべてがホームタウンの名称を冠していて、ファンやサポーターは地域の名を連呼してきました。サッカーを通じて、ホームタウンや家族や地域コミュニティの大切さを実感する。そうしたことを、Jリーグは30年近く続けてきました。その結果として、自分たちの街を災害から守りたいという考えに行き着くのは、自然な流れだと思います。これまで『地域密着』を謳ってきた、われわれJリーグにとっても、防災の知識というものを発信していくことは、使命だと考えます」
被災地支援に防災という意識が加わることで
2016年の熊本地震直後、日立台で「ホームゲーム」を行ったロアッソ熊本。今後は被災地支援に加えて防災への意識も高めていきたい 【宇都宮徹壱】
今後も自然災害が起こるたびに、こうした被災地支援が行われることだろう。それはそれで大事なことだが、ここに防災という意識が加わることで、救われる命があることは間違いない。Jリーグもシャレン!を通して、支援から防災へとシフトしているように感じられる。とはいえ、決して一筋縄ではいかないことも、村井チェアマンは実感している。
「どこかで甚大な災害があって、そこに支援をするというのは対象が明確ですし、ある程度の効果を予測することもできます。防災の場合、備えたものを発揮できるタイミングが不明確ですし、災害がどういう形で襲ってくるのかも分からない。それでも、ある種のイマジネーションを広げれば、災害は他人ごとではなくなるはずなんですよね」
こうした前提を踏まえて、チェアマンは続ける。
「すべての物事には、因果関係というものがあります。大きな災害に遭遇して、それでも助かったというのは、助かるだけの理由があると思うんです。このヤフー防災模試には、現実の生活に則した設問がたくさん出てきます。そういうリアリティのあるシミュレーションを、ある種のゲーム感覚で楽しんでもらえればいいかなと。そしてYahoo! JAPANさんのテクノロジーを利用させていただきながら、各JクラブとOB会が力を合わせて発信していくことこそ、シャレン!の本質なのかなと思います」
9月1日からスタートしたソナエルJapan杯は、57クラブが地域ごとに8グループに分かれて、まずは予選ラウンドを戦う。そして1位通過の8クラブ、最も100点取得者が多い1クラブ、さらに佐藤氏を含むチーム「JリーグOB」が、9月17日から20日までの決勝ラウンドに参加。9月下旬に優勝クラブが発表される。最後に「JリーグOB」を代表して佐藤氏に、ソナエルJapan杯への意気込みを語ってもらおう。
「本来であれば、僕らOBも予選ラウンドから出場すべきだと思うんです。けれども、今回はご配慮をいただいているので、全員が満点を取れるくらいの覚悟で臨みたいですね。今のところ僕以外では、中田浩二さん、播戸竜二さん、石川直宏さん、あとは都並敏史さん。OB会の理事は全員が出る予定です。それにプラスして戦力になりそうな、防災意識が高い人に参加を呼びかけたいなと。そのためのスカウティングは、しっかりやるつもりです(笑)」