千葉ロッテ常勝軍団への道〜下剋上からの脱却〜

鍵はデータ分析と密なコミュニケーション ロッテ井口監督に聞く改革の途中経過

長谷川晶一

球団フロントとの密なる連携のために

球場内には、メッセージが常に選手たちの目に入るように掲示されている 【写真:ライトハウス】

――チームに黄金時代をもたらすためには、当然、フロントとの連携が重要になります。オーナー代行であり、球団社長でもある河合克美氏とは、どのような連携体制が築かれているのですか?

井口 河合オーナー代行はホームゲームの際には必ず球場にいらっしゃるので、定期的にお話をするようにしています。少なくとも3連戦の初戦には必ずミーティングの時間を設けています。その席で、チームの現状、補強の必要性などは随時お伝えしています。

――河合氏がオーナー代行に就任したのが18年のことで、球団社長に就いたのが19(令和元)年オフのことでした。以来、積極的にFA戦線に乗り出したり、シーズン中のトレードを行ったり、ドラフト戦略面でも変化が生まれたように思います。

井口 現場は常に補強についての要望を出していますし、球団もそれに応えてくれていると思います。両者のいい関係が築けている理由の一つとして、「球団理念」や「Team Voice」「チームスローガン」が、全員一致となる役目を果たしていると思います。チームとして、少しずつ力をつけている感じはします。

――19年シーズンからは、主にデータ分析を行う「チーム戦略部」が創設されました。ここには監督の意向も反映されていると聞きました。

井口 監督就任当時に私個人としても「データ部門がしっかりしていないと勝てない」という思いは持っていました。当時のロッテはデータ量も、ビデオ解析も、他球団に比べるとかなり劣っている印象がありました。当然、設備投資には莫大なお金がかかることはわかっていましたが、会社の方とも同じ想いを共有しており、少しずつカメラの台数も増え、分析の専門家にも来ていただき、今では他球団に引けを取らない分析力があると思っています。現場の意見、想いをしっかりとオーナー代行に伝えて、「チームを強くするためには何が必要か」ということは密に話しています。会社としても、「チームを強くするにはさまざまな補強と投資が必要だ」という考えで我々と一致しています。

――18年の監督就任以来、チームは5位、4位、2位と着実に成績を残しつつあります。ここまでの手応えはいかがですか?

井口 着実に階段を上りつつあると思います。階段から降りるのは簡単なので、今は一日一歩でもいいから、選手たちを上に登らせていくのが我々の仕事。自分が監督をやっている以上は、常にそこを後押ししていきたいです。

――では、改めて前半戦の総括と後半戦の意気込みを教えてください。

井口 今季は開幕5連敗から始まって、最初は「どうなることか」と思ったけど、選手たちは着実に成長しています。中継ぎ陣に故障者が相次ぎましたが、後半戦にはみんな帰ってきてくれると思います。シーズン途中補強の(エンニー・)ロメロも後半戦からは投げられます。「後半戦」と言っても、現実的には残り60試合ちょっと。「周りを見ながら」ではなく、「突っ走っていく」という気持ちがないとトップは取れないので、全員で束になって戦っていくつもりです。

井口資仁(いぐち・ただひと)

1974年12月4日、東京都出身。國學院大學久我山高から青山学院大に進学し、東都大学リーグでは現在も最高記録である通算24本塁打を記録。96年のドラフト会議でダイエーを逆指名し、ドラフト1位で入団。1年目の97年から遊撃手の主力に定着し、2001年からは二塁手にコンバート。ダイエー在籍中はベストナイン3回、ゴールデングラブ賞3回、盗塁王2回を獲得。05年からはホワイトソックスに移籍し、1年目からワールドシリーズ優勝に貢献。09年にロッテに移籍。10年は「三番・二塁手」で自己最多の143試合に出場し、チームは日本一を達成した。13年に日米通算2000本安打達成。17年シーズンをもって現役を引退し、翌シーズンからロッテの監督に就任した。

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著者プロフィール

1970年5月13日生まれ。早稲田大学商学部卒。出版社勤務を経て2003年にノンフィクションライターに。05年よりプロ野球12球団すべてのファンクラブに入会し続ける、世界でただひとりの「12球団ファンクラブ評論家(R)」。著書に『いつも、気づけば神宮に東京ヤクルトスワローズ「9つの系譜」』(集英社)、『詰むや、詰まざるや 森・西武 vs 野村・ヤクルトの2年間』(インプレス)、『生と性が交錯する街 新宿二丁目』(角川新書)、『基本は、真っ直ぐ――石川雅規42歳の肖像』(ベースボール・マガジン社)ほか多数。

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